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  • 2019/12/12 掲載

「トラックに運んでもらう努力」がなぜ必要か、製造業に打撃の“輸送弱者”問題

連載:「日本の物流現場から」

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ドライバー不足などを理由に荷物を「運べない」、もしくは「運んでくれない」という悲鳴がたびたび聞こえてくるようになった。ここ数年、トラックで荷物を運ぶ運賃は上昇傾向にある。運賃が倍近くまで上昇し、製品の利益が大幅に削られているという嘆きも耳にする。また、運賃値上げを了承したのに今度は集荷や配送を渋られたり、最悪断られてしまうなど、配送体制維持に苦労しているメーカーや商社、問屋などもいる。物流危機というと、とかく運送会社サイドの苦難が取り上げられがちだが、本記事では荷物を運んでもらう側、特に中小零細の製造業が直面している輸送弱者問題を考える。
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運べない製品は売ることができない。日本の製造業が物流によって停滞しかねない
(Photo/Getty Images)


路線便の運賃上昇、頭を抱えるメーカー

 和泉(愛知県名古屋市)は、気泡緩衝材のメーカーとして国内上位のシェアを持つ。同社の製品は梱包(こんぽう)緩衝材として利用され、プチプチ、エアキャップ、エアセルマットなどの商品名で販売されている。

 和泉の岩崎修取締役部長は嘆く。

「当社の気泡緩衝材は空気を運んでいるようなものですから……。ここ数年続いている路線便の運賃値上げには、ほとほと参っています」

 路線便とは、不特定多数の荷主から引き受けた貨物を自社の輸送網を利用して配送する形態を指す。宅配便はその一形態であり、正式には特別積合せ貨物運送と呼ばれる。トラックを貸し切りにするチャーター便などと違い、ダンボール箱1つから全国に配送してくれるのが、路線便最大のメリットだ。

 ただし路線便を維持するためには、貨物を仕分けする物流ターミナルや、各地に走るトラックの路線網を維持する必要があり、運送事業者側のインフラ負担は大きい。

 通販の拡大による再配達の影響、トラックドライバー人材不足、コンプライアンス維持のためのコスト増加などもあり、路線便を展開する運送会社は、かつての運賃では輸送サービスを維持することが難しくなっている。2017年3月にヤマト運輸が運賃値上げを発表した「ヤマトショック」は、現在に続く、路線便各社の運賃値上げのきっかけになったものとして記憶に新しい。

売上の15%を物流費に食いつぶされる?

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 話を和泉に戻そう。同社が製造する気泡緩衝材ラインアップの1つに原反(げんたん)と呼ばれる製品がある。これは気泡緩衝材をロール状に巻き上げたもので、たとえば幅1200mm、長さ42mの原反であれば直径が400~500mm程度、高さが1200mmの円柱になる。原反の製品単価は廉価品でおおむね1,200~1,300円程度だ。

 路線便で出荷した場合、近場であれば以前は1つ300~400円程度だった運賃が現在では500~600円くらいまで値上げされ、遠隔地であれば800~1000円ほどの運賃がかかる。製品単価は安いものの容積が大きいことから、運賃が高くなってしまうのだ。

「1,200円の製品を売るのに配送料が600円かかると言ったら、誰だってちゅうちょするでしょう」(岩崎取締役部長)

 同社でもこの状況に手をこまねいているわけではない。

 たとえば群馬県藤岡市にある同社の関東工場では、こんにゃくとの共同配送に取り組んでいる。こんにゃくは群馬県の特産品である。製品容積の割に水分が多く重たい、つまりは重量勝ちするこんにゃくと、かさばるものの圧倒的に軽い、つまりは容積勝ちする気泡緩衝材は、共同配送の相性がとても良い。

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気泡緩衝材とこんにゃくを混載したトラックの様子。コンテナの、前側が気泡緩衝材、後ろ側がこんにゃくである

 また同社では、価格勝負になりがちな原反よりも、高付加価値製品の開発に活路を見いだそうとしている。気泡緩衝材をカットし製袋加工した製品、防錆(ぼうせい)性能や帯電防止性能を付加した製品などを開発販売することで、製品価格に対する運賃価格の割合を相対的に下げようとしている。

 だがこのような企業努力にも関わらず、同社の売上の15%は物流費が占めるという異常なコスト構造に陥っているのだ。

【次ページ】「路線便に運んでもらうため」の努力を続ける教科書配送
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