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  • 2023/10/27 掲載

ネットフリックスまた値上げ…「解約」続出の超リスク、動画サブスク競争の勝敗の行方

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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米国でのテレビ利用目的において、地上波やケーブルテレビから動画ストリーミングへの移行が大きく進んでいる。日本でもテレビ放送を受信するためのチューナーを搭載していないチューナーレステレビが大きな話題を呼ぶなど、テレビ離れは世界で顕著だ。ところが、動画ストリーミングの相次ぐ値上げで、動画サブスクの中での競争が激化し始めた。これにより動画サブスクでの勝ち組と負け組が鮮明になりそうな一方、ストリーミング以外のあるコンテンツも台頭してきている。本稿ではコンテンツ市場の動向と将来性を分析する。

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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図1:動画ストリーミング内でも競争が激化し始めている
(出典:ニールセンの調査より編集部作成)

ネットフリックスが“また”値上げ

 米国では2023年7月に、テレビの使用目的におけるシェアで、地上波(20%)とケーブルテレビ(29.6%)の合計が初めて50%を割り込み、代わりに動画ストリーミングが38.7%となったことが、米調査企業ニールセンの調べで明らかとなった(冒頭の図1)。2013年には1億世帯を超えていたケーブルテレビの視聴者数も、2023年には6000万世帯へと減少することが予測されている。

 過去2年間だけでも、下の図2に見られるように、テレビ使用時間における地上波のシェアはおよそ5ポイント、ケーブルテレビでは10ポイント近く落としている。放送時代の終わりと動画ストリーミング時代の本格的な到来は否定しようがない。動画ストリーミングのシェアが50%以上に達するのは時間の問題だろう。

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図2:テレビの使用時間において地上波やケーブルテレビなどから動画ストリーミングに置き換わっていることが明らかにわかる
(ニールセンより編集部作成)

 だが、飛ぶ鳥を落とす勢いの動画ストリーミングにも懸念点がある。相次ぐ値上げで予想されるサブスク顧客離れの可能性だ。

 まず、動画ストリーミング最大手のネットフリックスは2022年1月にサービスの利用料金を1カ月あたり各プランで1割強(1~2ドル)値上げした。さらに、複数の世帯でのパスワード共有を禁止し、最安の広告なしプランも廃止するなど増収策を講じていた。だが、2023年10月、これらに追加して、広告なしプランの値上げを実施することが明らかになった

 背景にあるのは、最近行われた脚本家や俳優たちによるストライキだ。これにより新たな契約が妥結されたが、これにより脚本家はストリーミングサービスの各作品において、視聴者数に基づいた追加報酬を得られるようになる。これが、俳優たちの報酬増と併せ、ネットフリックスオリジナル作品の制作コストを押し上げることになる。

 また、製作費がわずか2,140万ドル(約32億円)であるのに対して9億ドル(約1,350億円)相当の売上に貢献した『イカゲーム』など超コスパの良かった韓国作品も、俳優と作家への支払いが急騰しており、ここでも経費の増加が顕著となっている。

26%が「節約」で解約? サブスク離れで競争激化

 こうして相次ぐ値上げを行っているわけだが、副作用も伴う。2022年6月に前年比9.1%上昇した米物価上昇率は現在3%台で落ち着きを見せ始めているものの、これ以上の動画サブスクの値上げは大規模な顧客離れを引き起こす可能性が高い。

 事実、コンサルティング大手のデロイトが2023年4月にまとめた米消費者約2000人への調査によれば、2000年前後に出生したZ世代の30%、1980~90年代に生まれたミレニアル世代の32%、全世代の26%が有料エンタメサブスクを「節約のため」にキャンセルしたと回答している。

 これらの統計を併せて考えると、動画ストリーミングはさらに伸びることが予想されるものの、インフレによって縮小される消費者のエンタメ予算をめぐり、動画ストリーミング間の競争がさらに激化する未来が見えてくる。

 では、動画サブスクの「勝ち組」は誰で、「負け組」は誰なのだろうか。

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次のページでは、動画ストリーミング競争の行方を占うとともに、動画ストリーミングの競合となるコンテンツなどについても解説します
【次ページ】「勝ち組」と「負け組」はどこか?

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