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  • 2024/03/29 掲載

自動倉庫をシェアリングする「物流業界の新潮流」、でも忘れてはいけない理想と現実

連載:「日本の物流現場から」

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2024年問題に揺れる物流業界でいま、新たなビジネスが注目を集めている。それが、物流施設ディベロッパーによる自動倉庫を活用したシェアリングサービスだ。施設の供給(開発と運用)に終始していたディベロッパーが近年、保管や荷物の入出荷などを担う倉庫ビジネスに参入。従来の倉庫会社との差別化を図るため、荷物単位の従量課金制で受託料金を収受する自動倉庫のシェアリングという戦略を生み出した。そこで今回、3PL企業の物流不動産担当営業員にも取材を実施した上で、物流業界におけるシェアリングビジネスの成否を占う。
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自動倉庫を活用したシェアリングサービスは物流業界を変えるのか
(Photo/Shutterstock.com)

出荷キャパが2倍超に? 三井不の「EC自動化物流センター」

 三井不動産が2021年6月に竣工した大型物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク船橋III(MFLP船橋III)」(地上8階建て、延べ床面積8万坪強)内に、約2000坪の「EC自動化物流センター」が設けられた。最大の特徴は、米EXOTEC社の「Skypod」を導入した自動倉庫にある。Skypodは、荷物を収納するラックに、自律移動ロボット(AMR)やベルトソーターなどの各種搬送モジュールを組み合わせることで、導入企業のニーズに柔軟に対応できる。比較的小型軽量な荷物の取り扱いに適している。

 Skypodのほかに、梱包する商品サイズに合わせて外箱を封かんする自動製函機、明細書を箱内に封入できる自動明細書封入機、外箱に送り状などのラベルを貼り付けるオートラベラーなどの自動化マテハン機器を導入している。

 EC自動化物流センターにおける倉庫業務は、「三井ショッピングパーク ららぽーと」のテナントと連携し、アパレルや生活雑貨などを取り扱う三井ショッピングパーク公式通販サイト「&mall (アンドモール)」の物流拠点として、自社利用している。自動化を実施し、以下のような省人化・業務効率化・生産性向上を実現しているそうだ。

  • 1日あたりの最大出荷キャパシティが2倍以上に増加。
  • 庫内作業の人件費が約2割削減。

 今後の取り組みの1つとして、三井不動産がハブとなり、荷主・物流事業者・ソリューションベンダーらをつなぐ物流変革プラットフォーマーを目指すとしている。また、他のEC事業者に対してもEC自動化物流センターをシェアリングする構想があるそうだ。

野村不が“思い切って”設計した物流センター

 野村不動産では、2025年3月竣工予定の「Landport横浜杉田」(IHIと野村不動産の共同事業、地上4階建て、延べ床面積約5万坪)において、同施設入居企業に対し、IHIグループの自動倉庫を利用したパレット単位でのシェアリングサービスを計画。3階と4階部分に、高さ約12メートルの吹き抜け空間を設け、立体自動倉庫を設置しようというのだ。

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自動倉庫を活用したシェアリングモデルのイメージ
(出典:野村不動産 プレスリリース

 MFLP船橋IIIと異なるのは、Landport横浜杉田におけるシェアリングサービスが、同施設の入居企業に対して提供される点である。

 一般論だが、倉庫内に保管される荷物は、季節によって保管量や入出荷量の増減(波動)が生じる。たとえば、ECを運営する倉庫ではブラックフライデーなどのセールによって保管量・入出荷量が増えるし、チョコレート製品であればバレンタインデー前に保管量・入出荷量が増加する。

 倉庫を借りる場合は、取り扱う荷物の季節波動を考慮しなければならない。賃借するスペースが狭すぎれば波動が高まったときに荷物があふれてしまうし、広すぎれば倉庫の広さを持て余し、コストアップになる。また余剰荷物を外部倉庫に逃がすとなれば、「外部倉庫を探す」「外部倉庫への荷物の輸送(横持ち)が発生する」といった手間とコストが発生する。

 Landport横浜杉田の入居企業は、必要最低限のスペースを賃借し、波動が高まった際には、同じ施設内にあるシェアリングスペースで不足分を補うことができる。結果、固定賃借面積の削減や、自動化設備導入の初期費用、固定費の削減に伴うコスト削減と、柔軟な倉庫利用が可能になると、野村不動産は説明している。

 なお、シェアリングスペースを利用できるのは、汎用的な1100ミリ×1100ミリサイズのパレットにパレタイズされた荷物のみ。最大収納数は4020パレットで、1パレット単位による従量課金制のため、使いたいときに必要な分だけを利用することが可能になる。

 またLandport横浜杉田の各フロアと、シェアリングスペースは垂直搬送機で直結される。あくまで筆者の私見ではあるが、野村不動産はディベロッパーの立場を生かし、テナント企業の利便性を確保するために、思い切った設計を決断したものだと感心する。だが、物流業界においてシェアリングビジネスは本当に成り立つのだろうか。 【次ページ】シェアリングビジネスの「最大の懸念」
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