0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
共有する
12月3日に新作映画「THE FIRST SLAM DUNK」が公開されることになったマンガ「スラムダンク」。バスケットボールに打ち込む高校生たちがプレイヤーとしても人間としても成長していく青春スポーツマンガですが、実は個性豊かなチームをまとめるマネジメント術や、優秀な人材を育てる教育術など、多くの学びを得ることができます。そこで今回は、『スラムダンク勝利学』を上梓し、スポーツドクターの第一人者としても知られる辻 秀一氏に、チームワークを高める秘訣や、組織で成果を出すために必要なリーダーのスキルなどについてお聞きしました。
聞き手・構成:編集部 井内亨、執筆:阿部欽一、撮影:吉成大輔
聞き手・構成:編集部 井内亨、執筆:阿部欽一、撮影:吉成大輔
10秒でわかるスラムダンクのあらすじ
スラムダンクは、主人公・桜木花道がバスケットボールを通して成長する姿を描いた青春スポーツマンガである。
桜木は、大きな体に赤髪がトレードマークの不良少年。進学先の湘北高校で一目ぼれした赤木晴子の誘いでバスケットボール部に入部するものの、桜木はルールも全く知らないド素人。しかし、恵まれた体格や負けず嫌いの性格から徐々に上達し、バスケにのめりこんでいく。ライバルと切磋琢磨する中でプレイヤーとしても人間としても成長していく桜木、そして湘北バスケ部は全国制覇を目指していく。
ゴリの名言を生んだ、「最高なチーム」に必須の3要素
スラムダンクは青春スポーツマンガですが、ビジネスパーソンにも通じる人間の生き方、チームワークに必要なセルフマネジメントや他者との関係性も数多く描かれています。
映画スラムダンクの内容は(インタビュー当時)まだ公表されていませんが、ファンの間では、テレビアニメで描かれなった山王工業戦(インターハイ)が舞台になるのでは、と予想されています。その山王工業戦にもビジネスパーソンに通じるシーンがあります。
たとえば、原作の中で、インターハイの2回戦、湘北vs山王工業の試合中、ゴリこと赤木剛憲がタイムアウト中に「このチームは……最高だ……」とつぶやくシーンがあります。この時の山王工業はインターハイ3連覇中の超強豪校であり、「過去最強の山王」と言われるほどのメンバーを擁していました。
その強豪を相手に、20点以上離されていた点差を湘北が5点差にまで追い上げた、試合時間残り2分での1コマです。なぜ赤木は試合中、チームが劣勢の中でそんなことを思ったのでしょうか。それを考える前に、チームが最高だと感じるために必要な要素とは何かを考えてみます。
チームを構成する要素には、「個」「全体」「関係」の3つがあります。これはスポーツに限らずどういう組織にも通じるチームの構成要素です。
チームが「最高だ」と感じるには、まず「個」には自立性が保障されていなければなりません。自立性とは、自分のパフォーマンスに対する責任で、やるべきことを、心を整えてやることです。僕の言葉で言えば、「機嫌良くやるべきことをやる(flow do it)」ということになります。
そして、「全体」とは、共有のこと。共有のレベルを上げていかないと「最高」にはなりません。共有するとは、もちろん目標やルール、進捗、情報の共有も大事ですが、もう1つ大事なことが「思い」の共有です。メンバーが何のためにここにいるのか、何が好きなのか、そういう定量化しにくい部分の共有レベルを上げていくことが大事です。
そうすると、最終的にお互いの「関係」に信頼が生まれます。関係の中にどれだけ信頼があるかが、「最高のチーム」のためには重要です。バスケは5人でするスポーツですが、コートにいる5人の中には10通りの関係があります。メンバーが増えれば、指数関数的にチーム内の関係性も増えていきます。
湘北高校バスケ部にも、優れたスポーツチームにも、そしてエクセレントな企業にも、すべての優れた組織にこの原理・原則が当てはまります。
3つの構成要素の中では、まず「個」の自立性が重要で、「やらされていない」集団となることが重要です。ゴリもチームの中で桜木花道や流川楓など誰もほかの人からやらされているわけではないことに気づいていたはずです。
これらはもともと彼らが持っていた強いモチベーション、つまりは個の自立性によるものですが、最初は皆向いている方向がバラバラでした。そこから全体の中で思いの共有レベルが上がり、そしてチーム内の互いの関係に大きな信頼が生まれていった。そのことに、「最高だ」という言葉が出たのではないでしょうか。
【次ページ】なぜ、安西監督は「白髪鬼」から「白髪仏」に大変身したのか?
関連タグ