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ダイバーシティやLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的少数者)という話題で「カミングアウト」という言葉が頻出するようになり、テレビやインターネットなどでよく見かけるようになった。しかし、その言葉の意味と背景を知っている人は多くない。ダイバーシティ時代に知っておきたいこの言葉を今読んで理解しよう。
カミングアウトとは何か
「カミングアウト」とは、LGBTの当事者であることを周囲に伝えることだ。これは「coming out of the closet」つまり「自分が身を隠していたクローゼット(押し入れ)から外に出る」という表現から来ている。
逆に、LGBTが性的指向(どの性の人を好きになるか)・性自認(自分はどの性だと認識しているのか)をカミングアウトしていない状態を、「クローゼットにいる(in the closet)」と表現する。
日本社会では、まだLGBTの存在はあまり見えるようになっていない。「
性的マイノリティについての意識 2015年全国調査」(研究代表者・広島修道大の河口和也教授)によると、職場の同僚や近しい友人、親せきや家族に「同性愛者がいる」と答えた人は5.3%、「性別を変えた、あるいはそうしようと考えている人がいる」は1.8%という割合だ。
この数字を見て、「ほとんどの人が日本ではクローゼットにいる」と理解することは簡単だ。だが、LGBTではない人にあまり知られていないのが、カミングアウトはするか・しないかの二択だけでは語れないということだ。
カミングアウトは一度で終わらない
クローゼットにいる状態だった人が誰かに一度カミングアウトしても、その人がいつでも、どこでも、誰に対してもLGBTであることを隠さない「オープン」な状態になるかというと、必ずしもそういうわけではない。
カミングアウトは段階を追って、たとえば、まずは身近な友人や家族に、次に職場にというように行われ、カミングアウトの範囲は徐々に広がっていくことがほとんどだ。
そのため、カミングアウトを語るときには、常に「誰に」という相手がセットになる。したがって、LGBTに対する
「カミングアウトをしてどうでしたか?」
「なぜカミングアウトをしようと思ったのですか?」
というような質問は、誰が相手かによって答えが変わる。「親に」や「職場で同僚に」などの情報とともに聞いた方が答えやすくなる。
カミングアウトは1回きりではない。まずはこの点をおさえておこう。
カミングアウトについて、さらに理解を深めたいという人には、下記の2冊の書籍をお勧めする。
1) 『カミングアウト』(砂川 秀樹著、朝日新書)
カミングアウトという行為の本質を、多くの当事者の声をまじえながら丁寧にときほぐしている良書。カミングアウトを理解する前提となるセクシュアリティの基礎知識や、打ち明けられた側の想いも紹介している。
2) 『カミングアウト――LGBTの社員とその同僚に贈るメッセージ』(ジョン・ブラウン著、英治出版)
「世界で最も尊敬されるCEO」にも選ばれた著者が、アウティング(暴露)というスキャンダルに見舞われたことをきっかけに、自分自身と向き合った経験をつづる。カミングアウトが周囲にあたたかく受け入れられることがもたらすメリットについても説得力のある書となっている。
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