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- 2024/03/25 掲載
企業が作る「女性活躍の制度」が効果ゼロで終わる理由、数字に見えない日本特有の問題
Seizo Trendキーパーソンインタビュー
ダイバーシティ実現に立ちはだかる「日本特有の問題」
外資系のグローバル製造業をいくつも渡り歩き、人事部門という側面から10年以上も製造業界を見てきたダッソー・システムズ 人事本部長のミルハウス邦子氏は、「これまで自分のキャリアで経験してきたことは、ある意味では日本社会の縮図でした」と話す。ミルハウス氏は、「特に日本を支える製造業企業の多くは、外資企業の参入が増え競争が激化する中でも、組織における人材採用や配置の在り方をほとんど変えてきませんでした。2000年初頭に米国ではダイバーシティの考え方が広がり始めていましたが、当時の日本ではそのキーワード自体がマイノリティであり、昭和以降の日本企業は時計の針が止まってしまっているように感じました」と振り返る。
ところが、組織の中に新しい価値観を持った若い世代が少しずつ増えたことで、10年ほど前から国内製造業の意識は少しずつ変化してきているという。ミルハウス氏は、「社内の問題意識は年々高まりつつありますが、具体的に人事制度のどの部分にどう手を加えれば良いのかが分からず、足踏みしている企業が多いように感じます。それは、あらゆる問題が複雑に絡み合っており、単純な正解を見つけにくいからだと考えています」と語る。
たとえば、ここ数年で、年功序列だけではなく、ジョブ型雇用など、職務や役割を評価する仕組みが登場したが、「先輩が後輩を育てる」といった年功序列をベースとした教育制度を敷いてきた企業が多く、新たに登場したジョブ型雇用、若手人材の価値観に合った仕組みの整備は追い付いていない。
また、多様な人材の採用についても、あらゆる価値観を持った人材が“やりがい”を感じながら働ける環境の整備は途上にあり、彼らの能力を最大限引き出せる仕組みは整っていない状況がある。単純に評価制度や採用方針を変えれば良いわけではなく、その後のマネジメントなども含め、最適なバランスを見つけることは容易ではないのだ。
「さらに問題は複雑であり、ダイバーシティを含めた人材を巡る問題は、業界全体の商習慣などと深く関わることから、1つの企業の制度変更だけでは解決に導くことが難しい側面があります」(ミルハウス氏)
日本企業の女性活躍は“表面的”と言えるワケ
とはいえ、人口減少を背景に国力低下が急速に進む日本において、男女を問わず未来の担い手を育てなければ、いずれ立ち行かなくなる。多様な人材が活躍できる環境構築に向け、たとえば、日本でも20年前頃から女性活躍の在り方について議論が進んできた。
しかし、ミルハウス氏は「特に、女性活躍については遅れており、表面上、女性の役職・ポジションを増やすといった対応が主流になってしまっています。 “働きやすさ”や“組織内における発言権”などの点で見ると、取り組みが不十分な企業が多いように見えます」と話す。
こうした課題を解決するには、どうすれば良いのだろうか。女性の多くがR&Dや戦略部門のヘッドなど、企業の“核”となるポジションに就いているダッソー・システムズでは、何に取り組んでいるのか。ミルハウス氏が主導する“改革”を紹介する。 【次ページ】目標は「50%」、女性比率を増やすための“意外なアプローチ”
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