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- 2017/11/01 掲載
国連が「企業向けLGBT行動基準」を発表、イケア、ドイツ銀行、ギャップら15社が支持
ダイバーシティ経営におけるLGBT対応
国連の「企業向けLGBT行動基準」とは
9月、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、企業のLGBTI(注)に対する差別解消の取り組みを支援するための、グローバルな行動基準「Standards of Conduct for Business」を公表した。注:LGBTIは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックスの略。国連のLGBT人権推進プロジェクトでは、性的マイノリティの総称として「LGBTI」を使用し、インターセックス(性分化疾患:染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態)を含んでいる。
この行動基準は、2011年に国連人権理事会が全会一致で承認した「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、OHCHRが中心となって、世界各地の企業との協議を経て作成されたものだ。
21世紀に入り、国際的な潮流としてLGBTを取り巻く人権状況は改善に向かいつつあるものの、まだまだ国や地域によるばらつきは大きい。LGBTの人権保障をさらに前に進め、ダイバーシティ&インクルージョン社会を実現していくための重要な取り組み主体として、企業の積極的な関わりが期待されている。
OHCHRは世界中の企業に対して、「Standards of Conduct for Business」に定める5つの行動基準に沿って、LGBTへの差別をなくしていく取り組みを進めるよう呼びかけている。
すでにアクセンチュア、コカ・コーラ、ドイツ銀行、EY、Gap、イケア、マイクロソフトなど15の企業がこの行動基準を採用し、支持を表明している。
さらに、「いかなるグループであれ、特定の人たちを排除することは、私たちの前進のスピードを落とすことにつながる。差別の撤廃は能力を引き出し、生産性を最大化するためのキーなのだ」と述べている。
「Standards of Conduct for Business」の中身は以下の通りだ。
「Standards of Conduct for Business」
(LGBTI差別解消に取り組む企業のための5つの行動基準、筆者翻訳)
いかなる時も
1. 人権を尊重すること
企業はLGBTIの権利尊重を保証するため、方針策定やデュー・ディリジェンスの実施、ネガティブなインパクトの軽減を行うことが必要です。また、人権基準のコンプライアンスをモニタリングし、伝えていく仕組みを整備することが求められます。
職場において
2. 差別をなくすこと
企業は採用、雇用、労働環境、福利厚生、プライバシーの尊重、そしてハラスメント対策において、一切の差別がないことを保証する必要があります。
3. 支援を提供すること
企業はLGBTIの従業員が尊厳をもって、スティグマ(筆者注:負の烙印)から解放されて働けるように、前向きで肯定的な職場環境を提供することが求められます。
市場において
4. 人権侵害を防止すること
企業はLGBTIのサプライヤー、流通業者、顧客を差別しないこと、そしてLGBTIに対する取引先による差別やそうした力の乱用を防止するために、影響力を行使することが必要です。
地域社会において
5. 公共の場で行動すること
企業が事業を営む国において、人権侵害をなくすよう貢献することが推奨されています。その際、企業は現地のコミュニティと協議し、自社が取り組むべきことを特定していく必要がある。こうした取り組みには、公的なアドボカシー(筆者注:権利擁護)、(筆者注:他の企業や団体との)共同アクション、社会的な対話、LGBTI団体の支援、権力を乱用する政府の取り組みに対抗することなどが含まれます。
少々時間をさかのぼるが、2015年12月、国連はLGBTの人権尊重と差別撤廃に取り組む理由を「LGBTの人々を社会から排除するとどんな損失が生まれるか?」という観点でまとめた動画を発表している。
上記の 「Standards of Conduct for Business」を見て、ピンとこない人はこちらも参考にすると理解が進むだろう。
【次ページ】企業向けLGBT行動基準の策定にいたった歴史的な背景
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