この連載はWindows 10のサービスモデルの解説と企業における展開オプションの紹介からスタートしました。その後、2019年9月に行われたサポートポリシーの重要な変更点については
上記の記事で説明している「半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)」サービスモデルは、2017年4月に行われた大規模な変更を経て、その後、サポート期間など調整されてきたものです。
「Windows Update for Business(WUfB)」を使用する場合は、「半期チャネル(対象指定)」(Semi-Annual Channel (Targeted):SAC-T)とSACの対象化による段階的な展開が可能です。その意味では、SAC-T/SACサービスモデルと言うこともできます。
2015年7月末のWindows 10リリース当初は、「Current Branch(CB)」と「Current Branch for Business(CBB)」でした。当初は、4カ月ごとにCB向けに機能更新プログラムがリリースされ、サポートされるCBリリースは1つのみ、企業向けのCBBはCB向けリリースから4カ月後に始まり、8カ月サポートされるというものでした。
このCB/CBBサービスモデルのリリースサイクルどおりにリリースされたのはWindows 10 November Update(バージョン1511)の1回です。Windows 10初期リリース(ビルド10240)はCB/CBB同時リリースでした。バージョン1511の次のバージョンがリリースされるまでは9カ月空いてしまいました。そして、SAC-T/SACサービスモデルに移行することが決まりました。
マイクロソフトの当初の目論見とは異なり、多数のWindows 10バージョンが同時にサポートされている状況が長く続いています。今月末リリース予定のWindows 10バージョン1903まで含めると、4年の間に8バージョンがリリースされることになりますが、Enterprise/Educationエディション向けにサポートが続いていた3バージョン目のWindows 10 Anniversary Update(バージョン1607、ビルド14393)が先月ようやくサポート終了(End of Service:EOS)となりました。
を参照)や長期サービスチャネル(Long Term Service Channel:LTSC)」を含めると、完全にEOSのステータスになったビルドは、唯一、Windows 10バージョン1511(ビルド10586)だけです(
表1 Windows 10のライフサイクル
網掛け部は既に終了したもの。最新情報は、https://support.microsoft.com/ja-jp/help/13853/を参照。 |
Windows 10バージョン |
提供開始 |
品質更新プログラムのサービス終了(EOS) |
Home/Pro/Pro for Workstation |
Enterprise/Education |
LTSC (旧称LTSB) |
Windows 10バージョン1903(ビルド18362) |
新SAC:2019/5/末 |
18か月後の第2火曜日 |
18か月後の第2火曜日 |
リリースなし |
Windows 10バージョン1809(ビルド17763) |
SAC-T/LTSC:2018/11/13 SAC:2019/3/28 |
2020/5/12 |
2021/5/11 |
2029/1/9 |
Windows 10バージョン1803(ビルド17134) |
SAC-T:2018/4/30 SAC:2018/7/10 |
2019/11/12 |
2020/11/10 |
リリースなし |
Windows 10バージョン1709(ビルド16299) |
SAC-T:2017/10/17 SAC:2018/1/18 |
2019/4/9 |
2020/4/14 |
リリースなし |
Windows 10バージョン1703(ビルド15063) |
CB:2017/4/11 SAC(CBB):2017/7/11 |
2018/10/9 |
2019/10/8 |
リリースなし |
Windows 10バージョン1607(ビルド14399) |
CB/LTSB:2016/8/2 CBB:2016/11/29 |
2018/4/10 (注1) |
2019/4/9 (注1) |
2026/10/13 |
Windows 10バージョン1511(ビルド10536) |
CB:2015/11/10 CBB:2016/3/8 |
2017/10/10 |
2017/10/10 |
リリースなし |
Windows 10(ビルド10240) |
CB/LTSB:2015/7/29 CBB:2015/7/29 |
2017/5/9 |
2017/5/9 |
2025/10/14 |
注1:Windows 10バージョン1703に対応していないClover Trail搭載機はWindows 8.1のEOSと同じ2023/1/10までサポート(この連載の
第4回を参照)。
多数のバージョンがEOSにならないまま維持されることは、マイクロソフト自身の開発計画に大きな負担となっているでしょう。また、Windows 10対応のアプリケーションやドライバーを開発、提供するソフトウェア/ハードウェアベンダーにも大きな負担となっているはずです。
先月、Windows 10バージョン1709のEnterprise/Education以外のすべてのエディションがEOSになりました。WUfBで延期設定をしている場合、次のバージョンのSAC-T/SACのリリース日が前のバージョンのSAC-T/SACの延期設定の基準日になります。
すなわち、Windows 10バージョン1709でSAC-Tを選択して274日以上延期している場合(2018年7月10日+274日=2019年4月10日)、あるいはSACを選択して345日以上延期している場合(2018年4月30日+345日=2019年4月10日)、EOSが過ぎた状態になっています(
現在のSAC-T/SACサービスモデルがスタートしたのは、2017年7月にWindows 10 Creators Update(バージョン1703、ビルド15063)のSAC向けにリリース宣言されたときからです。Windows 10のUIへの反映は、次のWindows 10 Fall Creators Update(バージョン1709、ビルド16299)からです。
そして、現在のSAC-T/SACサービスモデルがスタートしてから2年を待たずに、今月末にリリース予定のWindows 10 May 2019 Update(バージョン1903、ビルド18362の予定)からは、新しいSACが始まります。