- 会員限定
- 2012/08/20 掲載
原田泳幸社長が語る、“マクドナルドらしさ”を取り戻したQSC第一主義の経営改革
経営には1円の大切さと5,400億円のスケール感が必要
-
|タグをもっとみる
1円の大切さと5,400億円のスケール感、この両方を持たなければ経営はできない
日立イノベーションフォーラム 2012で登壇した原田氏は、冒頭、「1円の大切さと5,400億円のスケール感。この両方の感覚を持たなければ経営はできない」と切り出し、「改革には当然痛みが伴う。しかし結果が出なければ誰も理解してくれない。改革成功の秘訣は何といっても“業績”だ」と自身の基本姿勢を示した。
マクドナルドは1970年代から20年をかけて1000店舗を達成し、次の10年間でさらに3000店舗を増やした。しかしその後、7年連続マイナス成長という非常に厳しい経験をすることになる。
「店舗の拡大が人の成長よりも速かった。マクドナルドはピープルビジネス。人があって店舗がある。この順番を間違えていた。」
そこで2004年、原田氏はサービス業の最も基本となるQSC(Quality/Service/Cleanliness:品質/サービス/清潔さ)を徹底的に磨くことから始めた。
「何かがおかしくなった時、その会社が本来要求される基本を忘れていることがよくある。まさにマクドナルドはQSCという基本を忘れていた。徹底したQSCの回復に取り組むことで、1年目にして業績がプラスに転じた。」
次にマクドナルドとしての「らしさ」を取り戻すこと。そこには、すべての価格帯で他社も含めて一番の納得感を提供する“バリューフォーマネー”と客の利便性を追求する“スーパーコンビニエンス”という2つの要素がある。
「自社独自の価値をどのように提供するのか。私が知らない時代だが、業績不振の時にはカレーライスや麺類を売ったこともあるらしい。今日でもカウンターの横におにぎりやお菓子などを置けば、絶対に売れるだろう。しかしそれはマクドナルドらしさではない。やってはいけないこと。」
今現在でもQSCが優先順位の第一、投資を伴わない改革や成長はあり得ない
その後もマクドナルドでは、新メニューの開発や24時間営業、地域別価格、フランチャイズ改革など、改革の手を緩めることなく突き進んできたが、原田氏は今現在でもQSCが優先順位の第一だと強調する。「マクドナルドには、全店舗/全時間帯で詳細なQSCのスコアを計測できるシステムがある。それは自社だけの絶対測定ではなく、他社との相対測定によるものだ。他社とQSCのスコアギャップが広がることが、売上アップに結び付く。いくらスコアが勝っていても、ギャップが狭くなれば売上は下がる。」
売上は客単価×客数で決まる。客単価を上げて成長することは一朝一夕には非常に難しい。そこで売上アップのためには客数を増やすことが要求される。すべての投資効果を最大化するために徹底してQSCを磨く。そしてバリュー戦略で客数をかせぐ。これが同社の大前提となる経営スタンスだ。
しかし社長就任9年目の2012年は、4~6月期の既存店売上高は対前年比マイナスという初めての試練に直面しているという。
「ただ商品の質的には絶対に劣っていない。この厳しい時にこそ打って出る。徹底して客数向上という戦略に軸足を移している。」
客数を上げようとすれば、客単価は当然落ちる。しかし敢えて客単価を下げてでも、今は客数を上げることに専念する。既存店売上高が一瞬下がったとしても、次の成長のために投資をする。
「厳しい時にどこに投資をし、どこを守るか。これも非常に重要な経営の課題。」
また原田氏は、投資を伴わない改革や成長はあり得ないと断言する。
「投資なき改革はリストラと呼ばれるもの。また投資金額も決して銀行から借りるのではない。経営とは、ヒト/モノ/カネという有限の経営資源を、刻々と戦略的に変えていくことではないか。」
【次ページ】今後はFC店比率70%以上、女性店長の比率50%以上を目指す
関連コンテンツ
PR
PR
PR