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  • 2016/06/22 掲載

他人事だと思っていませんか? 管理職にも社員にも影響するワーキングマザーの働き方

連載:ソフトバンク人材開発の秘密 vol.10

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ソフトバンクらしさを前面に押し出した社員発信型の学びの場「知恵マルシェ」。ここでは、社員自身が知恵や知識を他の社員にシェアする。そこで、働く女性にスポットを当て、ワーキングマザーの環境改善に向けて自らの知識をシェアしたのが、ソフトバンク IT統括 管理統括部 人材計画室 伊藤 縁(ゆかり)氏だ。4月には女性活躍推進法が本格スタートしたが、ワーキングマザーを取り巻く環境は整備されているとは言い難い。女性が活躍する環境とは何なのか? ワーキングマザーは当人だけ、女性だけの問題なのだろうか? 仕事と家庭の両立は女性だけの問題だろうか? 自身もワーキングマザーである伊藤氏が、ワーキングマザーと上長のコミュニケーションの重要性を語った。
(聞き手/構成:編集部 佐藤友理)

<連載一覧>

産休明けに復帰するのが当たり前だった90年代の外資系企業

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ソフトバンク
IT統括 管理統括部 人材計画部
(※7月1日より「IT統括 管理統括部 人材管理室」に名称変更)
伊藤 緑(ゆかり)氏
――まず、ご自身の業務について教えてください。

伊藤氏:IT統括 管理統括部 人材計画部(※7月1日より「IT統括 管理統括部 人材管理室」に名称変更)に所属しています。主な業務は3つあります。私はIT統括内の人材育成の企画と運営を担当しています。また、人材リソースや、その業務状況などの見える化も進めています。さらに、人事面で、休職・復職など個人の働き方に関わる悩みのサポートも行っています。

――伊藤様がワーキングマザーになられたとき、ご自身の仕事の状況はどうでしたか?

伊藤氏:かなり前のことになります(笑)。当時、産休制度はありましたが、まだ育休制度はありませんでした。育児介護休業法施行の1992年より前になりますね。そのころは外資系の企業で働いていました。タイピストやインストラクターなど専門性の高い仕事をしている女性が多い会社でした。そのため仕事を継続したいという女性が多く、そういう先輩たちが、産休明けに普通に会社に戻ってきていたのです。

 ですから私自身も、何の疑問もなく自然にその状況を受け入れていました。ただ当時でも子どもを保育園に入れることは難しく、子どもが入園できるまでに時間がかかりました。産休は産後8週間で職場に戻らなければいけないのですが、「保育園が見つかるまで会社を休ませてください」とお願いしたことを記憶しています。子供が生後4ヵ月になったとき、会社に復帰しました。

――ご自身がソフトバンクに入社されてすぐ、業務でワーキングマザーに関わることになったのでしょうか?

伊藤氏:いえ、少し間がありました。2001年にソフトバンク・コマース(現ソフトバンク)に入社し、その後IT統括(当時は情報システム本部)での業務が始まりました。2008年頃に当時のIT統括の担当役員が対応すべき課題として人材育成を掲げました。そのプロジェクトに入り、具体的に経営視点から人材育成を進めるなかで、働き方やワーキングマザーについて関心を持ちました。自分のキャリアデザインについて考えなければいけない、と気づいたのもその頃です。そこからキャリア系の勉強も始め、特に女性の活躍について興味を持ち始めました。

パフォーマンス最大化の鍵はなんといっても「コミュニケーション」

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――なぜ、知恵マルシェを主催しようと思われたのでしょうか。

伊藤氏:ワーキングマザーから多くの声を聞いたり、女性の活躍支援の情報を集めていくうちに、一緒に働く身近な上長の認識が彼女らの思いと少しズレているのではないかと思いはじめたからです。そのズレを直せれば、ワーキングマザーも本来のパフォーマンスを発揮できるのに、もったいないなと思ったんです。

――ワーキングマザーと上長の間の「ズレ」とは、何なのでしょうか。

伊藤氏:ワーキングマザーは、いろいろな思いで仕事に向き合っています。しかし上長はその思いを知らないというか、「きっとこうだろう」という思い込みでいるわけですね。そこにズレがあると思います。なので、その人個人がどういう気持ちで職場に復帰したのか、今後どのように働いていきたいのか、上長がじっくり聞く必要があるわけです。

 それから評価の面では、「時間単位での評価も重要」とお伝えしました。ワーキングマザーはどうしても時間的な制限があります。残業をしているから良いという見方でなく、その時間での働き方や、工夫、成果物を見て評価をしてほしいと考えています。

――「ズレ」はどうすれば解消できるのでしょうか?

伊藤氏:上長がワーキングマザーとコミュニケーションをとって、個人のキャリアをちゃんと考えながら、仕事の割り振りや評価をすることで解消できると考えます。さらに中長期的にいつでも見守っているという上長の態度も求められると思います。これはワーキングマザー以外に対しても必要なことですよね。そういうことに注意すれば、ワーキングマザーも安心して働けますし、自分の枠を広げていけます。

 私が主催した知恵マルシェでは、ワーキングマザーの部下を持つ上長や、ワーキングマザー自身の、各立場からの思いや悩み、成功事例などを共有する時間を多く取れるように心がけました。やはり「あらためて話をすることや、コミュニケーションが大切だと感じた」という意見が1番多かったです。ワーキングマザーのアンケートをもとに話をしたので、男性管理職からは、「現場の生の声が参考になった」というフィードバックも受けました。

――こういうトピックの知恵マルシェに参加される男性管理職は非常に意識が高いと思います。本当は参加していない方こそ来たほうがよさそうですが、そういった方にはどうアプローチすればよいのでしょうか?

伊藤氏:そういう人にぜひ参加してほしいのですが、すでに出来上がった価値観を変えることはすごく難しいと思います。ですので、いまはワーキングマザーと一緒に働くことが当たり前の社会なんだ、つまりさまざまな働き方をする人たちと一緒にお互いを認め合って働いていくのがこれからの社会なんだという意識を持ってもらいたいと考えています。リーチするのは主に若い人で「イクメン」と呼ばれているような世代になると思っています。

【次ページ】ワーキングマザーと一緒に働くときに大切なこと
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