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  • 2024/12/09 掲載

ZEV規制とは何か、トランプ再選で激変しそうな「脱炭素に向けた自動車規制」の中身

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ZEV(ゼブ:Zero Emission Vehicle)規制とは、1990年代初頭に米国のカリフォルニア州で初めて導入された、ゼロ・エミッション車両(ZEV)の普及を目指す規制だ。トヨタやホンダといった日本の自動車も規制対象となっているが、近年は米国だけでなく世界各地で普及が進められている。日本ではハイブリッド(HV)車を中心に導入が進み、EVやプラグインハイブリッド自動車(PHEV)などは国や自治体からの補助金交付もある。一方、米大統領にトランプ氏が再選したことでZEV規制への影響が懸念されている。本記事では、ZEV規制やZEVの基礎知識をはじめ、日本や世界の現状、課題についてわかりやすく解説する。
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ZEV規制とは何か
(Photo/Shutterstock.com)

ZEV規制とは何か

 ZEV規制とは、排出ガスを一切出さない(ゼロ・エミッション)車両の普及を目指す規制のことである。ZEV規制が生まれた背景、具体的な内容について解説する。

ZEV規制が生まれた背景

 ZEV規制は、米カルフォルニア州で1990年に導入、1998年に施行された制度である。米国最大の自動車市場と言われ大気汚染の実害が深刻だったカリフォルニア州が、大気汚染の防止を目的に導入したものだ。

 ZEV規制では、州内で自動車を販売するメーカーに、販売台数の一定比率以上をEVや燃料電池車など温室効果ガスを排出しないゼロ・エミッション車(ZEV)にすることを義務付けている。カリフォルニア州はZEV規制を段階的に厳しい販売比率や条件へと改定しており、2018年からZEV比率は16%、規制対象の企業は以下へと拡大されている(順不同)。

  • トヨタ(日本)
  • ホンダ(日本)
  • 日産(日本)
  • マツダ(日本)
  • フォード(米国)
  • GM(米国)
  • 現代(韓国)
  • 起亜(韓国)
  • クライスラー(ドイツ)
  • BMW(ドイツ)
  • ダイムラー(ドイツ)
  • フォルクスワーゲン(ドイツ)

 また2022年には、「2035年までに新車販売すべてをZEVにする」と発表された。

ZEV規制のクレジット

 ZEV規制には、ZEVの販売台数が一定比率を上回った場合に「クレジット(CO2削減量/実績係数)」を得られる制度が設けられている。ZEV規制におけるクレジットとはZEVを販売したときに得られるポイントのことで、以下の計算式で求められる。
ZEVクレジット=車の販売台数×ZEVの係数(クレジット単価)
 ZEVの性能が高いほど係数は大きくなり、クレジット単価は州によって異なる。カリフォルニア州の場合、EV1台あたり1クレジット、燃料電池車1台あたり2クレジットが付与される。

 ZEVを多く販売するメーカーにとって、クレジットは収入源の1つとなっている。一方、ZEV規制の基準を達成できない自動車メーカーは罰金を支払うか、クレジットを多く保有する他メーカーからクレジットを購入しなければならない。

 たとえばテスラは圧倒的に多くのクレジットを有しているが、それらをトヨタなどに販売して収益化している。

そもそもZEVとは?

 「そもそもZEVとは何かよく分からない」というビジネスパーソンもいることだろう。

 ZEV(Zero Emission Vehicle:ゼロ・エミッション・ヴィークル)とは、排出ガスを一切出さない乗り物のことだ。ZEVに該当する乗り物は、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)をはじめ、窒素酸化物(NOx)や炭化水素(HC)といった排出ガスをまったく出さないことが特徴に挙げられる。

 大気汚染や地球温暖化の防止を期待できるほか、電気や水素などの再生可能エネルギーを利用するため化石燃料への依存を減らすことも可能だ。

 ZEVと混同されやすい言葉に「エコカー」がある。エコカーも環境に配慮した自動車を意味するものの、温室効果ガスの排出は必ずしもゼロではない点がZEVとは異なる。

ZEVの主な種類

 排出ガスを一切出さないZEVとは、具体的にどのような車両を指すのだろうか。一般的にZEVと言えば、EVまたは燃料電池車(FCV・FCEV)が挙げられる。また、プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)もZEVに含まれるケースもある。ここでは、ZEVに含まれる車両について解説する。

