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「無人運転が実現したらトラックドライバーはどうなるんでしょう?」先日、20代のドライバーから受けた質問だ。誤解を恐れずに言えば、ドライバーのセカンドキャリアは社会的に整備されているとは言えない。ところが思いがけない方向から、物流従事者のキャリアアップが整備される流れが出てきた。
高度物流人材である。これは「大手企業だけ」の話ではない。そこで今回、高度物流人材のペルソナを生み出したキーパーソン3人に話を聞きつつ、高度物流人材の人物像や物流従事者のキャリアパスについて考える。
「島流し」とも言われた物流人材
これまで、物流に従事する人たちが厚遇されてきたとは言い難い。長時間労働と低賃金について「2割長く2割安い」と表現されてきたトラックドライバーを筆頭に、倉庫作業員などの物流従事者の中には、全産業の平均よりも低い賃金や長い労働時間を「仕方ないこと」として受け入れてきた人も少なくない。
これは、メーカー・卸・小売などの荷主企業でも同様だ。企業では花形とみなされることの多い営業部門や事業企画部門ではなく、 物流部門に配属されることを島流しのように受け取る人がいることも事実である。
ある専門商社の物流部長A部長はかつて、このように嘆いていた。
「一応、部長の肩書はもらっていますけど、物流部門ですから。社内での肩身も狭いんですよ。業務改善を進めようにも、発言力の強い営業部門の意見が優先されてしまう。このままではダメだとわかっているのですが、社内での発言力が私にはない」
話を聞いたのは、もう10年以上前のことである。当時、A部長は、運送会社に強いるムリとムダ(たとえば、ドライバーによる手下ろしなど)を改善したいと考えていた。だが、社内における自身の立場の弱さから、業務改善が進まないことに苛立ちと諦めを感じていたのだ。
ただしA部長は、こういった物流軽視の風潮が、社内で変わりつつあることも感じていた。
「端的に言うと、製造・品質・営業といった従来花形であった部門で業務改善できることが少なくなってきたんですよ。すでに実施できる改善はやり尽くした感があって、社内では『あと、業務改善できるところはどこだ!?』と探していた結果、『そう言えば物流って、今まで放置されてきたよな』と経営層が認識し始めたのです」
「物流は産業の血液」と言われる。モノやサービスを顧客に提供するためには、必ず物流が必要となる。したがって、企業としても物流(厳密にはサプライチェーン)にテコ入れをしなければ、企業活動全体の底上げにはつながらない。
近年、物流が注目され、そして高度物流人材の必要性が議論されるようになった背景には、こういった当たり前の事実を世間全般がようやく認識し始めたからであろう。
「高度物流人材」に感じたフラストレーション
実は筆者、高度物流人材に対してフラストレーションを感じていた。高度なスキルを備えた高度物流人材が活躍できる場はどこなのだろうか?
おそらく、高度物流人材の年収は1,000万円以上で、最近話題のCLO(Chief Logistics Officer)となれば、2,000万円、3,000万円以上になるケースもあろう。到底、物流企業のみならず、荷主においても、中小企業が雇うことができる人材ではない。
そうなると、高度物流人材を抱えて物流を高度化できる企業は一部の大手企業に限られる。一部の大手企業だけが突出すれば、物流ビジネス全体の底上げは実現されず、さらなる格差も生じる。これでは中小零細企業は、結局救われない。実際に議論されているのは、一部の大手企業にしか実現不可能なことばかりではないか!?
筆者はこのように考え、高度物流人材にフラストレーションを感じていたのだ。
しかし、B-Rサーティワンアイスクリーム 管理本部管理本部長付 SCM推進ディレクター 梶野 透氏は、このように語る。
「高度物流人材という言葉が、誤解を与えているという側面はあると思います」
【次ページ】高度物流人材=ドラクエ?「9人のペルソナ」とは
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