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- 2023/04/04 掲載
IHI 小宮義則CDOに聞く「超縦割り組織」のDX、進め方の極意とは
前編はこちら(この記事は後編です)
既存事業を「ライフサイクルビジネス」へと転換していく
IHIが現在進めているDXの取り組みには、大きく分けて2つの領域があります。1つが「LCB(ライフサイクルビジネス) DX」と呼ばれるもので、デジタル技術を使って既存事業をトランスフォームすることによって従来の「モノ売り」のビジネスから脱却して、製品のライフサイクル全般に渡って顧客に価値を提供していくLCB(ライフサイクルビジネス)への転換を図るというものです。そしてもう1つの領域が「事業創造DX」で、こちらはその名のとおりデジタル技術を活用して新たな事業を創り上げていくという活動です。現時点では主に前者のLCB DXに注力しており、事業創造DXはまだ始めて間もない段階です。
LCB DXの具体的な取り組み内容は多岐に渡りますが、大まかに分類すると「ビジネスモデル改革」と「業務プロセス改革」に分けることができます。
ビジネスモデル改革は3段階に分けて進めていく計画で、第1段階がIoTを使った製品の見守りサービスの拡充、第2段階ではIoTデータを活用してお客さまに提案型の保守サービスを提供します。そして最終段階である第三段階では、弊社製品以外も含めたお客さまが保有するすべての機械のデータを収集・分析して、工場の運営を丸ごとマネジメントできる提案型事業の創出を目指しています。
こうしたロードマップに基づき、現在さまざまな分野でデジタル技術を使った新たなビジネスモデルが創出され、実際に成果を上げています。その代表例の1つが「カスタマーサクセスダッシュボード」と呼ばれる仕組みで、特定のお客さまに関する情報をまとめて一元管理して、ダッシュボードを通じて全社で共有できるようにしたものです。これによってお客さまを「面」でとらえて全社的な対応がとれるようになり、これによって見積リードタイムの短縮が実現しています。
また、お客さま先に納めた大型ボイラー装置に取り付けたIoTセンサーから稼働データを収集し、それらを分析することでより効率的な運転の支援を行ったり、メンテナンスの提案を行ったりするサービスの提供も始めています。
インフラ分野では、橋梁や水門などの状態をデジタル技術を使って解析・評価し、やはり効率的な点検やメンテナンスを提案するソリューションを提供しており、こちらもすでに多くのお客さまから高い評価をいただいています。
各事業のタイプに合わせた業務プロセス改革を進める
業務プロセス改革についても、各事業のタイプに合わせたやり方を適用しながら着々と進めています。弊社は幅広い製品を手掛けるコングリマリット企業であり、量産品だけでなく準量産品及び一品ものであるインデント品も手掛けています。それぞれの製品タイプによって業務プロセスも大きく異なるため、各タイプに合わせた改革手法を採用しています。
まず量産品については、製造工程のあらゆるポイントでデータを取得し、工程全体の中でボトルネックになっている箇所を素早く検知し改善することで全体工程の効率を大幅に向上させることを目指しています。弊社の製品で言えば、航空機エンジンやターボチャージャーといった量産品の製造工程にこうした手法を取り入れています。特に,航空機エンジンについては,コロナ禍によって危機感が醸成され,改革スピードが大きく上がりました。
一方、物流・産業システムやパーキング関連製品などは、製品のベース部分は固定されているものの、それにお客さまごとにカスタマイズやオプション機能を加えることによって製品を完成させる「準量産品」のタイプに属します。こうした製品の場合は、固定部分の範囲をなるべく広げるとともに、カスタマイズ・オプション部分を極小化することによって、お客さまに提供する価値を維持しつつ、同時に納期の短縮や製品バリエーションの拡大なども実現できます。
そして橋梁や水門、プラントといった「一品もの」に関しては、建設現場と工場との間をデジタルでつないでよりスムーズに情報を連動できるようにすることで、工程管理をより正確かつ効率よく行えるようにしていきます。 【次ページ】製造業など「超縦割り組織」にDXを浸透させる方法とは?
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