■電気自動車(EV)
 ZEVに含まれる車両の1つが、EVだ。

 EVとは、ガソリンではなく電気で動く自動車のことである。バッテリー(蓄電池)に蓄えられた電気でモーターを動かしタイヤを駆動させるため、走行時にCO2が発生しない。バッテリーのエネルギーだけで走行することから、BEV(Battery EV)とも呼ばれる。

 日本で購入可能なEVの車種は、2020年から2022年までの3年間で約30車種も増加した。それ以前が10車種程度だったことを考慮すると、日本でもEVの普及が加速していることが伺える。

■燃料電池車(FCV・FCEV)
 燃料電池車(FCV・FCEV)も、ZEVに含まれる。

 FCV・FCEVとは、水素と酸素の化学反応で起きる電気を動力源に走行する自動車のことだ。排出されるのは有害物質を含まない水のみで、走行時にCO2をはじめとする排出ガスを一切発生させない。

 「電気でモーターを回し走行する」という点ではEVの一種と言えるものの、FCVはEVのようにバッテリーを必要としない。またEVは外部充電が必要である一方、FCVは発電しながらモーターを回して走行する点に違いがある。

 水素はエネルギー密度が高く貯蔵性が高いため、長距離走行が可能であることがFCV・FCEVの特長だ。今後は、多くのエネルギーを必要とする大型車や貨物車への適用が期待されている。

■プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)
 プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)とは、外部からの充電が可能なハイブリッド車のことだ。電気で駆動するモーターと、ガソリンを燃料とするエンジンの両方を使って走行する。

 PHV・PHEVはガソリンを使ってエンジンを駆動させるため、一定量のCO2や大気汚染物質を排出する。そのため、厳密にはZEVには分類されない。一部の国や地域ではZEVに含まれるものの、カリフォルニア州ではZEVに含まれない。

 燃費性能が高く、ある程度環境に配慮された自動車であるPHV・PHEVは、日本国内での導入が進んでいる。

ZEV規制における米国・EU・中国の動向

 現在、世界ではZEV規制の流れが進んでいる。ここでは、各国におけるZEV規制の動きを紹介する。

■米国
 米国では、カリフォルニア州をはじめ、ニューヨーク州・マサチューセッツ州・オレゴン州などがZEV規制を導入している。

 米国の中でもZEVの普及に力を入れているカリフォルニア州では、2023年第2四半期(4~6月)における州内乗用車販売台数に占めるZEVの割合が25.4%に上った。当期までの州内のZEV累計販売台数は、約162万台にも及ぶ。

 2022年4月に新たなZEV規制案が発表され、「新車販売に占めるZEVの割合」が2026年式モデルで35%、2030年式では68%と、段階的に引き上げられた。そして2035年までには、すべての新車販売をZEVにすることを目標に掲げている。

 一方、米大統領選でトランプ氏が再選を果たし、2025年1月からトランプ政権が始まることには留意したい。CO2規制を緩和したり後ろ倒ししたりする可能性が指摘されており、ZEV規制についても影響があることが考えられる。

■EU
 EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は2022年10月、乗用車・小型商用車(バン)におけるCO2排出基準に関する規則の改正案について、暫定合意に達した。

 この暫定合意により、EUでは2035年までに「すべての新車をゼロ・エミッション化(2035年以降はエンジン搭載車の生産を実質禁止)」することを目指す方針が決まった。ただしEU理事会の提案により、2026年に欧州委が進ちょく評価を行い、PHV(プラグインハイブリッド)技術などの開発状況を踏まえて規制を見直すことも決定している。

■中国
 2021年に世界で販売されたZEVの大半を中国産の自動車が占めるなど、現在の中国は世界最大のEV大国と言える。

 中国では、PHEVやFCEVを含む電動車両のことをNEV(New Energy Vehicle:新エネルギー車)と呼ぶ。2019年から自動車メーカーに販売台数の一定割合をNEVにすることを義務付ける「NEV規制」を実施し、自動車先進国としての競争力を高めようとしている。

 中国汽車工業協会(CAAM)によると、2023年11月の新エネルギー車(NEV)の生産は前年同月比の39.2%増の107.4万台に上った。うちEVの生産は22.7%増の72.7万台、PHVに至っては93.7%増の34.7万台である。

 中国政府は2035年をメドに、新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討することを発表している。 【次ページ】日本におけるZEV規制の現在地
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