- 会員限定
- 2023/12/28 掲載
史上初「EV販売100万台」でも在庫だらけの謎、「ハイブリッド主役」はいつまで続く?
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
在庫だらけの「EV」、売れまくりの「ハイブリッド」
過去数年で米国のEV販売は倍々ゲームで増加してきた(冒頭の図1)。特にパンデミック中の2021年には年間販売台数が32万台(2020年)から66万台へと倍増し、2022年にはそこから98万台にまで伸びるなど、絶好調さを続けてきた。ところが、流行に敏感で情報収集を積極的に行うアーリーアダプター(初期導入層、市場全体の13.5%ほどに相当)による購買需要が一巡した後、EV新車在庫が積み上がり始めた。ピーク時の2023年7月初旬には平均在庫日数が、適正とされる70日分をはるかに上回る111日分を記録したと、米自動車業界分析企業のコックス・オートモーティブが発表。10月初旬には97日分にまで落ち着いたものの、12月には再び114日分まで増加するなど非常に高いレベルであることに変わりはない
トヨタ系ディーラーの「グリーンズボロ・トヨタ」でプリンシパルを務めるメアリー・ライス氏は11月末、米自動車業界誌オートモーティブ・ニュースに対し、「南部5州に展開する我々の販売店では、ハイブリッド車のプリウスが入荷から1週間もしないうちに売れてしまうのに、(同じくトヨタが製造するEVの)bZ4Xは最大266日以上も動いていない」と説明。EVが不良在庫化する一方で、価格的にもお手頃で環境にも優しいハイブリッド車がEVの代わりに飛ぶように売れているようだ。
米調査企業グローバルデータは2023年のハイブリッド車の販売台数が引き続きEVを上回ると予想している。そうした中でも、メーカーがEVをどんどん製造して販売店に送り込み、その多くが在庫として積み上がるため、販売店舗の経営が圧迫され始めている。
ドイツの調査企業Statistaの予測によれば、2023年以降の米EV新車販売台数は2024年に微増傾向の128万台、2025年に150万台、その後いくぶん加速して2028年に246万台となる(冒頭の図1)。
だがそれでも、米国における年間新車販売台数およそ1600万台の15%程度にしかならない。このペースでは奇跡でも起こらない限り、2030年までに新車販売の50%をEVにするバイデン政権の目標が「捕らぬ狸の皮算用」となるのは不可避である。
“死の谷”でも“明るい兆し”は莫大な補助金
このように、米EV販売は突然に「死の谷」とも形容される夜を迎えてしまったのだが、明るい兆候もある。まず、EV・バッテリーの生産および販売や、充電スタンドの整備、電力網(グリッド)の建設、資源の開発などに向けて用意された潤沢な予算が、2022年成立のインフレ抑止法(IRA)により、10年先の2032年まで確保されている。
この長期的な政府による後押しが、すでに補助金を削り始めた欧州や中国との大きな違いだ。米EVメーカーが安心して投資できる環境を、政府が作り出していることは重要な点であろう。事実、補助金が削減され始めた中国や欧州では、EV販売が減速気味だが、米国は上昇基調を続けている(図2)。
とは言え、販売の不振でEV普及のスピードが5年単位で遅れることは確実だ。そうした普及が阻害される根底には3つの問題点が挙げられる。では、これらの問題が解消され、EV販売が本格的に上向くのはいつごろになりそうなのか。
関連コンテンツ
今すぐビジネス+IT会員にご登録ください。
すべて無料!今日から使える、仕事に役立つ情報満載!
-
ここでしか見られない
2万本超のオリジナル記事・動画・資料が見放題!
-
完全無料
登録料・月額料なし、完全無料で使い放題!
-
トレンドを聞いて学ぶ
年間1000本超の厳選セミナーに参加し放題!
-
興味関心のみ厳選
トピック(タグ)をフォローして自動収集!
投稿したコメントを
削除しますか?
あなたの投稿コメント編集
通報
報告が完了しました
必要な会員情報が不足しています。
必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。
-
記事閲覧数の制限なし
-
[お気に入り]ボタンでの記事取り置き
-
タグフォロー
-
おすすめコンテンツの表示
詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!
「」さんのブロックを解除しますか?
ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。
ブロック
さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。
さんをブロックしますか?
ブロック
ブロックが完了しました
ブロック解除
ブロック解除が完了しました