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  • 2018/01/31 掲載

躍進する定額制動画配信サービス、1本100億円の制作費をかける理由

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定額制動画配信サービスが利用者を増やしている。国内、海外発のサービスがしのぎを削るなかで、「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」「Hulu」の海外発の「3強」の勢いが目覚ましい。視聴可能な作品タイトルの多さや、オリジナル作品など、これらのサービスが利用者を引きつける秘密がどこにあるのかを探った。

執筆:編集者/ライター 稲田豊史

執筆:編集者/ライター 稲田豊史

キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。 著書は『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』。おもな編集書籍は『押井言論 2012-2015』(押井守・著/サイゾー)、『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著/キネマ旬報社)。「サイゾー」「ビジネス+IT」「SPA!」「女子SPA!」などで執筆中。 (詳細

photo
Netflixの快進撃が止まらない
(出典:Netflixのウェブサイトから引用)


「配信されていない映画」の視聴意欲は下がる?

 2018年1月5日にNetflixで独占配信がスタートした全10話のアニメ作品『DEVILMAN crybaby(デビルマン・クライベイビー)』が、筆者周辺の映像関係者・エンタテイメント関係者の間で話題になっている。

 目を覆うゴア(残酷)シーンやバイオレンス(暴力)シーン、エロスシーンがこれでもかとばかりに散りばめられており、TVの地上波放送ではお目にかかることのできない過激な作風が、称賛をもって受け入れられているのだ。

 Amazonプライムの会員が無料で観られるオリジナル番組の評判も、(善しにつけ悪しにつけ)ひんぱんに耳にするようになった。

 なかでも、ダウンタウン松本人志による『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』、浜田雅功の『戦闘車』、今田耕司・東野幸治の『今田×東野のカリギュラ』などは、昨今のTV業界がゴールデンタイムで自粛している「下ネタ」「危険行為」「過激なドキュメンタリー映像」が、TVがまだ過激でやんちゃだった90年代の空気を求める層――男性30代以上――の耳目を集めている。



 それに輪をかけて気になっているのが、仕事がら近い場所にいる映画ファンや映画業界人たちの会話だ。見逃した映画や過去の名作についての話題の際、彼らがその作品を未見だった場合、高確率で「NetflixかAmazonかHuluにある?」という言葉が出てくる。

 そんなシチュエーションが、ここ1年ほどで劇的に増えた。その3サービスにない(=配信されていない)ことが判明すると、「じゃあ、いいや」もしくは「そっか……(DVDレンタル、めんどくさいな)」という反応が、判で押したように返ってくる。

 「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」「Hulu」は定額制動画配信サービスと呼ばれる。月極の料金を支払うと、各サービスが提供している国内外の映画、ドラマ、アニメ、バラエティ番組などが見放題になるというものだ。視聴できるデバイスはネットが接続できるTVほか、PC、タブレット、スマートフォン、対応する据え置き型ゲーム機など、多岐にわたる。

 定額制の動画配信サービスは、海外発祥であるこの3サービス以外にも、国内勢として「dTV」「U-NEXT」「au ビデオパス」ほか、アニメに特化した「バンダイチャンネル」「dアニメストア」、特定TV局が自局番組のアーカイブに特化した「フジテレビオンデマンド」「NHKオンデマンド」などがしのぎを削っている状況だ。

画像
Amazonプライム・ビデオはプライム会員なら誰でも利用できるサービス
(出典:Amazonのウェブサイトから引用)


映画好き、ドラマ好きに利用される海外勢の「3強」

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 なかでも、いわゆる映画ファン、海外ドラマファンの利用率が比較的高いと思われるのが、「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」「Hulu」である。オリコンが一般の2579人を対象に調査して2017年11月に発表した「オリコン日本顧客満足度ランキング」の「月額動画配信」でも、3サービスはこの順で1~3位だった。

 97年に米国で創業したNetflixは世界初の宅配DVDレンタルで事業をスタートし、2007年に動画のストリーミングサービスを開始した。日本上陸は2015年9月。料金体系は各税抜きで650円(SD画質)、950円(HD 画質)、1450円(4K画質)の3種類だ。

 Amazonプライム・ビデオとは、年額3990円もしくは月額400円(いずれも税込み)を支払うAmazonプライム会員が、追加料金なしで利用できる動画配信サービスのこと。そもそもAmazonプライムとは、購入した商品の一部が「お急ぎ便」として通常配送より早く配達されたり、一部の取扱手数料が無料になったりするヘビーユーザー向けの有料会員プログラム。2005年に本国の米国で、日本では2007年からスタートしていたが、この会員向け特典に含まれるのがAmazonプライム・ビデオ(日本では2015年9月サービス開始)である。

 2007年3月に米国で創業したHuluは当初より動画配信サービスを目的に設立された会社だ。日本でのサービス開始は2011年8月と早かったが、2014年2月、日本向けのサービスを日本テレビ放送網の子会社として承継。さらに2017年5月にはドメインを「hulu.jp」から「happyon.jp」に移行してシステムを一新した。月額料金は933円(税抜き)の1種類のみである。

 参考情報として付記すると、Netflixは配信コンテンツ数・会員数ともに非公開。Amazonプライム・ビデオは3万本前後が見放題(2018年1月29日現在/サイトでの検索結果表示より)で、Amazonプライム会員数は非公開(「2016年時点で日本国内会員は200~300万人」という推測もある)。Huluは4万本が見放題(公式サイトより)で、日本国内の会員数は2017年6月末現在154万7812人(日本テレビの第一四半期決算による)だ。

 そんななか、NetflixとAmazonプライム・ビデオの2サービスは、他の定額制動画配信サービスから頭ひとつ抜けた優位性があると、筆者は考える。

【次ページ】本気のアニメファンと本気の映画ファンを唸らせる危険な“罠”

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