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物流危機は、いよいよ社会的な課題になってきている。消費地や取引先にモノが「運べない」、もしくは「運んでくれない」という悲鳴が、日常的に聞こえるようになってきた。物流危機の背景には「深刻なトラックドライバー不足」がある。2018年4月における全産業の有効求人倍率が「1.35」に対して、トラックドライバーの有効求人倍率は「2.68」だった。求職者1人あたり、2~3件の求人がある。これは、そもそもトラックドライバーになりたがる人が少ないことに起因する。なぜ、トラックドライバーは不人気な職業なのか。物流とIT――トラックドライバーとWebビジネスの両方を経験した筆者が考察する。
原因1:イメージが悪い
少し前に放送されていた某缶コーヒーのCMでは、「キム兄」こと木村祐一さん扮(ふん)する大型トラックドライバーが、同窓会においてトラックドライバーであることをやゆされるシーンが登場する。
「トラックドライバーかぁ、かっこいいなぁ。日本の物流を支えちゃっているってわけだ!」
筆者は、元トラックドライバーである。同じ経験をしたことがある。
「学級委員長だったお前が、なぜトラックドライバーなんてやっているんだ!」
きっとその同級生は、彼なりに私のことを心配したのだとは思う。私は、CMの主人公と同じように言い返すこともできず、心にもやもやとしたものが残った。
知り合いのトラックドライバーは、子供の授業参観の前に、先生に頼みに行ったそうだ。授業参観のテーマは、「お父さんの職業」。お父さんの職業について、児童たちが発表することを知った当人は「ドライバーだと知られると恥ずかしいので、うちの息子に発表をさせないでください」と先生に頼んだという。
原因2:長時間労働と低賃金
トラックドライバーの年間所得額を確認しよう。全日本トラック協会発行の『日本のトラック輸送産業 現状と課題2018』によれば、2017年における中小型トラックドライバーの平均年間所得額は「415万円」、大型トラックドライバーの平均年間所得額は「454万円」である。
一方で、年間労働時間はどれくらいだろうか。全産業の平均年間労働時間が「2136時間」であるのに対して、中小型トラックドライバーは「2592時間」、大型トラックドライバーは「2604時間」となっている。
時給換算すると、全産業平均時給は「2299円」である。中小型トラックドライバーは「1601円」、大型トラックドライバーは「1743円」となる。単純計算ではあるが、トラックドライバーの給与は、世間の平均よりも24~30%も安いことになる。
原因3:生命の危険がある職業である
残念ながら、トラックドライバーという職業であり、運送の現場は3K(キツい、汚い、危険)と世間的にはみなされているのであろう。
「キツい」「汚い」はともかく、「危険」であることは確かだ。自動車運転そのものが、自分と他人の生命を脅かす可能性のある行為ではある。よりサイズと重量の大きいトラックを運転するトラックドライバーの場合、その危険性は普通乗用車の比ではない。
そのリスクのわりに、前述したように給与や世間からのステータスといった対価が恵まれていないのも、トラックドライバーの現実である。これでは、トラックドライバーの成り手が少ないことも致し方ないのかもしれない。
【次ページ】ブラックでも人が集まるIT業界、ホワイト化しても人が集まらない運送業界
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