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- 2025/01/25 掲載
松本人志とは次元が違う「中居正広問題を絶対許すな」元経済誌編集長が憤る理由
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
「#MeToo運動」から何も学ばなかったのか
中居正広氏は、本当に愚かなことをしてくれたな、というのが筆者の率直な感想だ。2017年に「#MeToo運動」が起きて、何も学ばなかったのか。それとも、ほとぼりが冷めたと思ったのか。故・ジャニー喜多川による性加害問題の沸騰を、間近で見ていて何も学ばなかったのか。
松本人志氏が起こした問題と同格に扱う人もいるが、松本人志氏から被害を受けたという人の主張がすべて正しかったとしても、私は中居氏のほうが「罪は重い」と確信している。
言うまでもないが、#MeToo運動とは、職場や社会における優越的地位を利用したセクシャルハラスメントや性的暴力を告発する社会運動である。
2017年に始まり、被害者が自らの体験を公にすることを通じて加害者の責任を追及することを目的とした。特に権力や地位を持つ者が、それを背景に性的被害を加える構造が問題視された。ハリウッドの映画プロデューサーによる事件がきっかけとなり、多くの著名人や一般市民が「#MeToo」というハッシュタグを用い体験を共有した。
これにより、性的被害の深刻さや広がりが明らかとなり、企業や組織における対応強化が進んだ。被害者が沈黙を強いられる状況を変える契機となり、法改正や職場の文化改善を促進した。
「#MeToo運動」がもたらした負の遺産
一方で、行動抑制や性別間の協力関係への影響といった課題も浮き彫りとなった。2022年に発表されたメルボルン大学の研究「#MeTooの意図せざる結果:研究協力からの証拠」には、職場におけるセクシャルハラスメント問題への意識を高め、女性がより安全な環境で働けるようにすることを目指す#MeToo運動が、意図しない形で職場内の男女間の協力コストに影響を与え、特に女性のキャリアに負の影響を及ぼしていたことを明らかにしている。論文の要旨は以下だ。
#MeToo運動は、若手女性研究者の研究活動に具体的な不利益をもたらした。運動以降、若手女性研究者が新たに始める研究プロジェクト数は年間平均で0.7件減少した。この減少の60%は、同じ大学に所属する男性共著者との新規協力が減少したことが主な要因である。
特に同じ大学の新しい男性共著者との協力は、0.21件減少し、運動前の0.21件からほぼゼロに近い水準まで低下した。男性研究者がセクシャルハラスメント告発のリスクを懸念し、女性との協力を避ける傾向が強まった結果である。男性は失われた女性との協力を男性同士の協力で補い、生産性を維持したが、女性は代替策がなく研究生産性が低下した。
これにより、昇進の機会やキャリア形成における格差が拡大した。特にセクシャルハラスメント規制が曖昧な大学では、この傾向が顕著であり、女性にとっての新規協力の減少がさらに深刻化した。
つまり、あまりに激しい#MeToo運動によって、女性と仕事をすることそのものが敬遠される事態を招いたということになる。女性の地位向上は果たせたものの、実利を得ることはなく、むしろ、女性にとっては不利益を被ってしまったというのが論文の趣旨である。 【次ページ】組織の業務効率を著しく損なう大問題
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