- 2009/07/31 掲載
【都築響一氏インタビュー】本当におもしろい企画を生み出すために(2/2)
『デザイン豚よ木に登れ』 |
都築氏■僕の場合は、さっきも言ったように類書のない本を作っているんです。『TOKYO STYLE』は、本来建築雑誌の人がやってくれればいいし、『珍日本紀行』は旅雑誌の人がやってくれたらそれでいいんですよ。でも、専門誌に持ちかけてもどこもやらないから、とりあえず自分でお金をかけて始めてみたんです。本当にやりたい企画かどうかを測る意味でも、自腹を切ってやってみようかと。
――それで、木村伊兵衛写真賞(※6)まで獲ってしまった(笑)。ヨドバシカメラの店員に、いろいろカメラの話を教わるっていう話をインタビューでもされていましたよね。
都築氏■いまだになめられているというか、素人扱いですよ(笑)。本当にお金が潤沢にあれば、カメラマンもライターも雇います。それで、自分は編集だけやってれば、どんどんいろんなものを作れるじゃない。やりたいことはたくさんあるわけだから。
だけど、そうじゃないから嫌々カメラマン、嫌々ライターをやっているわけで、本業はあくまで編集者ですよ、という意味も込めて編集者を名乗ってるんです。
――都築さんが最近おもしろいと注目している媒体はありますか?
都築氏■Webマガジンはおもしろいところが増えていますよ。
――「Webマガジンはおもしろい」という意見は、希少かと思っていましたが。
都築氏■今、僕はWeb連載を2つ持っています。ページの端をクリックすると本のようにページがめくれるみたいなインタフェースよりも、とにかくブログの形で配信するところが増えて良くなった気がします。Webサイトのデザイナーって、モバイルだろうがMacだろうがWindowsだろうが、形が崩れないで同じように見えるように作らなくてはいけないみたいなんですけど、それってくだらないことなんですよ。
僕のスナック取材の連載は、ブログを使って連載しているものなんだけど、半分以上の読者が携帯電話で読んでいるのね。携帯電話で1万字の原稿なんて読めるのかと思うんだけど、意外に読める。携帯電話のブラウザによっては、デザインがめちゃくちゃに崩れてたりするんだけど、そっちの方がいいんです。
ダメなのは、途中でページを区切って4ページくらいに分割しちゃうやつ。とにかくデザインは崩れるけど膨大なテキストが読めるといった方がいいんです。スクロールバーをクリックしてもクリックしてもまだまだ先があるというのは見せた方がいい。Webで一番感じられないのって、ボリューム感じゃないですか。だからページ区切ったらそれがわからなくなる。だから、ブログ形式で膨大に写真とテキストを放り込むといったようなことが、Webメディアの特性にあっているんだと思う。
――ご自分でも積極的にネットを活用したいというようなことは考えていますか?
都築氏■自分でWebを使ってやりたいなぁと思っていることもあるんですよ。これは、どこかと組んでやるというわけではなく、自分でやるつもり。いま、やりたい企画をたくさん抱えているのに、なかなかそれをやらせてくれる媒体がないんですね。
なので、とりあえずネットでそれを公開しちゃって、見せていこうかと思っています。そこで商品にして買いたいと思う人に直接売ってもいいし、興味を持ってくれた出版社と一緒に本や雑誌にしてもいい。そんな媒体を、来年の初頭には起ち上げようと思っています。
(注)
※6:木村伊兵衛写真賞
写真家に与えられる新人賞。都築氏は、1997年度に「ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行」で受賞。現在は、選考委員に名を連ねている。
(取材・構成:速水健朗)
●都築響一
1956年、東京生まれ。
1976年から86年まで『ポパイ』『ブルータス』誌で現代美術、建築、デザイン、都市生活などの記事をおもに担当する。1989年から92年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行。
1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。
1996年発売の『ROADSIDE JAPAN』で第23回・木村伊兵衛賞受賞。
現代美術、建築、写真、デザインなど広範な分野での執筆活動、書籍編集を続けている。
ブログ:roadside diaries
連載:都築響一の東京スナック魅酒乱
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