このWindows 10の半期チャネルと同じサービス提供形態が、2017年10月よりサーバOSのWindows Serverでも始まりました。それは、Windows Serverのソフトウェアアシュアランス(SA)契約者が選択可能なWindows ServerのSKU(製品単位)である、Windows Server Semi-Annual Channelです。
Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709、OSビルド16299.x)と同じビルドをベースとした「Windows Server, version 1709」が、Windows Server SACとして初めてのリリースになります。Windows ServerのSACリリースはWindows 10と同様に18カ月の品質更新プログラムのサポートが提供されます。2018年5月7日(米国時間)には、SACリリースの最新バージョン「Windows Server, version 1803」の提供が始まりました。
従来の提供形態もLTSCとして残り、後継はWindows Server 2019
Windows Server SACの提供が始まった一方で、従来の固定ライフサイクルポリシーに基づいた、最低10年(メインストリーム5年+延長サポート5年)の長期サポートが提供されるWindows Serverの扱いは、今後も変わることはありません。こちらはWindows Server SACの開始にあわせて、「Long Term Servicing Channel(LTSC)」と呼ばれるようになりました。つまり、Windows Server LTSCリリースの最新バージョンは「Windows Server 2016」であり、Windows Server, version 1709やversion 1803はWindows Server 2016の後継バージョンというわけではありません。
Windows Server 2016の後継バージョンは、「Windows Server 2019」という名称で、2018年後半リリースが予定されています。図1に、Windows ServerのLTSCとSACのリリースサイクルを図示しました。また、表1に、サポート期限などをまとめました。図1から想像できるように、Windows Server SACは、同時期にリリースされるWindows 10と同じビルドベースです。また、Windows Server 2019は、Windows 10バージョン1809やWindows Server, version 1809と同じビルドベースになる予定です。
図1 Windows Server LTSCとSACのリリースサイクル
表1 Windows Server LTSCとSACのサポートポリシーとサポート期限
LTSCとSACの機能差は
Windows Server LTSCはコアベースのサーバライセンス(永続ライセンス)であり、Windows Server SACはサーバライセンスに加えてソフトウェアアシュアランス(SA)契約を必要とします。
Windows Server LTSCとSACで最も大きな機能的な違いは、インストールオプションでしょう。Windows Server LTSCは「デスクトップエクスペリエンス」(Windows Server 2012/2012 R2ではGUI使用サーバと呼ばれていたもの)と、GUI機能を削除した「Server Core」の2つのオプションがあります。一方、Windows Server SACは「Server Core」のみになります(画面1)。そのため、複数のデスクトップユーザーをサポートするリモートデスクトップサービス(RDS)の役割は含まれません。
画面1 インストールオプションの違い。左がLTSC(Windows Server 2019 Insider Preview)、右がSAC
Windows Server 2016にはもう1つ「Nano Server」というインストールオプションがあり、物理サーバや仮想マシン環境にインストールすることができましたが(ただし、LTSCではなく、SAに基づいて提供されます。現在のSAC相当の位置付け)、これは廃止されました。Windows Server SACでは、Windows コンテナのベースOSイメージとしてのみNano Serverイメージ(microsoft/nanoserver:latestまたはsac2016、microsoft/nanoserver:1709、microsoft/nanoserver:1803...)が提供されるようになりました(画面2)。
画面2 Windows Server, version 1709のDocker環境で動作するWindows Server, version 1709ベース(10.0.16299.x)のNano Serverコンテナと、Windows Server 2016ベース(10.0.14393.x)のNano Serverコンテナ
このほか、Windows Server SACリリースには、Hyper-Vなどのコア機能の機能強化や、「Windows Subsystem for Linux(WSL)」やWindows Server上のDockerでのLinuxコンテナのサポート(現在、プレビュー)といった新機能の追加などがあります。SACに先行的に提供されるこれらの機能強化や新機能は、その後のLTSCリリースにも搭載されることになるでしょう。一方で、主にコンテナーやアプリケーションに注力したSACは、ソフトウェア定義のデータセンターの機能(記憶域スペースダイレクト、ソフトウェア定義ネットワーク、シールドされた仮想マシン)を含みません。これらの機能はLTSCリリースのDatacenterエディションが提供することになります。
なお、現在、プレビュー提供中のWindows Server 2019 Insider Previewは、リモートデスクトップサービスの仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)ベースの展開のための機能のみを備えており、セッションベースの役割(リモートデスクトップセッションホスト)が搭載されていません。セッションベースのリモートデスクトップサービスが今後、どのようなものになるのかは、現時点では不透明です。