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日本経済の「失われた20年」の中、これからの日本企業の経営に必要なものはなにか、どのような戦略をとるべきなのだろうか。「JUASスクエア ITガバナンス2010」の基調講演で、グローバル化とインテリジェント化をキーワードに、21世紀の日本企業戦略について、NTTデータ経営研究所 所長 千葉商科大学大学院 名誉教授 齋藤精一郎氏が登壇した。齋藤氏は、ITに求められるインテリジェントなサービス、クラウドの持つ意味について言及した。
欧米でも「失われた10年」となるか
「この20年間、日本経済は迷走を続けているといってよいだろう。そして、さまざまな企業が、その突破口を見つけるべく戦略の模索を続けている。」齋藤氏は、昨今の日本経済と企業をとりまく状況についてこう切り出した。過日、日銀の白川総裁が参加した、米国カンザスシティーで開催されたシンポジウムでは、リーマンショック、ギリシャショック以降、欧米でも、かつて日本が経験した「失われた10年」(Lost Decade)のような状態が起こるのではないかという発言がされたという。
この「失われた10年」とは、日本のバブル経済が崩壊したとされた、1990年からの10年を指す。この間、経済成長率が8年間も1%に満たないという低空飛行を続け、株価も1989年に3万9千円台という最高値を記録して以来、1999年までに1万8千円台と半分にまで下げている。2000年代前半には回復基調がみられたものの、全体的なデフレは止まらず、現在の株価は9千円を前後している。バブル期の最高値からすると1/4の水準である。なぜこれほど低迷することになったのだろうか。
世界が変わったのに変わらない日本
齋藤氏は、この原因として、自民党や霞ヶ関主導の官僚政治の問題、小泉政権以降の日替わりランチのような首相の交代、国民不在の民主党政権などがあるとしながら、根本的な原因は、ルールが変わった、もしくは、世界が変わったことにあると指摘。日本がそれを認めようとせず旧来からのやり方を変えないことにあると主張する。
過去にルール、もしくは世界が変わったタイミングは、1989年11月のベルリンの壁崩壊にさかのぼることができる。それの意味するところは、社会主義経済の崩壊であり、冷戦の終結であった。これを境に、ロシアも中国も、政治体制とは別に市場経済を取り入れて大きく変化し、グローバル市場の構造も様変わりした。それに伴って、自民党的な政治や高度成長期の霞ヶ関の戦略も役割を終えたはずである。「ルールが変わったのに、それを認めようとせず、自ら変わろうとしない日本経済が20年も迷走を続けるのは、ある意味必然である」と齋藤氏は述べる。
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