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- 2024/11/09 掲載
職場にいる「悪意なく怒らせる人」「空気が読めない人」は発達障害なのか?
発達障害とは何か
みなさんの部下や同僚に、次のような項目に当てはまる人はいないでしょうか。- 場の空気や雰囲気を読むことが苦手
- 表情や声の抑揚が乏しい
- ルーティンを乱されると不快感を表す
- 悪意はなさそうなのに、よく人を怒らせている
- 音にストレスを感じやすい
これらは「発達障害」に見られる特徴の一部です。発達障害は、脳のさまざまな機能の発達に関する障害のことを指し、先天的(生まれつき)なものとされています。
カウンセラーである筆者は、このような特徴によって職業生活が妨げられているようなケースの相談を受け、「部下は(自分は)発達障害の可能性があるのではないでしょうか?」と聞かれることがあります。近年、「発達障害」という言葉が広がってきたからだと思いますが、実は発達障害という単一の疾患があるわけではありません。
発達障害とは、「自閉症スペクトラム障害:ASD(Autism Spectrum Disorder)」(以降、自閉スペクトラム症またはASD)や「注意欠如/多動性障害:ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)」(以降、注意欠如・多動症またはADHD)などの障害の総称です。前述の特徴も、ASDとADHDに見られるそれぞれの特徴を挙げたものです。
職場の発達障害に関する相談で圧倒的に多いのがこの2種類であることから、ここではASDとADHDを対象として「発達障害」という表現を使います。
ところで、程度の差こそあれ、冒頭の項目のどれかに自分も当てはまるという人が多いのではないでしょうか。発達障害がどの面で現れるかには、個人差があります。脳は、エリアによって役割が異なるため、抜群の記憶力を持っていても会話が苦手だという人もいれば、面白いアイディアをたくさん出せるけれどルーティンワークは苦手だという人もいます。
誰もが発達障害的な特性を持っている
私たちは誰もが発達障害的な特性を持っていますが、その特性の程度が著しいものではないため、いま生活している環境の中では問題になっていないだけだともいえるのです。環境や時代によっては、先述した発達障害の特性が問題にならないこともあります。そのため、歴史上の有名な学者や芸術家などには、高い割合で発達障害的な特性を持つ人がいたとされることが知られています。たとえば、職場に物怖じせず自分の意見をどんどん言えるタイプの人がいるとします。その人は、その組織では評価が高くても、別の組織では「空気が読めない人」になってしまい、本人は仕事がやりにくいと感じることがあります。
しかし、脳機能のある部分に他の人と多少の差があったとしても、社会生活や自分自身の心に大きな支障をきたさずに適応できているのであれば、「障害という枠に完全に入る」ということにはなりません。社会生活に支障がなければ、発達障害の診断基準に当てはまる特性を持っていても「発達障害」とは診断されないことになります。
そもそも、発達障害か否か明確な線引きをすることは難しいといわれています。そのため発達障害を疑って受診しても、精神科医によって診断が違うことも珍しくありません。同じ人でも診断名がついたりつかなかったり、または診断名が異なったりすることがあるのです。
これに対して発達障害を持たない人は「定型発達」と呼ばれます。定型発達とは、生後何年でこういうことができます、という「年齢ごとの発達の特性と比較して一般的な基準を概満たしている」という意味で、いわゆる「発達障害がない」という意味で用いられます。
小学校入学以降は、生活面(日常生活・授業態度や人間関係など)のほか、その学年の内容が定着しているかどうかという学習面で判断されることもあります。社会人になれば、職場環境や仕事などの社会生活に適応できるかどうかが1つの指標になるでしょう。
気をつけないといけないのは、「発達障害=困った人」「定型発達=普通の人」というわけではないということです。発達障害と診断される人でも、発達障害の特性が強みになっている人はたくさんいます。
「発達障害」と「定型発達」の明確な線引きが難しいとしたら、私たちはこれらの概念をどのように考えていけば良いのでしょうか。 【次ページ】発達障害はグラデーション
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