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誰もが知るテニス界のスーパースター、セリーナ・ウィリアムズ氏。39歳にして現役、世界トップクラスの実力を誇る同氏は、実はビジネスパーソンとしても注目されている。早い時期から黒人、女性、マイノリティーによるビジネスの発展の必要性を唱えてきた同氏が、米流通運輸大手のUPSが開催したオンラインセミナーに登壇。現役選手を続けながら数々のビジネスを成功に導いた秘訣(ひけつ)を語った。その信条はシンプルで「自らが信じた道を真っすぐに進む」ことだという。
テニス界のスーパースターが持つ「投資家」の一面
2021年3月11日、米流通運輸大手のUPSが開催したオンラインセミナーにテニス界のスーパースターであるセリーナ・ウィリアムズ氏が登壇した。
同氏は、生涯獲得賞金が2020年10月時点で約9,400万ドル、スポンサー料などを合わせた累計総収入額は2億2,500万ドルで、これは2位の女性アスリートを2倍以上引き離すぶっちぎりの首位だ。しかも、テニス選手としてだけではなく、すべての女性アスリートで首位である。2020年にはフォーブス誌で「アメリカで最もリッチな叩き上げの女性」として特集が組まれた。
さらにセリーナ氏は、その豊富な資金を多くの企業に投資する投資家としての一面も持つ。彼女がこれまでに投資した企業のおよそ6割が、女性もしくはマイノリティーが興した企業だ。
こうした姿勢が「声の届きにくい人々の声を拾い上げている」として世界中で称賛されている。2020年の全米オープンテニスでは、大坂 なおみ選手が試合ごとに米国で警官によって殺害された黒人やマイノリティーの名前が刺しゅうされたマスクを着用して話題となった。大坂選手もこのようにマイノリティーのために声を上げるアスリートとして米国では高く評価されている。
しかし、そんな大坂選手でさえ、2月8日から21日にかけて開催された今年の全豪オープンでセリーナ氏と対戦した時には、会場の9割近くがセリーナ氏に声援を送るというアウェー状態となった。
それだけ、長い期間にわたりテニスのトップであるだけではなく、ビジネスや他のチャリティーなどで女性とマイノリティーを支援してきたセリーナ氏への支持が高いことを証明していた。
セリーナ氏は、女性が起業することに対し、「1人の女性の成功は、他の女性へのインスピレーションにならなければならない。私たちはお互いを育て合うべき。勇気を持ち、強く、そして非常に寛大な心を持たなければならない。その上で一番大切なのは謙虚であること」と語る。
また、同氏はスタートアップへの投資のほか、世界中の恵まれない子どもたちに平等な教育を授けるための基金も作っている。自らが決して裕福ではない、カリフォルニア州コンプトン(黒人が多く、治安が悪い地域として知られる)で黒人一家の一員として育った生い立ちから、教育の大切さを痛感しているからだという。
テニスに匹敵するビジネスの才覚
そんなセリーナ氏に対し、「現役選手を続けながらいくつものビジネスを成功させてきた秘訣(ひけつ)は何か」という質問が投げかけられた。
これに対しセリーナ氏は、「最も困難だったのはタイムマネジメント。選手としてトレーニングや世界中での試合スケジュールをこなしながら、ビジネスチームとも常に連絡を取り、ビジネスを成功に導くための話し合いも進めなければならなかった。でもそのことにより、異なる決定を瞬時に行うという習慣がついた」と回答した。
実際にセリーナ氏のビジネスパーソンとしての手腕は、米国では「テニスに負けないくらいの才能がある」と評価されている。
セリーナ氏が2018年に立ち上げた「S by Serena」というファッションブランドは、eコマースで直販店を持たずカスタマーに直接商品を届けるスタイルだが、これを実現するために最新のテクノロジーを取り込むことも積極的に行っている。「効率を求めるためにも、常に新しいテクノロジーには注目しているし、それを取り入れることへの躊躇もない」という。
「知名度があるからこそ、ビジネスの成功もたやすいのでは?」という質問に対しては、「ビジネスの世界では投資家を納得させる必要がある。そのビジネスに対して十分な知識があるのか、どう発展させていくのかなどをきちんと説明する義務がある」とビジネスの厳しさを十分理解する返答も行った。
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