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  • 2018/02/13 掲載

#MeTooの論点は何だったのか? セクハラ・パワハラがもたらす「本当のリスク」を解説

ダイバーシティ経営におけるLGBT対応

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性暴力やセクハラの被害を訴える「#MeToo(私も)」の動きが日本でも広がっている。米国の女優アリッサ・ミラノ氏がきっかけとなった#MeTooとはどんなムーブメントなのか。国内外のこれまでの動きを振り返るとともに、企業や経営者が#MeTooから学び取れること、今後に活かせることを掘り下げる。
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#MeTooとはどんなムーブメントなのか
(© fotofabrika – Fotolia)



#MeTooとは何か?

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 「#MeToo(私も)」は、セクハラや性暴力を受けた女性たちが連帯を示すためのハッシュタグだ。その起源は、2006年に米国でタラナ・バーク氏が黒人女性の性暴力サバイバーをサポートするために始めたMeTooのキャンペーンにある。

 しかし、このキャンペーンが世界的に動き出したのは昨年からだ。

 ハリウッドの超大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタイン氏が、過去30年に渡り数多くの女性にセクハラや性暴力を行ってきたことが次々と報じられ、俳優、ミュージシャン、映画監督や政治家など著名人のセクハラを告発するうねりが起こった。ワインスタイン氏からのセクハラ被害を告白した女性の中には、グウィネス・パルトロウやアンジェリーナ・ジョリーといった有名女優も名を連ねる。

 そんな中、2017年10月に女優で歌手のアリッサ・ミラノ氏が、インターネットで「セクハラや性被害に遭ったことがあるのなら、"Me Too” と声をあげて」と呼びかけたところ、実に多くの人たちが反応し、世界中に広がった。


 レディー・ガガ、シェリル・クロウ、ビョークなどもSNSで賛同している。


 2017年、タイム誌「今年の人」の表紙には、「Silence Breakers(=沈黙を破った人たち)」としてセクハラ被害を告発した人たちが選ばれるなど、社会現象となった。同表紙には、前述のバーク氏、女優のアシュレイ・ジャッド氏、歌手のテイラー・スウィフト氏も登場している。


 その後、米国ではセクハラ・性暴力をこれ以上容認しない、沈黙していられる時間はもう過ぎたという「Time’s Up(タイムズ・アップ=時間切れ)」キャンペーンに発展。被害者を法律面で支援する基金も設立された。 同キャンペーンはインスタグラムに「沈黙の時間はもう過ぎた。待つだけの時間はもう過ぎた。差別、ハラスメント、虐待をもうこれ以上容認しない」というメッセージを投稿している。


 先月はじめにロサンゼルスで行われたゴールデン・グローブ賞の授賞式では、多くの俳優たちが黒い衣装に身を包み、性差別やセクハラを終わらせよう、という強いメッセージを発し話題になった。

 また、同授賞式では、映画界への長年の功績を称える「セシル・B・デミル賞」をオプラ・ウィンフリー氏が黒人女性として初めて受賞し、受賞スピーチで「新しい日がもうすぐ明ける」と述べ、会場からスタンディングオベーションが贈られた。



#MeTooが世界に与えた影響

 #MeTooは何も欧米だけの動きではない。たとえばセクハラや女性の人権に対する社会的な意識が低いと言われる中国でも、過去に大学教授から受けたセクハラを教え子がインターネットで告発。問題の教授は大学から教員資格を取り消されたのだ。

 たしかに#MeTooはうねりとなって大きな広がりを見せたが、それに伴い、揺り戻しも出てきている。#MeTooは行き過ぎだとか、公開処刑だというような反応だ。元アラバマ州最高裁判事のロイ・ムーア氏はセクハラの告発を受けた際には、その妻ケイラ・ムーア氏が告発を「魔女狩り」と呼んでセクハラを否定した。



 フランスでは「ルモンド」紙に女優のカトリーヌ・ドヌーヴ氏を含む約100人の女性たちが連名で#MeTooを批判する公開書簡を掲載して一大論争となった。インターネットでの一方的な告発を受けた男性たちが、弁明の機会もほとんどないままに社会的制裁を受けている状況だととらえ、「新しいピューリタニズム」だと批判。運動の行き過ぎに警鐘を鳴らした。

#MeTooに反対する立場をとる人もいる

 昨年は日本でも、企業CMにおける女性や性別役割分業の表現をめぐって、SNSでの炎上が相次いだ年だった。視聴者や消費者のマインドに変化が起きつつある現代において、#MeTooによるセクハラや性暴力の告発は、企業イメージや信用の失墜につながるリスクをはらんでおり、企業人にとっても他人事ではない。

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 日本ではアメリカでの#MeTooの広がりを受けて、昨年12月に有名ブロガーのはあちゅう氏が電通時代に先輩クリエイターから受けたセクハラ・パワハラ被害についてBuzzFeedの取材に応じて大きな注目を集めた。

 はあちゅう氏の告発に先立って、伊藤詩織氏が元TBS記者からのレイプ被害を公表したことも、日本におけるセクハラ・性暴力告発の流れを作り出したと言えるだろう。

 #MeTooのムーブメントは、著名人によるセクハラを、被害者が告発するものだととらえられがちだ。加害者が著名人である場合にはニュースとして報道されやすく、その印象に引きずられやすい。

 しかし、TwitterなどのSNSで#MeTooのハッシュタグを追ってみると、著名人がらみの告発はこのムーブメントのごく一部だということがわかる。匿名のアカウントで過去に受けた性被害をつぶやいたり、現在進行形のセクハラ被害をつぶやいているユーザーも少なくない。

 #MeTooに込められた想いとは、被害を受けた人たちに「あなたは1人じゃない」という連帯のメッセージを伝え、エンパワーすることだ。そして、セクハラ・性暴力のない社会を作っていこうという、未来への誓いと希望である。特定のセクハラ加害者を告発するという側面だけに矮小化されては、この動きの本質から大きく逸れてしまう。

 日本においては、#MeTooで声を上げる個人に対して、Twitterなどで誹謗中傷が殺到したり、「嘘つき」「証拠を出せ」などの心ない被害者バッシングを受けてしまうことで、被害を訴える気力を削がれてしまうこともある。

 前述の伊藤詩織氏についても、告発の記者会見のときの、シャツのボタンを開けた服装が批判の対象になった。被害者はこうあるべき、というステレオタイプを押しつける声は、#MeToo運動の本質からかけ離れた的外れな非難だ。

 その一方、タレントでエッセイストの小島慶子氏は、#MeTooを批判する声に対してこう反論する。

「#MeTooは暴力へのNOです。ひどい目にあっても泣き寝入りするしかない社会に、あなたはYESと言うのか、NOと言うのか。批判する人は、その問いかけから、目をそらしたいのかもしれません」

【次ページ】変わる「セクハラ」の定義
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