• 2025/01/22 掲載

USスチール買収阻止「政治的な」思惑とは、成否のカギは日鉄・橋本CEOの「ある行動」

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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バイデン前大統領が1月3日、日本製鉄によるUSスチールの合併買収計画に対して禁止命令を出した。この命令の表向きの理由は国家安全保障上の懸念とされているが、実はそのほかにもバイデン前政権による思惑があるようだ。一方、日本製鉄サイドを見ても、今後、買収を成功させるには橋本英二会長兼CEOに足りないことがあると指摘されている。これらをひも解き、日本製鉄によるUSスチール買収の行方を米国視点で解説する。
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日本製鉄の買収成功に向け、橋本CEOに求められる行動とは
(出典元:T. Schneider / Shutterstock.com、T. Schneider / Shutterstock.com、Andrew Leyden / Shutterstock.com)

振り返り:USスチール買収提案から禁止命令まで

 日本製鉄によるM&Aが実現すれば、粗鋼生産量で世界第3位の巨大日米連合が誕生する予定だった。ライバルの米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスがUSスチールに70億ドル(約1.1兆円)規模の買収額を提示して断られたのに対し、日本製鉄は149億ドル(約2.3兆円)超えを提示する太っ腹だ。

 さらにUSスチールの従業員に「買収ボーナス」として1人当たり5,000ドル(約79万円)を支払うとまで表明していた。追加投資を表明した分も含めると、買収総額は170億ドル(約2.7兆円)近くに達する。

 グローバルな市場で競争力を失い、ジリ貧となっていたUSスチールにとり、日本製鉄の持ちかけた話は、救済をもたらす「渡りに船」。win-winとなるはずであった。

 ところが、買収話がまとまったのは米大統領選挙が始動する直前の2023年12月、タイミングが悪すぎた。2024年2月には、米国第一主義を唱える共和党のトランプ新大統領が「絶対に」と無条件の反対を表明。4月には民主党のバイデン前大統領が「阻止することを保証する」という強い言葉を用いたほか、バイデン氏の後継として7月に大統領候補となったハリス前副大統領も反対を明言した。

 こうして選挙後の2025年1月、バイデン前大統領は政権移行を前に、選挙公約を守る形で買収禁止命令を出した。バイデン前大統領の命令は、日本製鉄による買収が「米国の国家安全保障と重要なサプライチェーンにリスクをもたらす」という「信頼に足る証拠」があるとするが、具体的な根拠は示していない。

 これに対し、日本では世論の反発が高まった。バイデン前政権は禁止命令の理由についてより合理的な説明をする必要に迫られたため、サリバン大統領補佐官は日本のメディア代表向けに会見を行い、「国家安全保障の中軸である鉄鋼の生産能力を外国企業に依存することはリスクだ」「主要鉄鋼企業の所有権を失うことは、米国にとっての長期的な供給と生産の保証の問題だ」と説明した。

 そして、日本側の反発に配慮する形で、「完全かつ永久に放棄する」期限を2月2日から6月18日まで延長。トランプ新政権がこの案件を再審査できる余地を残したのだった。一方で、日本の企業による米国の象徴的な鉄鋼大手買収に、一貫して強い反対を表明してきたトランプ新大統領が翻意するかは予断を許さない。

 こうした中、USスチールに対する買収再提案を計画するクリフスのロレンソ・ゴンカルベスCEOが1月13日に会見で、「日本は邪悪だ。日本は注意しろ」「お前たちは身の程知らずだ。(米国に完敗した)1945年以来、何も学んでいない」などと日本側を挑発する発言をするなど、バイデン前大統領の命令を奇貨に米世論を味方につけようと動いている。

 では、バイデン前大統領が第2次トランプ政権の発足直前に買収禁止命令を発出した理由は何なのか。表向きの安全保障上の理由に加えて、別の見方もあるようだ。

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買収計画に関するアンケート調査結果
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買収計画に関するアンケート調査結果
バイデン氏による禁止命令の思惑とともに、米国世論は日本製鉄によるUSスチール買収提案をどう捉えているのかなどについて解説します
【次ページ】安全保障ではない、買収禁止命令の「政治的」思惑
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