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- 2024/11/08 掲載
日銀「時間的余裕」発言消滅が意味するものとは?金融政策の行方を探る
自民の大敗北で物価高要因が目白押しに
日銀は2024年10月31日に開催された金融政策決定会合において、現在、0.25%となっている政策金利を据え置くことを決定した。今年に入って日銀は、大規模緩和策から脱却し、金融正常化を進める方針を示してきたが、与党内には低金利の継続を求める声が大きく、金融正常化に前向きと思われていた石破茂首相も発言を後退させるなど、日銀にとって逆風が吹いている。こうした中、総選挙が行われ、自民党は惨敗。大規模な減税策を掲げる国民民主党との政策協議に入ったことで、政治の不透明性はさらに高まった。
国民民主党は103万円の壁を撤廃するなど、所得税の大規模な減税策やガソリン税におけるトリガー条項の廃止、消費税の5%までの減税などを強く主張しており、自民党が国民民主党の政策を受け入れた場合、財政支出が大幅に増えるのは確実である。
現在、政府は防衛費の倍増や子育て支援の強化、石破政権になってからは地方創生交付金の倍増が加わり、支出増をもたらす政策が目白押しである。上記だけでもすでに10兆円近くの金額だが、ここに国民民主が提唱する減税策が加わると、政府の財政負担は極めて重くなる。さらにトリガー条項の廃止や消費減税まで実施した場合、30兆円近い金額が必要だ。
物価上昇による税収増でカバーできるという見解もあるが、物価上昇で税収が増えたということは、いずれ金利上昇による利払い負担が増加することを意味している。税収増による効果は今だけの現象にとどまる可能性が高いだろう。一般会計の規模がわずか110兆円程度しかない現状を考えると、一連の支出増がもたらすインパクトは大きい。
仮にこれらの支出を国債で賄った場合、円安と物価上昇が加速するのはほぼ確実であり、所得増の効果を物価上昇が打ち消してしまうことになる。
「時間的余裕」という表現が消えた意味
実際、衆議院の解散以降、為替市場では円安が進んでおり、市場は物価上昇に対する警戒モードに入っていた。今回の金融政策決定会合はこうした状況下で開催されたものであり、日銀にとって難しい選択だったと思われる。結論から述べると、政治的状況に配慮して、金融政策は現状維持としたものの、市場に対しては引き続き利上げの意思が固いことを伝えられたという点で、まずまずの成果だったといってよい。今回、政治的メッセージと市場へのメッセージを使い分ける役割を担ったのが「時間的余裕」というキーワードである。
前回の金融政策決定会合において植田総裁は、「金融政策の決定には時間的余裕がある」と発言していた。この表現は、日銀には時間的余裕があるのですぐに利上げをする必要はない、と捉えることもできるし、状況が変われば利上げを決断すると解釈することもできる。 【次ページ】当面は政治に翻弄され続ける
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