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- 2017/01/19 掲載
LGBT対応企業トップ10と世界のダイバーシティ評価基準に学ぶ人材戦略
日本企業がダイバーシティとLGBTに向き合う
2016年は、日本企業が多様性と真剣に向き合うことを考えさせられた1年だった。2015年11月、渋谷区が同性カップルに対し、結婚に相当する関係を認める「パートナーシップ証明書」の交付を開始し、世田谷区が「パートナーシップ宣誓書」の交付を開始したことを皮切りに、2016年2月には三重県伊賀市、6月には兵庫県宝塚市も「パートナーシップ宣誓書」の交付を開始。7月には沖縄県那覇市が「市パートナーシップ登録制度」を開始した。2016年には、パナソニックと楽天が同性カップルを結婚に相当する関係として社内規定を改訂するなど、人事制度の中にLGBTを組み込む動きも増えてきた。
また、博報堂はセクシャルマイノリティに関するシンクタンクであるLGBT総合研究所を設立しており、企業も市民として、社員として、顧客としてのLGBTとの関係の認識と構築を迫られるようになってきた。
また、Tokyo Rainbow Pride 2016や第4回を迎えたPink Dot OkinawaをはじめとするLGBTが生きやすい社会形成を促進するイベントが日本各地で開催された。ここでも、あらゆる分野から多くの企業がスポンサーとしてイベントを支え、出展するなど、LGBTにやさしいサービスの展開や社内体制をアピールしている。
しかし、2015年と2016年のニュースはLGBTに対して良いものばかりではなかった。
2015年8月、一橋大学法科大学院生が友人にゲイであることを公表(アウティング)され自殺するに至った事件が注目を集め、教育現場にも学生にも、大学を外で生活を営む人々にも衝撃を与えた。
2016年6月には、ヤクルトの子会社である愛知ヤクルト工場の社員が同社に対する訴訟を名古屋地裁に起こした。戸籍上男性で、社会的に女性として生活している性同一障害の診断を受けた社員が戸籍名を女性名に変更したところ、男性名での勤務継続を望む社員の希望を無視し、同社が名札などを女性名に変更し、障害を公表するよう要求し、同社員がうつ病を発症したため、訴訟を起こすに至ったという。
そして、2016年12月、驚きをもって迎えられたのが俳優の成宮寛貴氏の引退だ。引退の引き金はFRIDAYによる薬物使用疑惑報道だが、その中で成宮氏のセクシュアリティに関わるところもあり、同氏は直筆の引退コメントで「この仕事をする上で人には絶対に知られたくないセクシュアリティな部分もクローズアップされてしまい、このまま間違った情報が広がり続ける事に言葉では言い表せないような不安と恐怖と絶望感に押しつぶされそうです」と述べている。
同氏がその後公の場で発言することはなく、直筆の書面で「セクシュアリティな部分」という言葉を使ったものの、成宮氏が自身のセクシュアリティを明言したわけでもなく、社会的な報道の問題点、報道姿勢や成宮氏の対応に対する議論は成宮氏不在のまま、推測の域を出ておらず、この件を「LGBTに関わるできごと」として扱うべきか、「セクシュアリティの扱いに関わるできごと」と扱うべきなのかも判断が分かれる。
いずれにしろ、2015年と2016年は社会も企業もLGBTへの理解と配慮を問われた年だった。
日本初のダイバーシティ評価指標「PRIDE指標」
そんな中、企業にとって転換点になる出来事があった。企業などの団体におけるLGBTに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する任意団体work with Pride(以下、wwP)による「PRIDE指標」の発表だ。PRIDE指標は、
1. Policy(行動宣言)
2. Representation(当事者コミュニティ)
3. Inspiration(啓発活動)
4. Development(人事制度・ プログラム)
5. Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)
の指標をもとに、企業の取り組みを5点満点で評価するものだ。5点満点はゴー ルド、4点はシルバー、3点はブロンズという3段階の評価が下る。
評価の結果は10月に行われたwwP主催「work with Pride 2016」セミナーで発表され、82社のうち、ゴールドを獲得したのが53社、シルバーが20社、ブロンズが6社だった。
同団体は「様々な観点から企業 等の取組み内容を見ることができるよう、盛りだくさんの指標ではありますが、今年は1年目ということ で、採点基準はあまり厳しくないものにしています」と、レポートで述べ、1回目の評価で厳しい判断を下すより、まずは1社でも多くの企業がLGBTへの対応に着手することを優先している。
反LGBT法案と戦い続ける米国の経営者たち
では、世界の2016年はどうだっただろうか。米国では、2013年に連邦レベルで同性愛者同氏の結婚が合憲とされ、LGBTの権利に関して進歩的だ。しかし、ジョージア州では宗教職者に同性愛者の結婚式などの儀式開催と採用を拒否する権利を保障する法案が登場した。しかし、セールスフォース CEO マーク・ベニオフ氏を筆頭とする経営者たちが反発。もともと同法案に賛成していたジョージア州知事 ネイサン・ディール氏は拒否権を行使し、同法案は法律になることはなかった。ミシシッピ州でも同様の法案が存在したが、連邦判事 カールトン・リーブズ氏が有効化を阻止した。ノースカロライナ州では、公立学校、政府機関、公立大学のトイレ、更衣室、ロッカールームを使用する場合、「生物学的な性別」に合わせなければいけない、とする法案が提出された。しかし、当時のノースカロライナ州知事 パット・マクロリー氏は同法案を支持したが、それが原因で知事選に敗北。この法案も実現には至らないだろう。同様の法案がサウスダコタ州でも提案されたが、サイスダコタ州知事 デニス・ダガード氏が拒否権を行使し、実現は阻止された。
このほかにも、LGBTの権利を制限するさまざまな法案が全米で審議されており、多くが阻止されているが、中には法律化したものもある。
このように、欧米では、各方面からの議論がぶつかり合いながらLGBTの権利を守る方向でおおむね社会は進んでいっている。とはいえ、異なる意見がぶつかり合うとき、どこかで誰かが傷つく。その最たるものが2016年6月12日のフロリダ州オーランドのナイトクラブ「パルス」で起きた銃乱射事件ではないだろうか。
事件発生当初、「パルス」の客の多くがLGBTだったことから、事件は犯人オマール・マティーン氏のイスラム教への信仰、イスラム国への忠誠、ホモフォビア(同性愛者嫌悪)から来るLGBTに対するヘイトクライムだとする見方が中心だったが、後にマティーン氏自身がパルスによく来ていたこと、ゲイ向けのマッチングアプリを使用していたことがわかり、事件の真相は表面に現れているよりも複雑な可能性が高まった。
しかし、悪いニュースだけではなかった。出ては消え、消えては出てくる反LGBT法案と銃乱射事件の心の傷に向き合うべく、米国10月11日のナショナルカミングアウトデイでは、企業、経営者、有名人が前向きなメッセージを発信し、希望を捨てないよう訴えた。
【次ページ】LGBTインクルージョン対応企業トップ10
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