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- 2021/05/18 掲載
リモートデスクトップと日本語IME、Windows 10の品質で2つの重大懸念
山市良のマイクロソフトEYE
ある日突然、生産性が悪化するシンクラソリューション
Windows Serverのリモートデスクトップサービス(RDS)を利用したシンクライアントソリューションは、サーバ側で業務アプリケーションを集中的に管理、実行し、そのアプリケーションへのアクセスをWindows標準機能だけで提供できるという利点があります。RDSに接続するためのリモートデスクトッププロトコル(RDP)に対応したクライアントは多数存在し、Windowsだけでなく、さままなクライアントデバイスに対して共通の、管理された利用環境を提供できるのです。2019年9月からはAzureで、RDSベースのシンクライアント環境をマネージドサービスとして提供する「Windows Virtual Desktop(WVD)」の利用も可能になっており、シンクライアントで課題となる初期導入コストの問題を緩和できるようになりました。
シンクライアントソリューションは、アプリケーションをサーバ側で完全に管理できること、クライアントのデバイスの種類やバージョンに依存せず利用できること、実体はサーバ側で実行されるためクライアント側の性能の影響を受けずに、快適なパフォーマンスを提供できること(サーバ側の十分なコンピューティングリソースと、高帯域のネットワークが前提)、セキュリティを集中管理できることなど、企業のIT担当者やアプリ開発者にとってはうれしいことばかりのように思えるかもしれません。コロナ禍でリモートワークの推進が求められる中、企業のデスクトップ環境や業務アプリケーションの利用環境を提供できるため、改めて注目されているソリューションでもあります。
実は、Windows Serverベースのシンクライアントソリューションの技術は意外と古く、言ってみれば枯れた技術です。Windows Server(セッションベース)とWindows Enterpriseの仮想マシンベースのVDI、そしてRemoteAppというアプリケーション単位の発行(画面1)、RemoteFX技術(注1)といった、現在の技術は、Windows 7 Service Pack(SP) 1およびWindows Server 2008 R2 SP1の頃に出そろったものです。
筆者は、Windows Serverベースのシンクライアントソリューションを導入した企業の多くが、さまざまなトラブルで苦労しているのではないかと危惧しています。
導入してしばらくはうまく動いていたでしょう。しかし、クライアントのメインがWindows 10になって、毎月の品質更新プログラムや機能更新プログラムが影響して、それまで問題なく利用できていたことが、ある日突然、利用できなくなることが実際にあるからです。クライアント環境に依存しないのがシンクライアントの良いところだったはずなのにです。
問題解決ができないキー入力の重複
最近では、Windows 10バージョン1903以降になって、キー入力が重複するという相談を受けました。問題を再現して調査しようと試みましたが、再現することはできませんでした。同様の問題がユーザーコミュニティで報告されていますが、根本的な問題解決には至っていません。そして原因はどうやら、Windows 10バージョン1903以降の「Mstsc.exe」および関連DLLにあるようなのです。RemoteAppアプリでマウス操作とキー入力で文字が重複する(TechNetフォーラム)
マイクロソフトが問題を認識し、修正するまでは手の打ちようがありません。Windows 10バージョン1809へのロールバックという1つの解決策はありますが、もう遅すぎます。Windows 10バージョン1809のサポートは2021年5月に完全に終了してしまったからです(HomeおよびProエディションは2020年11月でサービス終了)。
毎月の品質更新プログラムのリリースノートを確認していて、そういえばリモートデスクトップ接続やRemoteAppに関する問題の修正をよく目にしてきたような気がします。
【次ページ】2年越しでようやく解決も、Windows 10の不具合や問題点
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