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  • 2015/07/21 掲載

岡田武史氏が語る、ITでサッカーを変革する「スマートスタジアム」構想

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元サッカー日本代表監督の岡田武史氏が2014年、四国リーグに所属するFC今治のオーナーになったことは、世間を大いに驚かせた。なぜJ1やJ2ではなく、四国リーグの、しかも経営者という道を選んだのか。そして、岡田氏が進めるITによるスポーツ変革の可能性とは。SAPジャパン主催のビジネスエグゼクティブ向け招待イベント「SAP SELECT」で語った。

SAPを見学して、ビッグデータを活用した科学的なサッカーに開眼

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元日本代表監督で、今はFC今治 オーナーをつとめる岡田 武史 氏 
 岡田氏とITの関係は、FC今治のスポンサーであるデロイトトーマツコンサルティングの紹介で、ドイツのSAP本社へ見学に行ったことが始まりだった。岡田氏は「最初はSAPが何の会社か分からなった。しかし昨年夏のワールドカップで、ドイツ代表チームのデータを分析して優勝に貢献したという話を聞いて、大変興味がわいた」と当時を振り返る。

 その見学を経て、これからはITがスポーツの世界を変えていき、スタジアムなどのインフラもスマート化されるとの感想を持ったという。トレーニング方法についても同様だ。従来のトレーニングはコーチの個人的な感覚がすべてだったが、ITが導入されることで科学的なデータをもとにしたPDCAサイクルを回せるようになる。

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 いま岡田氏は、誰がコーチをしても同じサッカーができる「岡田メソッド」を決めて、トレーニングを実施している。サッカーの要素を「プレーモデル」で分析し、1試合を時間ごとのユニットに区切り、どの攻撃の項目を実行できているかを調べるというものだ。その結果をコーチにフィードバックし、項目改善のために練られたトレーニングを、どのタイミングで取り入れていくのかを判断している。

「誰がコーチをしても、同じアプローチを取れることが重要だ。今後はビッグデータを取得し、それを加工・分析して、フィードバックしていきたい。さらにドイツ代表のように、ビッグデータを試合にも盛り込んでいきたいが、これは四国リーグでは少し早いかもしれない。もっと我々が強くなってから導入することになるだろう」

 もちろん監督の主な仕事は、選手をよく観察して、適切な指示をだすことだ。しかし、ビッグデータを用いることで、何か次の新しい予測ができるようになると岡田氏は期待を寄せる。

「以前までは、データはスポーツの世界で新しい価値を生み出さないものと考えていた。それは単発試合のデータしか見ていなかったからだ。しかし多くのデータの蓄積によって、トレンドが分かることに気づいた。データから新しい展開が生まれるかもしれない。これは劇的な変化をもたらすだろう」

 ビッグデータを蓄積すると、選手がどういうコンデションのときに怪我をするリスクが高まるのか、あるいは選手が何日休まないで出場すると走行距離が落ちるのかといった、さまざなま「傾向」が分かってくるという。

「ドイツのサッカーでは、チームに専門分析官がいて、監督と緊密なコミュニケーションを図っている。彼らは、監督が求めるデータを意図をもってソートして、迅速に提出してくれる。分析官というよりも、むしろコーチと同じ役割を担っている。当時こういう点を理解していなかったため、かなりマネジメント面では損をしていたと思う」

岡田氏が今治で建設したい「スマートスタジアム」とは?

 では岡田氏はなぜFC今治のオーナーを務めるに至ったのか。それは「自らのサッカーを実現したかったからだ」。

「ワールドカップが終わり、男子サッカーが勝てないことに対する世間的な批判も強かったが、やりかたはそれほど間違っていなかったと思う」

 いろいろな議論を重ねるなかで、スペインの有名な監督から「スペインには型があるが、日本には型がないのか?」と言われたという。スペインでは幼少から16歳までにプレイモデルを徹底的に叩き込まれ、それ以降は自由にやらせるというスタイルをとる。つまり、まず基本的な型があり、それを習得させ、次にその型を打破することで、新しいものを生みだすという発想だ。

「自由奔放にプレイするスペインチームに型があるとは思わなかったが、よく考えれば、最初から自由なところから自由は生まれない。何か縛りがあるからこそ、自由が生まれる。そういう意味では、師匠の型を破る日本の武術は正しかった。私は日本人に合ったフレームワークをサッカーでもつくりたいと思った。とはいえ、新しい発想を進めるには、古い発想を壊す必要がある。そこでスタートアップに10年かかかってもよいから、一からチームをつくろうと決心した」

 ただし、FC今治チームの監督に就任する際には、ある条件が岡田氏に課せられた。それは株式も同時に取得して欲しいということだった。

「その意味するところは、オーナーとして逃げられない覚悟をもってやってくれ、ということ。そして本当に逃げられなくなった(笑)。自分も経営に携わるようになり、いかに経営が大変で、お客さまが大切かということがよく分かった。日々、資金集めにも奔走している」

【次ページ】岡田氏が考える「ITによるスポーツ変革」とは
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