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- 2019/04/26 掲載
「再配達がドライバーを苦しめる」は誤解?運送業界の課題の本質とは
年間1.8億時間、約9万人相当の労働力が消える再配達
ご存じのとおり、アマゾンや楽天、ZOZOTOWNに代表される通販ビジネスの台頭によって、宅配便の取り扱いは年々増加している。2017年度における宅配便取扱個数は、約42億5000万個であった。2008年度は約32億1000万個であったから、10年で3割以上増加したことになる。その結果、多くの人が「再配達をお願いすると、ドライバーさんに悪い」「時間指定をして、ドライバーさんに手間をかけさせないようにしなければ」と考えるようになり、宅配便ドライバーの苦労が世間に広く伝わったことは、すばらしいことであった。
その結果、再配達に対する批判的な世論の影響もあってか、2015年には23.5%あった再配達率は、2017年10月には約15%にまで低下した。
個人向け宅配便は、国内を流通する貨物の約5.8%にすぎない
宅配便事業者というと、読者の皆さんはどのような会社を思い浮かべるだろうか?日本国内には、約6万2000社の運送会社があるが、実は宅配便を看板として掲げているのは21事業者しかない。うち、ヤマト運輸のシェアが約44%、佐川急便が約30%、日本郵便が約21%であり、上位3社で約95%を占めている。
2015年に行われた「全国貨物純流動調査(物流センサス)」では、国内を流通する全貨物のうち、個人向け宅配便比率は、重量ベースで0.05%、件数ベースで5.79%しかないのだ。
ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便など、宅配便を取り扱う会社にとって、再配達は生産効率を下げ、利益を圧迫する重大な課題である。誤解のないようにいえば、再配達は宅配便だけで発生するものではない。しかし、個人宅向けの宅配に比べれば、その頻度は圧倒的に少ない。
つまり、再配達で苦しんでいるトラックドライバーや運送会社というのは、運送業界全体で考えれば、ごく一部なのだ。再配達問題は重要な課題ではあるが、運送業界全体の課題とは言い難いのである。
【次ページ】実は運送会社を苦しめている、「配達日時指定」
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