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- 2014/12/08 掲載
ななつ星in九州の立役者、JR九州 唐池恒二会長が魅せる「夢」とそれをもたらす「気」
日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」
「世界の豪華列車に乗車された方からも、オリエント・エクスプレスを超えたとお褒めいただくほどの評判をいただいている。世界トップクラスと控えめに表現してはいるが、私は世界一の列車だと信じている」
ななつ星という名前には、「7」両で編成され、九州「7」県をめぐり、九州の「7」つの観光素材を扱い、3つ星や5つ星ホテルのさらに上を目指すという思いが込められている。さらに「in九州」と名前につけることで、トップレベルの列車とともに、世界に向けて九州を発信していきたいとの願いがあった。
それが結実したななつ星は、高額な料金設定にもかかわらず、高い人気をもって迎えられた。発売から1年間の平均倍率は33倍にものぼり、運行開始から1年を経た今も、その人気は衰えを見せない。あまりの人気の高さゆえに、唐池氏のもとにはチケットを融通してもらえないかという相談の連絡も少なくないそうだ。
唐池氏は「さまざまな方からご相談を受けるが、ななつ星の乗客はすべて公正な抽選で決定している。元プロ野球選手の王貞治さんから相談をいただいたときにはさすがに心が揺れたが、やはりお断りをした。そうしたら他の方をお断りするのが楽になった。世界の王さんも断ったんだから、その後は誰が相手でも断れる」と笑顔で明かす。
ななつ星は日本初のクルーズトレインと言われているが、実は“クルーズトレイン”という言葉自体、JR九州が作り出した造語だ。豪華客船を使ったクルーズ旅行のように、目的地を目指す移動ではなく、列車の旅そのものを楽しんでもらいたいという思いが込められている。今や鉄道他社にもクルーズトレインというジャンルが広がり始めているほどだ。そのクルーズトレインを象徴するものとして唐池氏は、一枚のイラストを示した。
「これはななつ星をデザインした水戸岡 鋭治さんが描かれたもので、ななつ星の旅を象徴している私の大好きなイラスト。『新たな人生にめぐり逢う、旅』というコンセプトが、この1枚に込められている」
このイラストは、ななつ星が駅のホームに停車中のもの。ホーム上では多くの客が、思い思いに過ごしている。列車を象徴する画像といえば列車を主役にするのが一般的だが、このイラストでは列車よりもそれぞれの乗客に焦点が当てられている。単に装備が豪華な列車としてななつ星が作られたのではなく、記憶に残る旅そのものをつくりあげようとした意思がそこからは感じられる。
車両づくり、旅づくりに携わる人々の「気」が詰まっている
「客室に取り付けてある有田焼は、人間国宝である第14代酒井田柿右衛門さんの作品。柿右衛門さんはがんとの闘病を続けながらこれらを作ってくださった。納品の1週間後に亡くなったため、完成した内装をお見せできなかったのが心残りだ」
外装は、鉄道の車両としてはこれほど磨いたことがないと職人が言うほどに磨き上げ、何重にも塗装を施して鏡面のように仕上がっている。ボディには景色が映り込み、森を走れば緑に、夕暮れには紅く、そして夜は漆黒と、環境や時間によって姿が変わるという。その手間は通常の車両の比ではなく、現場の職人が二度と同じような車両は作りたくないと言ったほどだという。
そうした車両で体験するのは、銘店の大将が乗り込んで目の前で握ってくれる寿司をはじめとした本格的な食事や、ピアノとバイオリンの生演奏を味わうラウンジカーでくつろぐひとときだ。
「酒井田柿右衛門さんや日立製作所の方をはじめ、ななつ星の完成には数千人の職人さんが関わっている。それらの方々の思いが、『気』となってななつ星には詰まっている。それを走らせ、旅を支えるJR九州数千人の職員の『気』も込められている」
【次ページ】「気」を集めて職場を元気にするため、夢みる力を与え続ける
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