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従来、企業は求職者からの応募を待つだけであった。しかし、より希少価値の高い人材を獲得するためには企業から求職者に積極的なアプローチをする必要がある。それが、「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれる採用手法だ。この記事では従来の専用サービスだけではなく、リクルートやマイナビといった大手転職支援企業も提供するようになったダイレクトリクルーティングについて、各社のサービス一覧、メリットやデメリット、さらにはスカウトメールの例文も含めた具体的な手法まで紹介する。
ダイレクトリクルーティングとは何か?従来の手法と何が違うのか
ダイレクトリクルーティングとは、企業が自社に合う人材を自ら求めアプローチする採用手法のことで、アプローチから内定までのプロセス全般を指す。欧米では、すでに多くの企業が取り入れており、ダイレクトソーシングとも呼ばれる。
従来、企業は求人広告サイトなどを使い、求職者側からの応募を待つという手法が主流であった。しかし、日本国内における人口減少は顕著で、それによる人手不足は否めない。優秀な人材、自社にマッチする人材を求める企業は、「待ち」の姿勢だけではこの人材獲得競争において、よい人材を獲得しづらい状況になったのである。
また、新卒採用後3年以内で退職してしまうケースも多く人材育成が追いつかないこと、採用コスト、人材育成におけるコスト削減等の理由から、新しい「攻め」の採用手法であるダイレクトリクルーティングは普及した。
SNSやメールなどで個別にスカウトメールを送ったり、自社で開催したセミナーや交流会に集まった人材に声をかけたりといった手法のほか、ダイレクトリクルーティングに特化したサービスを利用したり、リクナビやマイナビなど従来の転職サービスの登録者向けに「スカウトサービス」という形で利用する方法など、攻めの手法は拡大しつつある。
経験者や即戦力になる人材を求めるため、通常、ダイレクトリクルーティングは中途採用で用いられることが多い。しかし、徐々に新卒向けのダイレクトリクルーティングを取り入れる企業も見られる。従来の「大量エントリー型」よりも効率的に優秀で自社にマッチする学生と接触でき、採用後の離職率低下にも期待できるためだ。
ダイレクトリクルーティングのメリット
ダイレクトリクルーティングのメリットはいくつか挙げられる。
まず、転職に積極的でない「潜在層」に効果的なことである。転職市場における潜在層は、今すぐに転職する気はないものの、転職情報サイトに登録だけして良い求人があれば転職に踏み切ろうと考えている人材だ。米Linkedinの「2014年タレントトレンドレポート」によれば、その母集団は転職に接触的な顕在層よりの4倍にも及ぶという。
母集団がそれだけ多ければ、必然的に優秀な人材も多く含まれる可能性が高い。その潜在層に企業側から直接コンタクトを取ることで、入社意識を高めやすい。
さらに、採用コスト削減にもダイレクトリクルーティングは効果的である。求人広告や人材紹介サービスの広告掲載費、エージェント紹介料などには少なくない料金が都度発生する。もちろんスカウトサービス型であっても広告掲載費は発生するが、離職率の低い人材や本当に自社にマッチできる人材を獲得できる可能性が高いことから、一人あたりのコストは削減できることが期待される。
加えて、ダイレクトリクルーティングは自社の採用力の向上にもつながる可能性が高い。企業の経営者、採用担当者などが自ら能動的に採用活動に取り組むため、成功・失敗の要因分析が容易になりやすい。
実際にダイレクトリクルーティングサービスを利用したある人事担当者は「転職市場に出てこなかった人材で、かつ自社にマッチした逸材を獲得できた。一度会うまでが大変だったが、それ以降はとんとん拍子に話が決まった」とメリットを語る。
ダイレクトリクルーティングのデメリット
一方で、ダイレクトリクルーティングにおけるデメリットもある。
ダイレクトリクルーティングは、企業自らが働きかける必要があるため、当然、採用業務の負荷は増える。スカウトサービス型において、特に企業が苦心するのが「スカウトメールの文章作成」「対象の見極め」だ。
求人広告や人材紹介サービスでは、時間こそかかるものの、自社の求める人物像を伝えることでこれらの負担は削減できていたが、採用担当者は既存業務をこなしながらこれらの業務に取り組まなければならない。
また、モチベーションの低い転職潜在層に企業独自の色を出したアプローチが可能な反面、こうした見せ方のノウハウを身に付けることは容易ではない。成果を出すのに時間がかかるケースも多いので、採用担当者は中/長期的な効果を視野に入れてPDCAを回していくことが求められる。
サービスを利用した現場の担当者からは、「人事部門では業務がわからず、現場主導で獲得に動いたため、非常に大きな負荷になった。特にメール作成は少しずつこなれてくる一方、もっとも欲しい人材は最初にアプローチしてしまうため、洗練されたメールを送ることができなかった」との感想も聞かれた。
ダイレクトリクルーティングのサービス例
ダイレクトリクルーティングのサービス提供元は増えており、中途採用においては以下のような例が見られる(順不同)。
・リクナビHRTech 転職スカウト(リクルートキャリア)
・リクナビNEXT(リクルートキャリア)
・日経キャリアNET(日経HR)
・エグゼクティブ転職(日本経済新聞社、日経HR)
・マイナビ転職 スカウトサービス(マイナビ)
・DODA Recruiters(DODA)
・ビズリーチ(ビズリーチ)
ダイレクトリクルーティングの具体的な手法。どのようにアプローチすればよいのか?
