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  • 2010/08/11 掲載

東京大学大学院 伊藤元重教授講演:激変する世界の中で、これからの日本企業が持つべき3つの視点

「先進国の少子高齢化」「技術革新」が進む中、人や企業を革新する

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東京大学大学院 経済学研究科 教授 伊藤元重氏は、今、世界で、100年に1度あるかないかの大きな構造変化が2つも起きていると指摘する。1つが、「先進国の少子高齢化」だ。これにより、先進国から新興国への急速な経済シフトが生まれている。そしてもう1つが「技術革新」だ。デジタル化の進歩により、あらゆる分野で国境を超えた動きが活発化した。今後の日本は、こうした世界規模の変化と無縁ではいられない。それではこの先、日本はどのような方向に舵を切っていけばいいのか。イノベーションサミット 2010に登壇した伊藤教授の提言をご紹介する。

日本はアジアの中でも“One of them”に

photo
東京大学大学院
経済学研究科
教授
伊藤元重氏
 「先進国の少子高齢化」と「技術革新」、まずは伊藤氏が指摘するこの2点について、詳しく触れておこう。

 現在先進国では、40代後半から60代前半までの人口が膨らんでいる。豊かさと寿命の延長の中で表れた現象だ。人類史上、初めてのことだという。一方、たとえばインドでは人口の半分以上が16歳以下だ。こうした状況が、先進国から新興国への経済シフトを大きく加速している。

 また、バブル崩壊後の1990年から2010年までの20年間で、日本の経済規模はドル換算で1.6倍になった。しかし中国は約12倍。20年前に日本の8分の1だった中国経済は今や日本を超え、あと10年もすれば、日本の約3倍になるという。

 「日本はアジアの中で、あるいは世界の中で、“One of them”になろうとしてる」(伊藤氏)

 次に、世界を変えるような本格的な「技術革新」だ。これは50年から100年に1度、必ずやってくる。たとえば自動車。1908年にT型フォードが登場し、その後20年弱の間に、自動車は全米の各世帯が1台ずつ所有するまでになった。電気についても同様だ。20世紀初頭、米国の一般家庭の明りは、ほとんどが灯油のランプだった。これもその後20年ぐらいの間に約2000万世帯にまで普及した。以来約100年、世界は機械や電気などの技術の上に成り立っている。

 「ITバブル崩壊直後の2000年ごろに市場が感じたデジタル革命は、自動車や電気の技術に匹敵する、あるいはそれ以上かもしれないもの」(伊藤氏)

 ITバブルは一旦はじけたが、デジタル化の波は世界中に広がり、同時に利用コストも劇的に下がった。この流れをうまく利用した典型的な企業がウォルマートだ。ITを活用して、膨大な情報を、リアルタイムに、グローバルに、非常に複雑な形で処理することで、流通を根底から変えた。

 「これら劇的な世界規模の変化の中で日本の産業を振り返って見れば、これまでのあるべき姿と変わってくるのは必然のこと」(伊藤氏)

【次ページ】グローバルな構造変化の中で、日本が考えるべき3つのポイント
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