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- 2022/10/03 掲載
「地方型MaaS」挑戦の舞台裏、MaaSによって地方都市が得たものとは何か
連載:MaaS時代の明日の都市
人口減少が進む、交通拠点として栄えた地方都市
長野県小諸市は、同県東部のいわゆる東信地方では上田市、佐久市に次ぐ第3の都市で、人口は約4.2万人。戦国時代に整備されたと言われる小諸城の城下町、および北国街道の宿場町として栄えた。明治時代になると北国街道が国道18号線となったのに続き、信越本線が開通。その後は小海線も乗り入れ、交通の要衝として発展した。しかしながら、北陸新幹線の誘致活動で南隣の佐久市に敗れ、信越本線が第三セクター「しなの鉄道」となり、東京と直結する特急列車がなくなったことなどが影響し、佐久市とは対照的に人口減少が進んだ。
交通とは無縁だった地元企業がMaaS事業に挑戦
この影響を受けたのが路線バスで、佐久市から小諸市を経由して上田市に至る路線は2021年に廃止され、新幹線が乗り入れる佐久平駅と小諸駅、市内北部の高峰温泉を結ぶ路線のみが残っている。一方小諸市では、2016年から朝夕定時定路線、日中オンデマンドとする市営バスを導入した。しかしながら定時定路線バスは利用者が少ないのに対し、オンデマンドバスは特定の時間に予約が集中するなど、課題を残していた。
こうした中、西隣の東御市では、地元企業の手で、2020年度に市内巡回電動バスの実証実験が始まっていた。
実験を行ったのは、1886年に長野県で創業したカクイチで、ガレージ・物置、農業改革、太陽光発電など幅広い分野を手掛ける企業である。同社では地域活性化の一環として、2020年にMaaS事業に進出。筆者は当初からアドバイザーを務めている。
中心市街地で電動カート/バスの社会実験から開始
小諸市は東御市の実証実験に注目し、2021年度からカクイチとともに社会実験を始めることになった。同年4月に三輪と四輪の電動カート「egg」を中心市街地で周回させると、8月には電動バス「こもこむ号」を使った市内巡回路線も運行開始した。さらに翌月からは、電動カート/バスのロケーションシステムや時刻表、QRコードによる乗車チケット、協賛店舗一覧情報などを提供するMaaSを、スマートフォン向けウェブサイトとして展開している。
結果は予想以上で、カートの最初の10日間ののべ利用者数は522人と、同種の車両を用いた地域交通としては、多くの先行事例を上回った。
【次ページ】MaaSアプリ開発、利用ハードル下げるためにLINEを入り口に
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