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新しい情報伝達プラットフォームとして登場したインターネットは、テレビや新聞などの従来マスメディアに大きな衝撃を与えた。しかし今、こうしたマスメディアは改めて情報の発信・共有とは何かを考え直す局面に立たされている。それが、TwitterやFacebook、YouTubeなどのソーシャルメディアの台頭である。「SOCIAL MEDIA WEEK」の基調対論でジャーナリストの田原総一朗氏と佐々木俊尚氏がソーシャルメディアの今と未来を語った。
硬直化したマスメディアを揺るがす新たな波
「SOCIAL MEDIA WEEK」の基調対論で登壇したジャーナリストの田原総一朗氏は冒頭、自身がTwitterを始めたきっかけは佐々木俊尚氏に教えられたからと明かした。Twitterのおかげでファン層が若返ったと笑う田原氏は、「批判されることが好きなので、(批判的な意見も)なるほどと逆に刺激を受けて面白い」と語る。
日本のTwitter人口は、2010年4月で約1000万人、2011年4月で約2300万人に達した。特に震災以降、情報交換の有効なツールとしてTwitterの人気は急上昇し、「最近は新聞社が記者個人のTwitterを公認し、情報発信の1つとして取り入れている」ほどマスメディアにも浸透が始まったと佐々木氏は言う。
社論と異なる個人の見解はツイートできないとするメディアも根強く存在する。しかし、佐々木氏は「社論と持論が一致しないのは当たり前。原発についても反対か是認かは個人で違う」とし、むしろ記者の個人的な見解であると注釈をつけて社全体で議論する方が、メディア自体を透明化できて良いのではないかと述べた。
さらに両氏は、現在のマスメディアがコンプライアンス順守で硬直化していると危惧する。「言い換えれば、無難に収めようとする」と批判する田原氏は、その状態に風穴を開けるのがソーシャルメディアではないかと期待する。
たとえば、ニコニコ動画やYouTubeなどの動画を視聴できるネット融合型テレビのスマートテレビについて、「ニコニコ動画は録画動画にみんなの意見を字幕で流して楽しむという、新たなスタイルを生み出した。スマートテレビも、放映と同時に書き込みを表示すれば、これまでにない爆発的なエネルギーが誕生するかもしれない」と佐々木氏は可能性を示唆した。
ソーシャルメディアの強みは集合知であること
対談では、インターネットは新聞や雑誌に対抗するものではなく、むしろ共存するメディアであるという意見も出た。
「日本の新聞のダメなところは、通信社が発表した記事をそのまま掲載することが多く、分析記事や調査記事が少ないこと」と田原氏は言う。原因の1つに、専門性が挙げられた。年金問題を深く分析するには、経済だけでなく数学の知識も必要になる。そうした記者が育っていないのが現状という。
田原氏が会場に新聞をとっていない人はいるかと尋ねたところ、会場の7割近くが挙手した。両氏はあまりの多さに驚きながらも、記事に深みがないのも原因の1つと分析した。「新聞などでは即時性の高い記事を取り上げる記者が重宝される」と述べた佐々木氏は、その結果、記者はメーカーや警察署などにぶらさがってすっぱ抜き記事を漁るのに終始し、分析記事を書かなくなったと指摘した。
一方のソーシャルメディアは、いわば専門家の集合体だ。「コンビニで働くフリーターもコンビニ労働の専門家だ。こうした何らかの知見を持つ個人が集まり、知識を共有して積み重ねれば社会の知となる」(佐々木氏)。
一部の新聞社では、記事の冒頭を無料公開し、その先は有料で公開するというPay Wall方式を取っているところもある。しかし、記事を囲い込んだ場合、引用元を閲覧しながら対話するソーシャルメディアの輪から外されてしまう。対抗するメディアとしてではなく、互いを補完し高め合える可能性をもっと検討すべき時期に来ていると両氏は指摘する。
【次ページ】日本はソーシャルメディアで変われるか?
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