• 2024/11/22 掲載

トランプ再選で日本経済に迫る危機、まるで予想がつかない「矛盾」とは

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トランプ氏の米大統領返り咲きが決まったことで、過激な経済政策が実行に移される可能性が高まってきた。トランプ氏が主張する一連の政策が本当に実施された場合、日本経済への影響は甚大だろう。
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トランプ大統領により、過激な経済政策が実行されるのか?
(Photo:Anna Moneymaker / Shutterstock.com)

トランプ氏にとって日本は米国のお金を奪う国

 トランプ氏は選挙戦を通じて、これまでの常識を覆す過激な公約を打ち出してきた。世界経済への影響がもっとも大きいと予想されるのが、対中関税を60%まで引き上げると同時に、日本など友好国からの輸入にも10%の関税をかけるという通商政策だろう。関税の大幅引き上げは、米国経済はもちろんのこと、米国と貿易を行うすべての国に極めて大きな影響を及ぼす可能性が高い。

 もっともトランプ氏は、主張する中身がコロコロと変わるので、これらの政策が本当に実施されるのかは何ともいえない。だが、気まぐれに見えるトランプ氏とはいえ、「アメリカ第一主義」の信念は固いとされ、関税引き上げと移民排除については、就任早々取り掛かる可能性が高いと予想される。

 トランプ氏は、中国やドイツ、日本など、米国に製品を輸出したり投資を行う国は、米国の富を奪っていると考えており、とりわけ中国に対しては、第1次トランプ政権の時代から大幅に関税を引き上げるなど、事実上の貿易戦争状態となっていた。今回は、輸入関税を60%まで引き上げる方針なので、中国から米国への輸出はさらに減ると予想される。

 そして、前回との最大の違いは、敵対的な通商政策が日本やドイツなど友好国にも及ぶという点だろう。トランプ氏は選挙戦の最中とはいえ、日本やドイツなど友好国に対しても「敵対的よりひどい形で我々を利用してきた」とかなり激しい口調で批判している。

 外交的な意味において敵対的であれ友好的であれ、米国に対して輸出する国は米国の富を奪っているという点で、トランプ氏の見方は一致している。第1次トランプ政権時代の高関税政策は杜撰(ずさん)なものであり、東南アジアやメキシコを経由した中国の迂回輸出が続くなど、事実上、関税が骨抜きになっていた。トランプ氏は一連の状況について腹立たしく感じており、今回はメキシコからの輸入にも高い関税をかけるなど、迂回輸出も徹底して阻止する構えだ。

日本の空洞化がさらに進む

 仮にトランプ氏が一連の政策を実行に移した場合、日本企業は米国への輸出において極めて不利な状況に追い込まれる。仮に10%の関税がかけられた場合、日本製品の価格は高くならざるを得ない。多くの企業が、売れ行きが悪くなることを覚悟してでも米国への輸出を継続するか、米国内での現地生産に切り替えかという選択を迫られるだろう。

 日米間については、80年代から貿易摩擦が存在していたこともあり、日本メーカーは積極的に米国の現地法人化を進めてきた。結果として米国を主な生産拠点とする企業も多くなっているが、トヨタのように国内製造拠点を維持している企業もあるほか、現地生産に切り替えても、調達する部品については日本からの輸入に頼るところも多い。こうした企業の場合、国内生産拠点の撤収を迫られたり、部品輸出の減少という問題に直面するだろう。

 現地生産に切り替え、部品の調達がスムーズに実施できれば、企業の業績自体は悪化しない。だが、日本国内の生産拠点がなくなるため、国内産業には空洞化の懸念が出てくる。加えて、輸出が減少するため、対価として米ドルを受け取る取引が消滅してしまう。これは実需の円買い減少を意味しており、円安が進みやすくなる作用をもたらすことになる。 【次ページ】来年、日本では値上げラッシュが再来する?
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