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10連休という、過去最長のゴールデンウィークがやってくる。だが、あまりに長い連休に、病院、役所などの公共性の高い仕事については、「10日間も休まれてしまうと生活に影響が出るのではないか!?」という不安の声が上がっている。物流もしかり。一部のメーカーからは、「商品を出荷したくとも、運送会社、倉庫会社が休んでしまう!」という悲鳴も聞こえる。ゴールデンウィーク10連休における物流不安について、考えてみよう。
10連休の物流不安(1)商品が届けられない?
今年のゴールデンウィークにおける物流不安は、大きくふたつある。ひとつは「モノが届けられない」という不安。もうひとつは、「大型連休の前後に配送が集中する」という不安だ。
まず、「モノが届けられない」という不安。これは、メーカー、商社など、荷主側の不安であり、荷受け側の不安である。誤解のないように言うと、生鮮食料品などの物流がゴールデンウィーク中に止まる不安は、杞憂(きゆう)であろう。生鮮食料品などを扱う物流企業の場合、そもそも日曜祭日に関係なく、365日営業しているケースが多いからだ。
問題は、365日営業していない、つまりカレンダーに準じた休日取得をしている物流企業である。こういった物流企業と取引をしている荷主企業はどうするのか? 代替手段として、ゴールデンウィーク期間中だけ、ヤマト運輸、佐川急便を始めとする路線便に頼ろうとする荷主もいるかもしれない。
しかし、考えることは皆同じだ。路線便に荷物が集中することで、キャパ(キャパシティー)オーバーし配送を断られるケースも危惧される。そもそも、仮に配送の手配が可能でも、倉庫や物流センターが営業していなければ、荷物を出荷することすらできない。
最近の量販店では、十分なバックヤードを設けている店舗などいくらもないであろう。10日とは言わず、1週間も入荷がなければ、品切れを起こす商品が発生することは想像に難くない。
10連休の物流不安(2)配送のキャパオーバー?
すると、荷主側は何を考えるか? 当然、ゴールデンウィーク前に、大量に商品を発送してしまえ!、と考える。
ゴールデンウィーク明けには、たまったバックオーダーを解消すべく、大量の発送依頼が集中するであろう。こちらは、物流企業側の不安である。トラックドライバー不足の問題などを原因として、ほとんどの運送会社はギリギリの状態で日々配送を行っている。配送のキャパシティーに余裕のある運送会社など、いくらもないであろう。
「運べって言われたって、もう無理だよ……」
連休前後に見込まれる大量の発送依頼に、運送会社側も戦々恐々としているのだ。荷主側からすれば、ゴールデンウィークの前後に発生する配送集中によって、「商品を届けたくとも物流企業から断られてしまう」という期間が、10連休を超えてさらに長期化する懸念があるのだ。
引っ越し難民問題から診る運送業界の脆弱化
少し話が変わるが、今春は「引っ越しをしたくともできない」引越難民が大量発生することが懸念されている。原因は大きくふたつある。
ひとつは、ヤマト運輸グループで引っ越しビジネスを手がけるヤマトホームコンビニエンスが、一連の不祥事を原因として国土交通省より事業改善命令を受け、今春の引っ越し繁忙期に受注停止を決めていること。
もうひとつは、レオパレス21の施工不良物件問題により、引っ越し需要が大幅に高まっていること。
そもそもここ数年、3月4月の繁忙期における引っ越し需要に対し、引っ越し業者側の対応能力が不足する状況が続いていた。そんな状況で、ヤマトホームコンビニエンスとレオパレス21が、それぞれ不祥事を起こしたことにより、需要と供給の関係が大きくアンバランスになってしまったのだ。
余談だが、筆者の知る企業では、新入社員が上京するための引っ越し業者を手配することができず困っているそうだ。入社時期の見直しすらも検討せざるを得ない状況と聞く。
何か社会的な事件が発生することによって、突発的に需要が高まると、途端に底の浅さを露呈し、「運べない」状況を生んでしまう。残念ながら、これが今の運送業界における現実なのだ。
【次ページ】10連休へ物流企業の対応は?
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