- 2007/05/08 掲載
関西流ベタベタIT商法の挑戦17~癒しのテクノロジー・浮遊体アーティストの挑戦(前編)
【売上アップ】合同会社 関西商魂 代表 中森勇人
合同会社 関西商魂 代表 中森勇人 |
今年3月9日、東京ビッグサイトでおこなわれたJAPAN SHOP 2007で、ひときわ目を引く一角があった。そこには、水槽の中にフワフワと浮遊する白い物体が。その物体を凝視してみると、なんとクラゲ。水槽を取り巻く人々は飽きることなく、漂うクラゲを見つめている。
しかし、水中を泳ぐクラゲなら何も珍しくもない。なぜ、何の変哲もないクラゲに人々は興味を示すのだろうか。ふと、上方に目をやると大きな垂れ幕がある。そこには「人造クラゲ」の文字が。水槽の中で泳いでいるのは何処から見ても本物のクラゲだ。これが作り物だというのは、すぐには信じられない。この人造クラゲを作ったのは浮遊体アーティストの奥田英明(えいめい)さん。
奥田さんは最初、コメントをつけずに水槽だけを展示していた。ところが、これだと生きたクラゲと勘違いされることが多かったので「人造クラゲ」としたところ、ようやく作り物だということに気が付いてもらえるようになったのだという。
本物と見間違えるくらいリアルに出来ているクラゲなのだが、制作のきっかけは意外な理由からだった。奥田さんは元エンジニア。大学で工学部を卒業後、関西の大手電機メーカーに就職するというセオリー通りの進路をたどっていた。入社7年目には人工筋肉の研究テーマを企画し、プロジェクトリーダーとして外部からの電気刺激で動く樹脂製筋肉の試作を繰り返していたのだという。ところが、開発開始から3年目にプロジェクトは打ち切られることに。この時、他の仕事に回されるくらいなら、何か自分でやってみようと考えた。それは芸術家になること。
奥田さんは以前から芸術的な表現によって何かをつくりたいという夢も持っていたが、芸術では食べていけないからと父親から反対され、理系の道を選んだのだ。しかし、アートに対する情熱は抑えることができず、仕事の合間を見ては劇の脚本を書き、芝居のための舞台装置を作る日々。週末には「浮遊代理店」と銘打ったユニットの主催者として、芝居に汗を流していたのだという。お客さんの反応は上々で、もっとユニークな世界を作りたいという思いから、舞台美術で実現しようとしていた浮遊感のある未知の生命体と、研究テーマであった人工筋肉のクニャッとした素材をリンクさせた。これが浮遊体アートのはじまりだった。
会社を辞めた奥田さんは早速、自己表現をするための空間を作ることに着手した。半年後、奈良市内に芝居のユニット名と同じ名前「浮遊代理店」という空間を完成させたが、この時はまだ、何を目指していくのかは定かでなかった。あったのは、面白い物に囲まれて、仲間と美味しい酒が飲めればいいという思いだけだったという。
(後編へ続く)
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