では、ダイレクトリクルーティングを用いて、企業はどのようなアプローチをしていけばよいのだろうか。
まず、企業からアプローチをかける対象の絞り込みについて。自社にマッチする人材のみに声をかけるダイレクトリクルーティングとはいえ、気をつけたいのは条件を増やしすぎないことだ。それは、単に条件を厳しくすることによって全体の母数が低下するのを避けるだけではない。
もともと転職に積極的ではない求職者は、登録しているレジュメの内容が薄いことが多い。こうした潜在層のなかには、書いていないだけで自社の希望とするスキルや経験を有する人材も存在しているだろう。転職潜在層を相手に条件を増やしすぎることは、そういったリスクもはらんでいるのだ。
ただし、ダイレクトリクルーティングのキモである即戦力人材獲得のためには、職種・業種の合致は必須条件であるので、それを外してはならない。
また、スカウトメールの「文面」は求職者が自社に関心を持ってくれるかどうかの鍵となる。大切なのは、「スキル」「経歴」などの条件だけではなく、マインドやキャリアプランなども含めた求職者という「個人」に関心を持っていることを示すことだ
・スカウトメール例文
件名:〇〇職での経験をお持ちのあなたへ。〇〇向け〇〇(事業)に一緒に取り組みませんか?
●●さま
はじめまして、株式会社〇〇〇〇の、〇〇〇〇と申します。
弊社は〇〇というビジョンのもと、〇〇向けに〇〇というサービスを運営しております。
http://……(ホームページのリンクなど)
弊社ではいま、このビジョンを共有し〇〇という目的に一緒に取り組んでいただける〇〇(職種)を募集しています。
●●さんのプロフィールを拝見し、〇〇といった経験がおありなので、弊社でご経験を生かしていただけるのではないかと思いました。
また、やりたいこととして〇〇を挙げていらっしゃいますが、弊社では〇〇や〇〇といった面でその実現をできると考えています。
いますぐの転職はお考えではないかもしれませんが、少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度面談の機会をいただけますと幸いです。
少しでも興味がありましたら、メールまたはお電話にてご返信いただけましたら幸いです。
まず件名では、ターゲットの興味を惹くキャッチコピーを記載することが重要だ。ターゲットに向けたメッセージであることを明示し、「限定募集」「○名の募集」「月収○○万円以上」などの数字を出すことも効果的である。
本文では自社の魅力を語ることも必要であるが、なるべく簡素な説明にし、ターゲットが期待できるような将来像を持たせること、一人ひとりへの特別感が感じられる内容であることが重要だ。
また、利用する人材データベースによっては、ターゲットがどの程度スカウトなどのアプローチを受けているかを見られる場合もある。アプローチ数の少ない人材を狙えば、多くの反応が返ってくることが期待できる。
どんな人材(職種・年収)向けにオファーが届いているのか?
実際のところ、ダイレクトリクルーティングではどのような人材にオファーは届いているのだろうか。リクナビNEXTが発表している2017年12月スカウトレポートを参照する。
年収別に見ると、300万円以下が約215万通で39%と最も多く、全体の7割近くを年収400万円以下へのスカウトが占める。
さらに職種別で見ると営業が最多の約145万通で全体の26%。次にサービス・販売・外食が約84万通、事務・管理が約75万通と続く。またエンジニアやITエンジニアなどの技術職もスカウトメールを比較的受けていることがわかる
なお、転職サービスにより得意とする属性は異なり、またその数もサービスや時期によって大きく異なるので参考までにとどめておきたい。
企業に求められる、採用力の強化
企業そして求職者にとって、ダイレクトリクルーティングの需要は高まっている。ただし、導入した企業には採用ノウハウの構築と運営者への負荷という新たな課題も伴う。
そのため一概に導入すべきとはいえないが、採用コストの削減、潜在層へのリーチに加え、この課題を克服できれば全社的な採用力の強化につなげられるだろう。
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