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日本でも徐々にワクチン接種が進んできたことから、国内経済の回復時期についても関心が高まりつつある。ただ諸外国と比較して接種の遅れが致命的であることや、もともと経済の基礎体力が弱いという現実もあり、米国のように急回復というわけにはいかないだろう。現時点では生活に困窮している人も多く、消費の回復などを話題にする時期ではないかもしれない。ただ、感染症はいつかは終息するものであり、日本にもどこかのタイミングで急激に消費が拡大する、いわゆる「リベンジ消費」がやってくる可能性は高く、事業者にとっては相応の準備が必要となる。
中国に続いて米国でもリベンジ消費か?
米国の2021年1~3月期におけるGDP(国内総生産)成長率は、物価の影響を考慮した実質で6.4%(年率換算)と急回復を見せた。特に個人消費が大幅な伸びを示し、これが全体の成長を牽引した。米国の成長が著しいのはワクチン接種が順調に進み、経済活動が元に戻りつつあることが最大の要因である。
中国は、各国に先んじて新型コロナウイルスの封じ込めに成功したと主張している。その説明が100%正しいのかはともかくとして、感染を抑制しているのは間違いなく、中国経済はほぼコロナ前の水準に戻っている。
中国ではコロナ後の景気回復に際して、これまで抑制されていた消費が一気に爆発する「リベンジ消費」と呼ばれる現象が発生した。変異株などリスク要因はあるが、米国の感染が今後、完全終息に向かえば、中国と同様、相当な規模のリベンジ消費が発生する可能性が高い。
一方、欧州(ユーロ圏)の1~3月期におけるGDP成長率は年率換算でマイナス2.5%と2期連続のマイナス成長、日本はさらに悪く、年率換算で3.9%のマイナスに沈んだ。日本はワクチン接種が遅れていることから、この結果は予想されていたことだが、欧州は国によってワクチン接種の状況が異なっている。状況が悪い国に引っ張られる形で、全体の成長率は伸びなかった。
米国はリーマンショックの影響からほぼ完全に立ち直っており、経済の基礎体力が強い。一方、欧州は南欧を中心にまだ回復が十分ではなく、日本はさらに基礎体力が弱い状況にある。コロナのような経済危機が発生すると、基礎体力の強い国ほど影響が軽微で回復も早く、弱い国ほど影響が深刻になり、回復までの時間も長引くことになる。日本においてコロナ危機で生活苦に陥る人が多いのは、経済の基礎体力が弱く、政府の財政支援も手薄だからである。
したがって日本経済が完全回復するのはまだ先の話になるが、感染症というのはいつかは終息するものである。日本でも完全終息の見通しが立った時には、かなりの確率でリベンジ消費が発生すると予想される。
リベンジ消費は一過性のものとはいえ、この消費拡大をうまく収益に結び付けられれば、その後の企業行動は大きく変わる。現時点では終息が見通せない状況であり、先のことを考えるのも難しいかもしれないが、多少なりとも余裕のある事業者は、やがて到来するリベンジ消費に対する準備をスタートしておいた方が良いだろう。ではリベンジ消費はどのようなメカニズムで発生し、どのような業種に波及するのだろうか。
短期的には消費は元に戻ろうとする
マクロ的に見た場合、消費者がどのような品目やサービスにお金を使うのかという行動パターンは、短期的には大きく変化しない。人によって好みはさまざまとはいえ、全体の平均を取ると、食品、衣類、外食、旅行、贅沢品など各項目への支出比率は数年では大きく変わらないのだ(10年、20年という単位では、社会の構造が変化するので、消費のパターンも変わっていくが、1年、5年という単位では大きな変化は発生しない)。
短期的に消費のパターンが変わらないのだとすると、何らかの理由で、ある消費が抑制された場合、その要因が消滅すると、一気に元の状態に戻ろうとする動きが発生する。今回で言えば、コロナ危機で一部の消費が著しく抑制されているので、コロナが終息すると当該消費が想像以上に急回復するという流れになる。これがリベンジ消費の正体である。
リベンジ消費は上記のようなメカニズムで発生するため、あくまで一過性の現象に過ぎず、一定期間が経過すると元の安定状態に戻ってしまう。だが企業にとっては、集中して利益を上げ、コロナ期間中の損失をカバーする最大のチャンスであり、この需要をうまく取り込めるのかによってコロナ後の経営は大きく変わる。
逆にリベンジ消費の動向を見誤り、ここで十分な利益を上げられないと、コロナによる影響を修復できないまま次のフェーズに入ってしまうため、長期的な影響が大きくなる。
【次ページ】リベンジ消費の恩恵を受ける4業種とは
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