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  • 2024/07/05 掲載

BCG流「値上げの科学」、顧客価値を起点に考える方法とは?

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20~30年におよぶ日本のデフレから脱却し、ようやく消費者物価が上昇している。企業も原材料費や物流費の高騰を価格に反映せざるを得なくなった。この状況に対しボストン コンサルティング グループ(BCG)は、「これまで値上げはタブー視されてきたこともあり、日本企業のプライシング能力は現在、欧米企業に比べて後れている状況」と指摘する。そこで本稿では、BCGがこれまで培ってきた「値付けの科学」 を解説する。B2BとB2Cの違いを考慮した、競合価格やコストとのバランスを取る値付けの方法とは何だろうか。
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なぜ値上げがタブー視されるのか?
(Photo/Shutterstock.com)
※本記事は『BCGが読む経営の論点2024』の内容を再構成したものです。

なぜ値上げがタブー視されるのか?

 デフレが長く続いた日本で、最近ようやく消費者物価が上昇に転じている。原材料費や物流費の高騰、円安などを受けて、日本企業は上昇を続けるコストを価格に転嫁せざるを得なくなった。

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『BCGが読む経営の論点2024』(日経BP/ボストン コンサルティング グループ<編集>)
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 「失われた30年」の間、多くの日本企業ではいかに商品やサービスをより安く提供するかが重要な経営課題となり、値付けに関する組織能力を構築することにはあまり目を向けてこなかった。その時代の経験を基に経営層の多くは、値上げしようものなら、販売量が大幅に減少するのではないか、大事な顧客が離れてブランドを毀損するのではないかと、リスクに敏感になりやすい。

 しかし世界的に見れば、これほど値上げをタブー視する風潮はかなり特殊である。プライシング能力の優劣は業績や企業価値に直結する。歴史的に日本企業は「数量」に着目して売上や利益を伸ばそうとする傾向があるが、欧米企業は資本市場や投資家からのより強いプレッシャーを背景に、より短期間で業績を向上させる施策としてプライシングを常に念頭に置いている。グローバル競争力を考えると、日本企業はもっと「価格」を体系的かつ戦略的に捉えて対策を講じる必要がある。

 実際に、欧米の企業と比べて、日本企業のプライシング能力は後れをとっている。たとえば、日本では営業担当者などが勘や経験に基づいて感覚的に値決めすることが多い。全社的なプライシング戦略に沿って、データに基づいて適切な価格を判断したり、不要なディスカウントをしていないか定期的に点検したりするガバナンスの仕組みも整備されていない。プライシング専門の人材・チームがいることも非常に稀だ。プライシングが戦略や通常業務の一部である欧米の企業との差は大きい。

 B2C(一般消費者向けビジネス)、B2B(法人企業向けビジネス)を問わず、企業にとって値上げは避けて通れない。原料費の上昇分をそのまま価格に上乗せする単純な方法では、賢い値上げとはいえない。そうした「守りの値上げ」ではなく、企業が努力して生み出した付加価値に見合ったリターンを得る「戦略的な値付け」が重要だ。では、どのようなプライシングを行えば、適切なのだろうか。

適切なプライシングとは

 適切なプライシングは、業種や業態、扱う商材、市場におけるポジション、対象顧客など、企業の置かれている状況によって当然異なる。

 高度に差別化された商品やサービスを持ち、代替品がない場合、企業の価格交渉力は大きくなる。一方、価格認知が広く、汎用的かつ競争が激しい市場であれば、価格は需要変動に左右されやすく、利益率と数量のトレードオフをより厳密に見極めて値付けをする必要がある。

 B2Bか、B2Cかによっても、プライシングの考え方や方法論は異なる。B2Bは売り手も買い手もプロが参加する市場だ。コストや差別化度合いなど、お互いの手の内を知り尽くしたうえで交渉に臨む。B2Cでは、企業と消費者の間に情報の非対称性が存在し、消費者は基本的にその商品がどのくらいのコストでつくられているかを知らない。反面、買い手の数は多く多様であるという複雑性を持ち合わせている。

 このような違いはあるものの、B2B、B2Cを問わず、どの企業にも共通して重要なプライシングの考え方は存在する。自社の置かれている状況について正しく理解しながら、顧客価値を起点に考え、価格の公平性、付加価値の訴求、透明性を実現することである。

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「顧客価値を起点に考える」値上げの手法とは?
【次ページ】「顧客価値を起点の値上げとは?」「日本企業への3つの提言」

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