- 2024/11/22 掲載
トランプ再選で日本経済に迫る危機、まるで予想がつかない「矛盾」とは(2/2)
来年、日本では値上げラッシュが再来する?
一方、これらの通商政策は米国経済にどのような影響を及ぼすのだろうか。関税が課されれば輸入製品の価格が上昇するので、米国内の物価を引き上げる作用をもたらす。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が量的緩和策を推進してきたこともあり、米国ではインフレが進んできた。FRBは金利を引き上げることでインフレに対処しようとしているが、利上げが進みすぎると景気を悪化させるので、FRBは利上げを打ち止めした状態にある。
だが、トランプ政権が高関税をかけた場合、インフレ圧力が高まるのは確実であり、FRBはやっかいな状況に置かれる。さらに言えば、トランプ氏は不法移民の強制排除も実施するとしており、移民がいなくなった場合、低賃金労働に従事する労働者が減少するので賃金上昇が見込まれる。賃金上昇は関税と同様、国内経済においてはインフレ圧力となり、物価上昇がさらに激しくなるかもしれない。
基本的なセオリーで考えた場合、インフレが加速する時には、中央銀行は利上げを実施するはずなので、日本と米国の金利差が再び拡大し、円安ドル高が進展するというのが短期的かつ一般的な見立てといって良い。
実際、トランプ氏の当選が決まって以降、為替市場では円安が進んでおり、市場は円安を織り込み始めている。円安が進んだ場合、日本の輸入物価は再び上昇に転じることになり、国内の物価も上がる可能性が高い。場合によっては、来年以降、再び値上げラッシュに悩まされることになるだろう。
長期的にはドルの価値が下がる可能性も
今、説明した内容は基本的な経済のセオリーに沿ったものだが、そうとは限らないところがトランプ政権の特徴である。トランプ氏は片方ではインフレを悪化させる政策を矢継ぎ早に打ち出しているものの、一方で、インフレ抑制のカギとなる中央銀行を激しく批判している。トランプ氏はFRBのパウエル議長を度々攻撃しており、金利の引き下げを要求する可能性もあるとしている。そうなるとインフレが止まらなくなるリスクが高まってくる。トランプ氏の主張は完全に矛盾したものだが、このあたりについてトランプ氏が現実問題としてどう判断するのかまったく予想がつかない。
米国でインフレが進み、これをうまく制御できなかった場合、最終的にはドルの価値減価という形で辻褄を合わせる必要が出てくる。そうなると、一旦は進んだ円安ドル高が逆転し、円高ドル安の流れが発生してくる可能性も十分にあり得るだろう。
トランプ氏の政策は相互矛盾が多く、かつ、どの政策を優先するのか予想がつかないという点で極めて不確実性が高い。短期的な影響と中長期的な影響が大きく乖離する可能性があり、日本側はこの点についても十分な警戒が必要となる。
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