0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
米国のトラックドライバーの報酬額が話題だ。小売大手のウォルマートは新人ドライバーでも年間で最高約1,400万円、物流大手のUPSのドライバーは最高約2,500万円で、全体の中央値で見ても約676万円だ。対して日本国内のドライバーは、平均年収(全日本トラック協会の
資料より)だが、大型車で477万円、中小型車で438万円である。高度な運転を要するドライバーでも700万円が散見される程度で、最高年収1,000万円はほど遠いのが実情だろう。しかし日本においても稼げた時代はあった。なぜこれだけの差が開いたのか。日本のトラックドライバーが、年収1,000万円以上を稼ぐ方法はないのだろうか?
米国のドライバーは最高2,500万円?
まず米国のドライバーの収入事情を見てみよう。米国物流大手UPSの
ドライバー求人サイトを見ると、日本では信じがたい好待遇が並んでいる。それが下記のとおりだ。
- 宅配ドライバー:平均年間報酬14万5,000ドル(※1ドル=140円換算で2,030万円)
- 長距離ドライバー:平均年間報酬17万2,000ドル(2,408万円)
- ローカルトレーラードライバー(注):平均年間報酬16万2,000ドル(2,268万円)
注) | 「長距離輸送のないドライバー」のことと思われる。 |
- パートタイム従業員(注):平均時給20ドル(2,800円)
注) | Webサイトの画像を見ると、倉庫作業員ないし荷役要員のことと思われる。 |
加えて、1、2、3には「医療保険料の全額会社負担、確定給付年金の会社拠出」があり、1と2には最大7週間の有給休暇、さらに2の長距離ドライバーには4年後に1マイル当たり0.95ドル(130円)の距離手当が与えられるという。
さすがにこの待遇は、米国国内でもやっかみの対象となり、ホワイトカラー(事務系の職務)の人々による、「なぜトラックドライバーがこんな高給を取るんだ!?」という趣旨の投稿がSNSにあふれたらしい。
ただし、この好待遇にはからくりがある。
「超・好待遇」に隠されたカラクリ
そもそも、ドライバー希望であっても、最初はパートタイム従業員から開始しなければならない。そしてこの好待遇は、あくまで5年間の下積み生活を終えてからようやく得られるものらしい。また、いざ2,000万円を超える好待遇を得ても、労働時間は長く、いわゆるブラック労働を強いられているようだ。
さらに付け加えると、これはあくまで報酬であって収入ではないということだ。なぜならば、米国では多くのドライバーがオーナーオペレーターと呼ばれる、日本で言うところの持ち込みドライバーであることには留意しなければならない。
つまり、この報酬の範囲で、トラックの購入はもちろん、燃料代、タイヤ代から各種メンテナンス、税金までをすべて自分で賄わなければならない。ほかにも考慮すべき要素はある。
- そもそもUPSのトラックドライバーの待遇は、米国国内でも別格。
- 米国と日本の物価の差。米国における年収の中央値は4万5,760ドル(約641万円)であり、日本(平均年収だが443万円)よりもはるかに高い。
- 米国のトラックドライバーの年収については、中央値で4万8,310ドル(約676万円)
米国国内の労働者の年収データなどは、米国労働統計局における2022年の
レポートを参照した。日本のように平均年収ではなく、「最もその金額帯をもらっている人が多い」中央値でレポートしているのは、収入格差の大きい米国ならではの工夫なのだろう。実際、レポートでは、「最下位10パーセントの収入は3万710ドル(約430万円)未満で、最高10パーセントの収入は7万2,730ドル(約1,018万円)以上である」と付記されている。
つまり米国のドライバーは、全産業の平均以上の収入を得ている人が多いものの、実際にもらっている金額には、ドライバーによって大きな格差がある。その上、持ち込みドライバーという手間と苦労の多い働き方が主流であり、必ずしも働きやすい環境が実現されているわけではないことがうかがえる。
一方、米国ほどではないものの、かつての日本においても、トラックドライバーはそこそこ稼げる職業だった。
【次ページ】かつては日本でも「稼げる職業」だった…
関連タグ