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- 2025/01/06 掲載
CLO(物流統括管理者)とはどんな役職? 荷主のほぼ5割が対象、2026年に選任義務化
連載:「日本の物流現場から」
ポイント1:CLOとは「物流統括管理者」
新物効法では、規定以上の貨物輸送を行っている荷主と連鎖化事業者に対し、物流統括管理者の選任を義務付けている(以下の補足を参照)。- 「規定以上」とは「年間9万トン」となる予定。平日のみ輸送を行っている場合、大型トラック換算で、日々約36台以上のトラック輸送を行っている事業者が対象となる。
- 「規定以上」の貨物輸送を行っている荷主と連鎖化事業者を、それぞれ特定荷主、特定連鎖化事業者と呼称し、物流統括管理者の選任を義務付ける。
- 連鎖化事業者とは、コンビニエンスストアチェーンなど、フランチャイズ事業を営む本部を指す。
2024年5月に新物効法が公布され、物流統括管理者の選任義務化が判明してから、「物流統括管理者とは、イコールCLOなのか?」という議論が生じた。
筆者自身も、7月に上梓した「物流関連2法とは何か、改正内容を『6つのポイント』でわかりやすく解説」において、「CLOを、今回(物流関連2法)の改正に登場する『物流統括管理者』と訳し、混同しているケースが頻発しているが、これは別物だろう」と書いた。
国土交通省・経済産業省・農林水産省が、2024年9月26日に「合同会議取りまとめ案」(以下、取りまとめ案)を発表した。これは、5月に公布された物効法について、後々省令等で規定されることになる具体的な取り決め内容を議論したものである。
この取りまとめ案では、「新物効法第47条及び第66条では、特定事業者のうち特定荷主及び特定連鎖化事業者に物流統括管理者(CLO)の選任を義務付けている」とはっきりと記載されている。
つまり政府としては、「物流統括管理者=CLO」は既定路線ということだろう。
「CLO=物流統括管理者か?」の議論を生んだ理由
「物流統括管理者とは、すなわちCLOなのか?」という議論を生んでしまった原因は、これまでの物流革新政策における表記のゆれ、あるいはあいまいな表現に原因がある。- 2023年6月2日発表「物流革新に向けた政策パッケージ」(以下、政策パッケージ)では、「役員クラスに物流管理の責任者を配置することを義務づける」として、CLO選任義務化を示唆した。
- 2023年6月2日(政策パッケージと同日)発表「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)では、「物流業務の実施を統括管理する者(役員等)を専任」し、その役割を果たす者として、「物流管理統括者」と呼んだ。
つまり、「CLO=物流管理統括者」と読み取れるのだが、物効法で選任が義務付けられるのは、「物流統括管理者」であり、「管理」と「統括」の順番が入れ替わっている。
「わざわざ呼称を変えたのだから、『物流管理統括者(CLO)』と『物流統括管理者』は違うのだろう」という解釈が生じたのだ。
加えて新物効法における物流統括管理者は、「物流統括管理者は、特定荷主(あるいは「特定連鎖化事業者」)が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならない」とあるが、「役員を選任すべし」とまでは書かれていない。
この辺りの混乱を終息させるためだろうか、取りまとめ案では、かなり具体的にCLOの役割が定められている。
ポイント2:CLOの役割
「物流の2024年問題」を筆頭とする物流クライシスの機運が高まるにつれ、CLOの必要性が訴えられるようになり始めた。CLOとは、企業内において、物流の見地から企業の営利活動を最適化する責任を負う役員相当である。たとえばメーカーにおいて、どんなに素晴らしい商品を開発したとしても、それが運びにくい荷姿のものであったり、あるいは物流網が整備されていなかったりすると、十分な売上を得ることができない。
CLOは、物流のエキスパートとしての立場から、企業内の企画、製造、品質、販売(営業)といった各部門に対し、横串で必要な助言、提案、指導などを行う(図1)。
これにより、企業活動における売上・利益の拡大に加え、CSR(企業の社会的責任)、そしてCO2排出量削減などの環境問題にも貢献することが求められる。
日本ではCLOを設置している企業が少なく、またCLOに対する認知度も低かった。このことが、物流クライシスの原因の1つだと指摘され始めたこともあり、近年はCLOへの注目が高まりつつあった。
政府としては、CLO選任を義務化することによって、物流クライシス対策を促進しようともくろんでいるのだろう。
新物効法で課される「CLOの3つの職務」
新物効法において、CLOに課される職務も挙げておこう。- トラックドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備
- 所属企業における、1.の取組計画を記した「中長期的な計画」の作成と、その進捗状況等の定期報告
- 1.を実現するための、その他全般的な業務
物効法におけるCLOは、物効法で義務付けられる各種報告の連絡・調整役かつ責任者としての役割が目に付く。
そのため、「行政処分を受けたら詰め腹を切らされる可能性もあるCLOというババを、誰が引かされるのだろうか…」と懸念する声も聞こえ始めている。 【次ページ】ポイント3:「劣化版CLO」大量発生の可能性
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