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- 2024/12/10 掲載
民事再生法とは何かをわかりやすく解説、破産騒動の「船井電機」も適用めざす再建法
民事再生法とは何か
一般的に、破産や倒産というと会社の財産をすべて清算し、債務を消滅させる倒産手続きがイメージされる。しかし、倒産手続きには「清算型」と「再建型」の2種類がある。民事再生法は「再建型」に該当し、あくまでも会社の存続を図るための法律であることがポイントだ。
民事再生において、債務者は再生計画に基づき、事業を継続しながら債務の返済を進める。再建が手遅れになる前に申し立てを行うことも可能であり、債権者の少ない中小企業が利用しやすい制度であることも特徴と言える。
民事再生法の3つの特徴
早速、民事再生法の主な特徴を確認していきたい。■原則として経営権は継続する
民事再生においては、原則として経営陣がそのまま経営権を維持できる。再生計画を実行し事業が軌道にのれば、企業をそのまま継続することが可能だ。
■手続きが簡易的
利害関係者が少ないため、スピードを要する場合に適していることも、民事再生の特徴だ。申し立てを行ってから再生計画が認可されるまでは6カ月程度と言われている。
■対象が株式会社に限定されない
対象が株式会社に限定されないことも、民事再生の特徴の1つである。中小企業や個人、学校法人や宗教法人、医療法人も対象に含まれる。
民事再生法と会社更生法・破産・特別清算・私的整理の違い
ここからは、民事再生法と同様に倒産手続きの1種である「会社更生法」「破産・特別清算」「私的整理」との違いを確認したい。民事再生法とその他の法律を分類
裁判所を利用する | 事業を継続させる「再建型」 |
|
事業を終了させる「清算型」 |
|
|
裁判所を利用しない | 私的整理 |
■会社更生法との違い
会社更生法と民事再生法は、ともに「再建型」の倒産手続きだが、主にその対象が異なる。民事再生法は、個人から大企業まで幅広く利用される。それに対し、会社更生法は株式会社のみが対象だ。会社更生法は大企業が利用することを想定しており、効力や関係者に与える影響が大きい。そのため、中小企業が会社の再建を目指す場合には、民事再生が選ばれやすい。
また、手続きを誰が主導で行うかという点についても違いがある。現経営陣が手続きを進める民事再生と異なり、会社更生は裁判所が選任する更生管財人の主導で進められる点が特徴だ。
■破産・特別清算との違い
民事再生が「再建型」の倒産手続きである一方、破産や特別精算は「清算型」の手続きである点が両者の主な違いと言える。
破産や特別清算は原則として、債務者が事業を停止し、破産管財人の下で保有する資産を解体・清算する「清算型」の手続きだ。それに対して民事再生法は、事業を維持・継続しながら、事業の再生を図る。
■私的整理との違い
民事再生と私的整理の違いは、裁判所の関与の有無にある。民事再生は裁判所を利用する法的整理に該当するが、私的整理には裁判所が関与しない。
私的整理は会社の再建を図る方法で、債権者と直接交渉を行い、債権額や支払期日を調整する。法的整理に比べて柔軟な解決を図れる点がメリットだが、債権者と交渉できる法的な強制力を持たない。
民事再生法の4つのメリット
民事再生法の適用申請を行うメリットは、以下の通りである。■経営権を維持できる
現経営陣が退陣を迫られない民事再生では、経営権を維持できる。ただし、株主や債権者などの理解を得られないと、民事再生案が求めることができない可能性がある。そのため、事前に利害関係者への説明を行い、納得してもらえるような再生計画案を作成しなければならない。
■社員の雇用は維持される
企業の存続を前提とする手続きであるため、社員の雇用が維持される点も、民事再生の利点といえる。特に社員の技術やスキルが重視される経営モデルの場合、計画通りの再建を果たすためにも、社員に対して退職しないようにお願いをしなければならない可能性がある。
■債務が免除される
再生計画が認められれば、大幅な債務免除を受けられる点も利点だ。さらに、弁済期間も延長が認められ、再生計画案における弁済期間は最長で10年とされる。
債権者は金融機関であることが多く、金融機関に対して説得力のある再生計画を作成できれば、再建の道筋が開けるだろう。
■再生に要する期間が比較的短い
民事再生のメリットとして、再生に要する期間が比較的短い点も挙げられる。たとえば、会社更生の手続きについては、裁判所から再生計画の認可を得るのに年単位の期間を要することが多い。しかし、民事再生に要する期間は半年程度で済む。
民事再生法の4つのデメリット
メリットの多い民事再生法だが、デメリットも存在する。民事再生法の適用申請で懸念されるデメリットを解説する。■会社の社会的信用・ブランドイメージが低下する
民事再生は会社を存続させるための手続きとはいえ、ニュースなどですぐに広まり、ネガティブなイメージがつくことは避けられない。
また、民事再生は経営陣が経営を継続できることがメリットの1つだが、経営を悪化させた当事者が企業に残ることに対する否定的な見方も一定数存在する。そのため、マイナスのイメージを与えてしまう。
■再生計画が認められないと破産宣告を受けることがある
民事再生では、再建計画が認められないと、裁判所が職権で破産宣告を行うことがある点に注意しなければならない。結果的に、破産手続きに移行することもあり得る。いかに現実的で実行可能な再生計画を作成できるかどうかが、成功の鍵となる。
■抵当権などの担保権が残る
再生計画が認められれば債務は大幅に圧縮されるが、債務に付随する担保権がなくなるわけではない。残った担保権については権利行使を行える。そのため、金融機関に提供している抵当権などの担保権が実行されれば、会社や代表者の自宅などを失うことにもなりかねない。
再生計画案が認められたとしても、計画に基づいて実行できなければ意味がないことを知っておく必要があるだろう。
■適用を受けた企業の生存率は3割未満と低い
民事再生法のデメリットとして、適用を受けた企業の生存率が26.7%と3割に届かない点も挙げられる。認可決定を受けても実行できずに破産手続きに移行するケースや、スポンサー企業への事業譲渡、他社との合併、解散・廃業などにより、適用企業が消滅するケースも少なくない。
また、手続き保障の観点から倒産の事実を広く知られることになるため、取引の打ち切りや与信限度額の縮小、採用活動への影響などが懸念される。これらの要因も、生存率を低下させていると考えられる。
民事再生法適用の申請条件
民事再生法は、以下のいずれかの条件を満たしている場合に申請が可能となる。- 債務者に、破産手続き開始の原因となる事実(=支払い能力が継続的に欠けている状態)の生ずる恐れがあるとき
- 債務者が弁済期にある債務を弁済する能力はあるが、事業の継続に著しい支障を来すとき
つまり、支払い能力がない状態や手形の不渡りといった破産原因がなくても申し立てを行うことができる。また、破産する恐れがある場合は、実際に破産に至っていなくても再生を目指せる。
たとえば債務の返済のために、事業で使用している設備や不動産などを処分すれば事業の継続は困難になる。このように返済自体はできるものの、それによって事業継続が困難になるケースでも、民事再生の申し立てが可能だ。
ただし、裁判所に支払う費用である予納金の支払いがないときや、「すでに進行している破産手続きや特別清算による方法のほうが債権者にとって適切」と裁判所で判断されたときは、申し立てが棄却される。
民事再生法に基づく3種類の再建手続き
ここからは、民事再生法に基づく再建手続きの手法を紹介しよう。再建手続きの手法は、以下のように3種類存在する。 【次ページ】3種類の再建手続きやスカイマーク事例など解説関連コンテンツ
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