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- 2011/08/01 掲載
クレディセゾン 社長 林野宏 氏:強者に勝つマーケティング、模倣されないアイデアの源泉
市場の主導権は誰が持っているのか
顧客の創造はマーケティング・イノベーションによってなされる
緑屋は、丸井と並び、割賦販売の小売店として名を馳せた企業。1982年からクレディセゾンとしてクレジットカード事業に専念することになったが、その後もJCBや外資系大手の信販企業との激しい競争を繰り広げてきた。その中で、カードの即日発効、サインレス、無期限ポイントなど独特のマーケティング戦略を展開、業界の注目を集めてきた。
そんな林野氏が講演の冒頭で取り上げたのが「マーケティング・イノベーションの考え方」。まず、企業の本質は「競争」にあると指摘。競争相手と正しい手段で顧客を奪い合うことの重要性を語った。一般に企業の本質は利益追求にあるといわれるがそうではない。利益が目的になると、市場原理に反するグループ内取引や談合、不正、汚職などの正しくない手段を選択することになるからだという。
企業の目的は「顧客の創造」であり、これはマーケティングとイノベーションによってのみ可能なもので、利益はその結果に過ぎない。マーケティングの対象とすべきは、「社会的背景を含む市場変化」、「顧客となる市民の価値観と行動」、「業界や他社の動向」であると基本を説いた。
「資本主義の本質は『創造的破壊』にある。現状を否定して改革を続けなければならない」(林野氏)
競合にすぐ模倣されるものは「アイデア」とはいわない
では、マーケティング・イノベーションはどのようにして起こせばよいのだろうか。林野氏は「まず業界や他社がやっていないことをせよ」という。既存の手法でうまくいくのは、潤沢な資金や人手ある場合の話。シェアトップでなければ、他と同じことをしていても競争力が弱まるだけだからだ。ただ、BRICsのような新興市場では、過去の手法やモデルが通用する可能性もある。次にお金をかけないことも重要だという。過去に独占禁止法ぎりぎりまでのシェアを確保していたキリンビールを追い落としたのは、業界最下位のアサヒビールだ。この場合、人もお金もない企業だからこそできる戦略が有効だったのだという。
ただし、ブランドイメージもないがしろにしてはならないという。面白いアイデア、他社がやらないといっても、ブランドイメージまで毀損するような戦略では長期的に生き残れないからだ。
「割引やポイントに依存する安易なサービスは誰でもすぐに模倣することができるので『アイデア』とはいえない」(林野氏)
それ以外には、市場の変化が早い現代では「時間のかかる戦略はとらない」、「Webやメディアの構造変化を活用して目立つことをする」、といった具体的な方法論についても言及した。
【次ページ】市場の主導権は誰が持つのか…?
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