- 2011/04/20 掲載
関西流ベタベタIT商法の挑戦74~ワラジを作る現場を知って事故を防ぐ
合同会社 関西商魂 代表 中森勇人
西岡会長は重ねて「震災や事故現場では教科書通りの対応は役に立ちません。もちろん基礎は大事ですが、応用力、創造力がなければ解決には結びつきません。電気が通じない、機械が動かない事を前提として何が可能かをパズルのように組み合わせていく知恵が必要なのです。そのためには社員を育てること、単に知識を埋め込む知育だけでなく、人間力のレベルを高めるための徳育が不可欠なのです」と力説する。
ボトムアップが会社を支える
西岡会長が会社を立ち上げたのは40年前のこと。工業高校を卒業後、単身この業界に飛び込んだ。時代は大阪万博に代表される高度経済成長の真っ直中。その追い風に乗り、会社は急成長を遂げた。現在の取引先は電機機器メーカーなど、大手企業が名を連ねる。しかし、人に使われた経験がない西岡会長にとって増え続ける社員とのコミュニケーションは大きな課題となって現れた。当時の事を西岡会長は「組織が大きくなってくると財務の仕事や幹部とのやりとりが増え、お客さんと直接話をする機会が少なくなってきました。お客さんに一番近いのは現場のエンジニアであり、営業です。でも、社長が現場に行くと口を閉ざす。そこで考えたのがノミニケーションなのです」と振り返る。
ノミニケーションとは得意先や発注業者の現場で働く社員と飲んだり食べたりしながら客先のニーズや悩み事、組織の問題点などを聞いて回ること。ここで見聞きした事を会社の経営にフィードバックしていった。
「政治も会社もボトムアップ型の組織でなければなりません。経営者は“駕籠(かご)に乗る人担(かつ)ぐ人そのまた草鞋(わらじ)を作る人”という古い商人のことわざのようにそれぞれの役割を果たす人の存在を忘れてはいけません。また、社員や取引業者さんは会社にとって債権者であること、大切な資産をお借りして会社を運営していることも忘れてはならないのです。『雇ってやっている、買ってやっている』と奢っていては誰もついてきません」と話す西岡会長は定期的に社員や取引業者を集め、一流ホテルを貸し切り“感謝の夕べ“を開催している。
人を育てる「育教(いくきょう)」を広める
西岡会長は会社経営から知り得た人材育成の知恵や人脈を生かすために一般社団法人WEP塾を立ち上げた。WEP塾では講演や親睦会を通して、若手を中心に人間力のレベルアップを図っている。西岡会長は著者としても活躍しており、幅広い分野での講演活動をおこなっている。近著「草食系時代」ではJR福知山線の事故に触れ、「あれは20代の若い一人の運転手が引き起こした事故。現場の第一線の人達を知らずして経営者は務まらないのです」と警鐘を鳴らしている。
「これからも本当の教育のありかた、人を育てるために教える“育教“を重視し、現場で働くたちの人間形成や人柄の育成に努めていきたいと思います」と語る西岡会長の声は活気に溢れていた。
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