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- 2018/06/13 掲載
九州新幹線で断念のフリーゲージトレイン、なぜ近鉄で復活するのか
狭軌と標準軌混在の近鉄路線、悲願達成へ車両開発
奈良県橿原市の近鉄橿原神宮前駅構内に4本のレールが敷かれた場所がある。鉄道の線路幅には大きく分けてJR在来線と同じ幅1,067ミリの狭軌と、新幹線と同じ1,435ミリの標準軌があり、線路幅に合わせた列車が走っているが、その両方の列車が走行可能な施設だ。四線軌条と呼ばれ、検査などに使われている。橿原神宮前駅から北へは標準軌の橿原線が敷かれている。これに対し、南へは吉野線、西へは南大阪線と、ともに狭軌の路線が伸び、大阪市阿倍野区の大阪阿部野橋駅から吉野駅まで南大阪線、吉野線を通る直通列車が走っている。しかし、吉野線と橿原線は直通運転できず、橿原神宮前駅で乗り換えなければならない。
近鉄は大阪、京都、奈良、愛知、三重の5府県に501キロの営業路線を持つが、戦時中から周辺の鉄道会社を吸収して路線を広げてきた経緯から、狭軌と標準軌の路線が混在する。
近鉄にとって狭軌と標準軌の混在は、長年の悩みだ。かつては名古屋線も狭軌で、大阪-名古屋間の列車は三重県松阪市の伊勢中川駅で乗り換えを余儀なくされたが、1959年の伊勢湾台風被災を機に、復旧工事に合わせて標準軌への改軌を進め、直通運転を実現した。
しかし、南大阪線や吉野線には手が回らなかった。近鉄は異なる幅の線路を通る列車を通すために3本のレールを敷く三線軌条化や、標準軌への改軌を検討したものの、決め手を欠き、直通運転できないまま今に至る。京都から吉野への直通運転は近鉄の悲願といえる。
近鉄は6月22日付の役員異動に合わせて総合研究所にFGT開発担当の役員を配置し、研究を本格的にスタートさせる。私鉄による本格的な開発は初めてで、国土交通省などに協力を求める考え。
実現すれば京都駅から吉野駅までの移動時間が短縮され、沿線の観光振興にも波及効果が期待できる。近鉄は「乗客の利便性向上や沿線活性化のために、実現したい」と意気込んでいる。
東京・新空港線への活用を期待する声も
奈良県は東大寺、奈良公園など多くの観光地を抱え、大阪、京都のベッドタウンとなる北部と、深い山に囲まれ、過疎が深刻な南部の格差が問題になっている。奈良県や県南部の自治体は南部振興の切り札を観光と位置づけ、FGTに期待を寄せる。県南部の入り口に当たる吉野町は、桜の名所吉野山を抱えている。吉野山は金峯山寺など修験道の社寺が点在する山岳信仰の聖地で、山全体が世界遺産に登録され、年間74万人の観光客が訪れる。吉野町産業観光振興課は「外国人観光客も少しずつ増えているが、もっと多くの人に来てほしい」という。
FGTも国内初登場となれば観光の目玉に浮上しそう。奈良県ならの観光力向上課は「FGTが導入されれば、県南部が活気づくのではないか」と期待する。
【次ページ】高速運転に課題も一般路線なら運用に可能性
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