- 2011/09/28 掲載
関西流ベタベタIT商法の挑戦79~「虎の“意”を借る」成功ビジネス
合同会社 関西商魂 代表 中森勇人
ファン垂涎お宝の山
官公庁街の一角、谷町四丁目にある店舗には噂を聞きつけたタイガースファンがスーツやブレザーを買い求めようとひっきりなしに訪れる。店内はトラキチ(熱狂的なタイガースファン)の心をくすぐるオリジナルパーツが所狭しと並び、「他にないワシだけのスーツを頼むわ」や「新作の生地入荷してる?入ったら一番に買うで」などの声が飛び交う。テーラー虎を経営する株式会社ヤングブラッドの中村英二社長は、「外見は普通のスーツやブレザーと変わりませんが、一旦胸元を開いてみせると誰もがワッと驚く虎柄やタテジマが現れるといった、『外はスマート、中はコテコテ』のスタイルが受けています。特に裏地一面に球団歌の六甲おろしがプリントされているタイプは人気がありますね。ネームにお気に入り選手の背番号や『タイガース命』の文字を入れるというオーダーもあります。イチオシは襟の裏に西陣織で球団のマークとTigersの文字が刺繍されているスーツ。見えないところに凝るのがファンの真骨頂なのです」と話す。
顧客には中小企業の経営者も多く、営業ツールとしてスーツを活用している。中村社長によると「大阪はタイガースの街と言っても過言ではありません。だから上着を脱いだときに垣間見える虎の刺繍に突っ込まない人はいません。初めての訪問先でもこのスーツ一着で掴みはOK。商談の中で『どこで買ったの?』という話題に及び、うちに来店するお客さんも多いですね」とのこと。買った客がまた客を呼び込むという好循環が巻き起こっている。
中には大きな商談の時にタイガースジャケットにネクタイ、ベルトに身を固め、気合いを入れる経営者もいて、まさに虎の威を借る営業アイテムといったところだ。
商品はスーツだけに留まらずトレーナーや子供用のTシャツなど幅広く、フードにタイガースのワッペンをあしらった赤ちゃん用のロンパースはベストセラーなのだという。まさに親、子、孫と世代を越えたトラキチ御用達アイテムの様相を呈している。
中村社長はタイガーススーツのルーツについて「最初は選手や球団職員のスーツをヒントに試作したところ、そんなスーツがあれば売ってほしいというファンの声に応え承認を取りました。これが口コミで徐々に広がり、タイガースファンの著名人、特に大阪学院大学教授の国定先生やタレントがテレビやメディアで着用した事や2003年のリーグ優勝で人気に火がつきました。裏地のデザインや刺繍、ネームやボタンはお客さんの意見を聞いて作り上げてきたものです。小さな洋服店かここまで来られたのはファンの方々と、『タイガースの事ならしゃーないなあ(仕方がない)』と無理を聞いてくれるメーカーや問屋仲間がいたからに他なりません」と語る。
インターネットでの販売も開始し、全国のトラキチから注目を浴びるテーラー虎。「これからも虎ファンの意見をお借りしながら、商品開発に臨みます」と中村社長は虎視眈々と未来を見据える。
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