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ビッグデータ時代を迎え、企業経営にも新たな改革とチャレンジが求められている。SNSやクラウドから得られるビッグデータ、モバイル端末などのICTをどう経営に生かすべきだろうか? 先ごろ開催された世界ICTサミットに招聘された楽天の三木谷氏と、日本マイクロソフトの樋口氏は、ICTのトップ企業の立場から、今後の事業戦略や経営者に求められるリーダーシップなどについて議論を交わした。
ICTの進化でビッグデータを安価に解析できる時代に
モデレータを務めた日本経済新聞社の関口 和一氏は、まず、ビッグデータという視点から数年間の情報通信の変化について登壇者に意見を訊いた。
楽天の代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史氏は「凄まじい量のデータを分析するには、従来までは専門性が求められ、コストや時間がかかっていた。しかし近年、非常に安く分析できるようになり、データもジオ・ロケーションといった情報を含めてリッチになった」と現状を分析する。
「大量データをストレージに入れ、必要なデータを瞬時に引っ張り出せることが大きな変化だ。さらにスマートフォンの出現で、人の行動を24時間トラッキングできるようになった。米国では、スマートメーター・サービスが登場し、家庭内の温度コントロールも可能になった。いまやIoT時代に入り、ユーザーにとって大変便利な時代を迎えている」(三木谷氏)
日本マイクロソフトの代表執行役 社長 樋口 泰行氏は、「コンピューティング・パワーが向上し、コストが劇的に下がった」ことを指摘。
「データもIoTや、つぶやきなどエモーションの部分が膨大に存在し、データに基づく科学的な経営や世の中に役立つアクティビティが可能になってきた。特に最近では、リアルタイム翻訳や通訳など、認識系の技術が急激に発展してきた。これは従来のアルゴリズムベースの技術から、データマッチングの技術へシフトしたことが大きな要因だと思う」(樋口氏)
デバイスの発達によりデータの意味が変わる
最近では情報通信技術だけでなく、端末のほうも大きな変化を遂げている。家電ではテレビがパーソナライズ化される動きもある。楽天は「kobo」のような電子書籍専用端末に力を入れている。
「米国では書籍の50%が電子化されている。次にセルフ・パブリッシングの世界となり、個人の書き手がネットに記事を出し、それが紙になるという逆の流れになってきた。単純に紙を電子化するのではなく、本の内容とSNSの情報が結び付いたり、デバイスの発達によって、よりパーソナル化された関係になるだろう」(三木谷氏)
マイクロソフトも「Surface」といった新しいデバイスを市場に投入している。同社の考え方は専用端末ではなく、PCをベースにタブレット端末を展開していくこと。
「Surface Pro 3は、従来のWindowsアプリや周辺機器も含めて互換性を保ちながら、薄い12インチのタブレットでフルPC機能を発揮できるデバイスだ。ペーパーレスを意識し、ペンのボタンを押すとタブレットも起動する」(樋口氏)
同社は、Windowsの一部無償化や、OfficeのiPadへの提供、クラウド化、ハードウェア開発など、最近かなり経営方針が変化しており、生き残りをかけたドラスチックな戦いに打って出ている。そういう意味で、ソフトウェアとハードウェアを同時にまとめ上げていくことも必要になっているという。
コンテンツ流通もコミュニケーション手段も急激にシフトしたが……
次に関口氏は、角川書店とドワンゴが経営統合するという話題を挙げ、「コンテンツ流通の戦略に関して、楽天との共通点は何か?」と話を向けた。この点について三木谷氏は「楽天の場合は、楽天市場にしてもKoboにしてもプラットフォーマーという位置づけだ。今年に入って買収したViberも同様だ。こういったものを利用して、コンテンツの流通を行おうという戦略だ」と応じた。Viberに関してはLINEと似ているが、その違いはP2Pによる通話品質や、データ・セキュリティの高さなどに特徴があるという。
一方、マイクロソフトはSkypeを買収したが、そのシナジー効果は出ているのだろうか?
「我々の場合は、B2Bがメイン事業であるため、企業向けのLyncとの連携によってシナジーを追及している。それが企業と個人の接点をさらに広げていくと思う」(樋口氏)
コミュニケーション面では、現在メールが急速に減って、メッセージングに軸足が移りつつある。企業の状況も変わってきているようだ。三木谷氏は「Viberは、固定電話にも無料で通話できる。楽天はViberに切り替えて年間3億円のコストセーブが可能になった。もう通話にお金を支払う時代は終わるだろう。次にボイスとテキストがハイブリッド化され、さらにビデオが乗って、コミュニケーションのあり方が変わる」と指摘する。
マイクロソフト社内でも、Skypeを使い倒しているそうだ。「若い世代はメッセンジャーが中心。コミュニケーションも早くなり、結果的にメールもミーティングも3割ぐらい減った。体感的に機動力が相当アップしているが、何よりプレゼンス情報を起点としたコミュニケーションによって、各社員の行き先表示が全社で共有できたり、相手に早くコンタクトできるようになった」と樋口氏。
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