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「企業のLGBT支援」というと、LGBT支援は人事部門の所管事項であると考える人も多いでしょう。支援というと、同性カップルの出産や育児に伴う休暇の利用、同性カップルやその親族についての慶弔休暇や介護休暇の利用、海外赴任の際に、同性パートナーの帯同を会社の費用負担で認める、トランスジェンダーの社員に、性自認に従ったトイレや更衣室の使用を認めるといった、就業規則に代表される人事制度とその運用に関わるものがよく知られているからです。ですが、人事部門に任せておけば十分なのでしょうか。
アライの存在の重要性
LGBTアクティビストの
増原裕子氏はNBL 2018年9月1日号において、LGBT当事者は、子ども時代から差別、偏見に遭いやすく、自己肯定感を育てにくい状況に置かれていると指摘しています。
同性婚人権救済弁護団編『同性婚 だれもが自由に結婚する権利』にも、今なお社会の根強い偏見や誤解ゆえに、日常の多くの場面で本来の自分を表現することを控えざるを得ず、会社や知人の前で偽りの自分を演じなくてはならない、といった数多くのLGBT当事者の声が掲載されています。
LGBT当事者でない人が、「自分の周囲にはLGBTの人々が居ない」と思いがちなのは、まさにこうした事情によります。休み時間に何の気なしに「恋バナ」に花を咲かせたり、飲み会で「お前、彼女いないのか」などと部下や同僚に声をかけたりしていることが、「言い出せていない」LGBT当事者にとって、たいへんなストレスとなっていることに気づく必要があります。
ここ数年のわが国における
各種調査で、幅はあるものの、11人から30人に1人の割合でLGBT当事者が存在することが示唆されています。これは、企業でいえば、課に1人とか、部や支店に1人、といった割合です。そう考えると、LGBT当事者でない人も、自分の身近にLGBT当事者がいるという前提で行動しなければならないのです。
そこで、各職場における「アライ」の存在が重要になってきます。
アライとは、英語のally(同盟、支援者)が語源で、LGBTなど性的マイノリティについて理解・共感し、その直面する困難や課題の解消にともに取り組む仲間のことです(LGBTとアライのための法律家ネットワーク 著、藤田直介 著・編集、東由紀 著・ 編集『法律家が教えるLGBTフレンドリーな職場づくりガイド』)。
毎日顔を合わせる職場の上司・同僚・部下がアライであることを表明し、理解ある行動をしていればLGBT当事者にとって、その職場が自分の居場所と感じられる助けとなるでしょう。先述の増原氏も、「彼氏」「彼女」と言う代わりに「つきあっている人」という言葉を使う、といった小さなことでもアライとしての行動になる、とNBLの同号で指摘しています。
ビジネスパーソンに必要なLGBT理解
カミングアウトは推奨されたり強制されたりするものではありませんが、勇気をもってカミングアウトし、それを広く公表されている方々のストーリーを読むことは、ビジネスパーソンとしてLGBT支援を理解するうえで大変役に立ちます。
公表されているカミングアウトストーリーを読みますと、勤務先で最初に
カミングアウトする相手は、人事部門やその他のダイバーシティ推進の担当者というよりも、まず、直属の上司や所属部署の同僚であることがみてとれます。
たとえば、「(LGBT支援への取組みに熱心な)自分の部の上司がこんなに気を使ってくれているのに、当事者の私が黙っているままでは申し訳ないと思っ」て、その上司に対してカミングアウトした、と
語っている人がいます。「会社内では、所属しているチームの人たちに」カミングアウトした、と
語っている人もいますし、海外の親会社に出張した際に、そこの「業務上の上司」に「人生初のカミングアウト」をして、「帰国後に日本(の勤務先)の人事と接点を持つようにな(った)」と
語っている人もいます。
虹色ダイバーシティと国際基督教大学ジェンダー研究センターが発表した「niji Voice 2018」の結果も、このことを裏付けているように思います。
【次ページ】「niji Voice 2018」の結果
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