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「アマゾンが、いよいよ自前物流に本格着手するのではないか?」そんなうわさが、話題になりつつある。根拠となっているのは、今年4月から日本国内でも本格稼働を開始した「Amazon Flex」(アマゾンフレックス)である。アマゾンが、自前物流に挑む理由とは何か?「Amazon Flex」は、アマゾンの自前物流実現への王手となり得るのだろうか?日本固有の物流事情を鑑みつつ、考えてみよう。
日本での宅配に苦戦してきたアマゾン
アマゾンの“宅配”は、これまで紆余曲折を重ねてきた。
佐川急便がアマゾンに対して三くだり半を突きつけたのは、2013年4月のことだ。要求が高い反面で値下げを迫るアマゾン側に対し、佐川急便は撤退という形で答えたと言われる。
続いてアマゾンとのビジネスを見直したのはヤマト運輸だ。2017年、ヤマト運輸はアマゾンの当日配送から撤退した。トラックドライバー不足から端を発した総量規制の一環である。
アマゾンも、このような状況に手をこまねいていたわけではない。デリバリープロバイダと呼ばれる、アマゾンの配送を担う運送会社を組織し、配送網の維持に努めた。しかし、佐川急便、ヤマト運輸に比べ、会社規模も配送体制も劣るデリバリープロバイダは、配送品質において、顧客の支持を得ているとは言い難い。
2017年6月から7月にかけて、アマゾンは多くの配送遅配を引き起こした。アマゾンの配送を減らしたヤマト運輸の穴を、デリバリープロバイダが埋めきれなかったことが原因であると
言われている。
当時、アマゾンジャパン広報担当は、「デリバリープロバイダ利用者の一部から不満の声が上がっていることは把握している」と
発言した。以降、このときのような大規模遅配は、発生していない。
しかし、デリバリープロバイダ各社の配送品質などについては、現在に至るも顧客から不満が上がっている。今年、デリバリープロバイダの一社であるファイズが、デリバリープロバイダのメンバーから名を消した。業界内では、配送品質の悪さゆえに、アマゾンから契約を打ち切られたのではないか?、と
うわさされている。
ECにおいては、盤石の強さを見せるアマゾン。だが、顧客への宅配については、安定感に欠けている。そんな背景の下、アマゾンはAmazon Flexを開始した。
自前物流のカギ「Amazon Flex」とは?
Amazon Flexとは、軽トラック、軽バンなどの軽貨物車による配送を、個人事業主に対してアウトソーシングする仕組みである。アマゾン版のUberEatsと考えてもらえば分かりやすいだろう。
Amazon Flexは、2018年冬からテストサービスが開始され、2019年4月から正式にリリースされた。米国では、2015年に開始されている。貨物軽自動車運送事業の届け出が必要なため、UberEatsのように誰でもバイト感覚でできるものではない。しかし貨物軽自動車運送事業は比較的容易に営業認可取得が可能だ。実際YouTubeに上がっているドライバーのインタビュー動画などを見る限り、Amazon Flexの登録者は堅実に増えているようだ。
Amazon Flex公式Webサイトでは、「週50時間で月額40~43万円が可能」と書かれている。実際にAmazon Flexで働いている個人事業主の中からは、月50万円も可能という声も上がっており、フリーランスの新たな働き方の選択肢として注目を集め始めている。
これにより、アマゾン物流センターから顧客まで商品を届ける宅配を自社で担う、「自前物流」が実現するのだろうか?
【次ページ】国内物流子会社の現状から、自前物流の可能性を探る
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